12月・・・ それは 決着の月
凍った大地を 踏みしめながら
人は思いに けじめをつける。
白い息を はきながら
人は流れに 区切りをつける。
・・・それは 未来に進むため・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・時は ２４日 午後９時過ぎ・・・
今夜は いわゆる クリスマス イブ
子供達は サンタクロースの贈り物に 心を躍らせ、
大人達も 家族や恋人、親しき仲間たちとの ひと時を楽しむ夜
そして 私こと 風見鈴香は・・・
「・・・・よいしょ と、。 南さん〜 この荷物はどこですか〜？」
「はい そこの箱の隣に お願いします〜。」
「りょ〜か〜い」
・・・南さんと 二人で 仕事に励んでいたのでした。
「私と 立川さん」師走編 【前編】
・・・・・・・・・・
「本当に ありがとうございました 鈴香さん。おかげで 今日中に荷物が片付きそうです」
「いえ そんな。こちらこそ すみません 急な仕事を入れてしまって」
パリッ・・・ポリッ・・・ズズズ・・・
夜も更けて 静けさの漂う 『こみパ準備会』の事務所に
私達の食べる せんべいの割れる音と お茶をすする音だけが 響きます。
「・・・ケーキでも残っていれば 少しはクリスマスらしかったのですけどね」
「ハハハ おいしいですよ せんべいも。 それにしても 私としたことが
今日を甘くみてました。 あんな ところで渋滞につかまるなんて・・・」
・・・・
そう 今日は週末の上に 世界的 祝日イベントの影響で 交通量は通常の3割り増し
モチロン それは車にも当てはまるわけで・・・
「しかたないですよ 年末には 例の国土省の迷惑行事もありますから」
さらに 南さんの言うとおり、年末道路工事による 片側車線よって立ち往生
到着したのが 予定時間を大幅オーバー。
・・・おまけに・・・
「それにしても 他のスタッフの皆さんも けっこう薄情ですよねっ。 その後、用事があるからって そそくさ帰っちゃうなんて。」
「ふふっ 仕方がないです。 あの日、皆さん何かしら用事がありましたから」
・・・そりゃ、クリスマスだから、 皆さんに用事があるのは分かりますけど、
「それでも 南さん１人に押しつけなくても・・・」
搬入の荷物は 開催間近の『こみっくパーティ』のための様々なイベント用品。
数も多い上に 重い機材などもあり、彼女だけでは運べないというのは 明らかなわけで
・・・それなのに
「私には 予定がありませんでしたから。」
それなのに フフフと いつもと 変わらぬ天使の笑みを浮かべる南さん。
ほんとに いい人です。私が男性だったら 惚れていたかもしれません。
・・・もちろん そのような趣味は ございませんが
「鈴香さんこそ こんなに遅くなって 大丈夫なのですか？」
「ハハハ、会社には既に連絡してますし、一緒に過ごすような彼氏もいませんからね
ほんと、クリスマスなんて因業な行事、どこの誰が作ったんだか・・・」
「あら、 あの番長さんと連絡つかなかったのですか？」
・・・・・・・
「・・・言っておきますけど、彼は ただのお得意さんですよ？」
「はいはい そうでしたね☆」
フフフッと 笑いながら お茶をすする南さん
・・・・まだ誤解しているようですね その笑みは
ま、いいですが
「そういえば ココしばらく 連絡がこないですね・・・・先月は結構依頼が多かったのですが。」
そう 12月に入ってからいうもの
私自身の仕事が忙しくなってしまったことも あり、 立川家に訪れる機会は
ほとんど ありませんでした。
しかも 訪れた際にも 出迎えてくれるのは 郁美ちゃんだけで
彼は お忙しいのか、いつも不在で アレ依頼一度も 顔をみていません。
・・・ そうか 一ヶ月ぐらい 会っていないんだ・・・
・・・・・雄蔵さん・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・
「・・・・・・」
「鈴香さん。」
「・・・え？ あ、なんでしょう？」
「向こうから こないなら コチラから 電話しちゃいましょう♪」
「はいぃっ？」
し、しちゃいましょうって 雄蔵さんに 電話ですか？？
「そ、それって なんのために？」
「はい 今日はメリクリですし♪」
「いや それは理由にならないかと・・・」
「そうですね〜。理由ではないです。 でも クリスマスって もともと そういうものですし」
「はぁぁ？？」
すみません おっしゃってることが わからないのですが？
「・・・・彼の声を聞きたい。恋人に会いたい。
家族と一緒に ゆっくり過ごしたい。 みんなでワイワイ騒ぎたい。・・・
そんな 当たり前だけど いつもは ちょっと照れくさい願いを かなえられる日だと思うんです。
・・・・それに・・・・」
「それに？」
「しばらく会っていないことに気が付いて 急に顔がみたくなった・・・
・・・これも 充分な理由ですよ。 鈴香さん」
ド ク ンッッ！！
最後の 彼女のことばに 私の心臓は大きく脈打ちます。
どうして 私の考えていたことを！？
・・・南さん アナタはエスパーか なにかですかっ？
「・・・い、いや それはできないですよ。 南さん。」
「あらあら ？ひょっとして携帯を忘れたとか？」
「いえ この通り 携帯は持っていま・・・・わわっ！？」
今度は 違う意味で 心臓が大きく脈打ちました
手にした携帯が いきなり振るえはじめたのですから
「まぁまぁ♪ひょっとして 噂をすれば影ですか？」
「ハハハ そんなことは・・・あれっ？」
・・・びっくりです 本当に 立川さんからの着信です
・・・妹さんのほうですけれど
「あらあらあらあらーーー？」
「南さん ち、ちょっと すみません （ピッ♪） はい まいど まごころペンギン便です。 」
妙に ウレシそうな 南さんから 隠れるように 携帯をとりました。
聞こえてきた声は やはり・・・
『・・・あの、鈴香さん でしょうか？』
「やはり 郁美ちゃんでしたか♪今日は メリークリスマ・・・
・・・・えっ？ いえ お兄さんはコチラには・・・はい？ もしもし？いえ
すみません ここでは よく聞き取れな・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・なんですってっ！？」
・・・・・・・・・
雪がちらつき始めた静かな夜にかかってきた
少女からの突然の電話
だけど、その内容は 聖夜に あまりにもふさわしくないものでした。
・・・・・・・・・・・
『助けてくださいっ このままでは きっと先生・・・千堂さんが大変なことにっ！・・・
お願いですっ・・・お兄ちゃん・・・兄を 止めてくださいっ！！』
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【後編に続く】