8月・・・それは 太陽の季節
その光は 高く 強く、 
地に根付く物 全てに降り注ぐ
あの温かさを 与えるがごとく・・・
その力を 誇示するがごとく・・・


そして・・・

少女は外をみていました。
明るくまぶしい 外の世界を
外の世界には 二つの青。 
どこまでもつづく空の青、 底の見えない海の青

少女は外を見てました。
閉ざされた小さな病室の少し大きめベッドの上から
体を布団に くるんだままで・・・
心を なにかで包んだままに・・・
私は少女に 話しかけました。

「こんにちは 郁美ちゃん」




こみっくパーティ 二次創作SS『私と 立川さん』

〜葉月編〜



「・・・ あ、 いらっしゃいませ いつもご苦労さまです」
「まいど〜 ペンギン便です。 ご注文の荷物 お届けにまいりました。」

ようやくきづいた 彼女は ベットから身を起こしました.
私は いつものように 側に荷物と伝票をおいて 内容を確認します。

「今回は いつもの着替えと・・・同人誌二冊ですね えっと こちらからは なにかあるでしょうか?」
「はい 今日は こちらの・・・うんしょ」
「あ、 私がもちますから・・・」
「いえ まかせてくださいもう 少し動いた方が楽なぐらいなんです」

そういうと 郁美ちゃんは 小さなガッツポーズを とってくれます
・・・ただ その微笑みは あの頃とくらべると・・・

・・・・・・・・・・・・・・

「はい 確かに・・・ そういえば 今日は お兄さんは?」
「お兄ちゃんは今日は大学です はずせない用事があるそうで、何か用事が?」
「いえ いつも 見えてたので どうされたのかと 思っただけで・・・
 て、大学生だったのですか!?」
「はい、今は三年生で応援団の団長のはずです。」

・・・う〜ん またひとつ 立川さんの秘密(?)を知ってしまいました。
ということは アノ服は 応援団のガクランで、いつも着ているのは
それが伝統だからでしょうか?

「でも団長というのは ちょっと意外でした。 いつも一人で行動しているようでしたので。」
「団員に任せきりの 頼りない団長だって、 以前 自分で笑ってました。 今回も
 本当なら夏の準備などで みんなを 指導しないといけないのに 私のために・・・。」
「・・・びっくりしましたよ あの電話の時は。雄蔵さんも 顔を真っ青にしてまってましたし」

・・・そうそう あの後は 本当に大変でした
 あわてる雄蔵さんを なんとか 落ち着かせたり、で 
 結果的に  彼をこの病院まで「宅配」するはめになってしまったり。
 まぁ そのまま 彼女の荷物を運ぶ お仕事をいただいくことに なったわけなのですが

「すみません 兄は心配症なんです。 体がふらつくだけで すぐに大騒ぎしてしまって
 私 生まれつき体が弱くて」
「・・・よく あるのですか?」
「・・・だいたい季節の変わり目ごろに・・・あ、でも 大丈夫です 秋には元気になりますから♪」
「・・・・・・・・・」

・・・うすうす感じておりました。彼女の体については。
立川さんの家赴く時、郁美ちゃんは いつも、休日も平日の日も
いつも 出迎えてくれてましたから。
はじめは 登校拒否の類なのかもと おもっていたのですが・・・

「今回は・・・だいじょうぶと 思ったんだけどな・・・」

郁美ちゃんは そうつぶやくと 再び 窓の向こう側に目を向けました
私は 伝票を調べる手を休め 同じように外を眺めます。
上空は絵に描いたような 青い空。耳を澄ますと かすかに波の音も聞こえてきます。

「いい天気ですね 郁美ちゃん。」

「そうですね・・・鈴香さんは 海、好きですか?」
「ええ こういう日のドライブは 開放感があって 気持ちがいいんです.。
 もっとも 潮風にあたるので 後の整備が大変になんですけどね。郁美ちゃんもですか?」
「私は、期間と場所限定で。夏の浜辺がすきなんです。 冬は・・・さびしいですから。」

だからこの病院の療養も 夏限定なんです。と 言葉をつづけ 少女は 視線を下に移しました。
眼下の海水浴場では 人でうまり、へし合いながらも 夏を満喫しています。
・・・彼女の目には 彼らは どのように映っているのでしょう?

「あ、あそこ」

ふと 彼女は 砂浜のパラソルを指差しました
その下では 家族サービスに疲れたような父親が 仰向けで寝そべってました。

「?あの方が どうかしましたか?」
「あ、ううん ちょっと思い出しちゃって・・・あの場所で 同じようにしていたんですよ 千堂先生も」
「千堂さん? ・・・ああ、3週間ぐらい前の話ですね」
「はい先月の末に・・・ 話してましたか?」
「ええ、まぁ。 この前 雄蔵さんに。」

というより、 彼に海行きのチケットをお渡ししたのは ほかならぬ 私でしたもので(^^;)

「そうそう あの後 お兄ちゃんが そこに 近づいていって。そしたら(千堂)先生 
 こちらに向かって 手を振ってくれたんですよ♪ うれしくて 私も手を振りかえして・・・」
「それは よかったですね♪」
「おかしいですよね 私のこと見えるわけないのに」
「・・・え?」

私は もう一度 千堂さんの寝ていたという場所を見直しました。
確かに この距離では 相手の顔がよくわかりません。
よほど目がよくなければ ここから手を振っても 気づかれないかもしれません。でも

「でも 千堂さんは お見舞いには きてくれなかったのですか?」

海水浴場から この病院までは 歩いてこれない距離でもないはずです。
病室の場所さえわかれば 郁美ちゃんのことにも気づくはず
ここまで 来てお見舞いにも来ないなんて、
そんな 薄情なお方には 見えなかったのですが・・・

「はい、。先生は知らないんですから。 私がココにいることを。」
「え?」
「ううん、入院のことだけじゃなくて先生は何もしらないんです。 私の年齢も性別も
知っているのは 『立川さん』という名前だけ・・・だから しかたないんです。」
「・・・・・・」

・・・・・・・それは いつも不思議に思っていた疑問でした。
ですが わたしは ただの宅配屋。 
そこまで 深くお客様の事情を知ることは プライバシーにかかわること。
だから あえて触れないでいたのです。

「? どうしたんですか? 鈴香さん」
「・・・なぜ」

でも・・・・・・このときは そんなことを忘れてしまって

「なぜ そこまで隠しているのですか?」
「・・・・・・・」
「・・・すみません。 いいんですよ 話したくないのでしたら」
「・・・・・・(ふるふる)」

彼女は ゆっくりと首を振り そして 答えました。

「つまらない 話で よかったら」



彼女の視線は 顔を上げて 空の向こう側を見つめました。
そのしぐさは 遠い大切な日々を思い出すしぐさにみえました。

「・・先生のことを知ったのは 一年前、 美術館で見つけた 一枚の絵からでした。
 私 昔から絵やマンガが大好きで その時も 兄に無理行って連れて行ってもらったんです。
 その絵は会場の隅の方にあったけど・・・
 とても 柔らさ 暖かさ そして情熱が ぎゅっと 一つにつまっていて
 見ていると なぜか涙がこぼれてきちゃって・・・。 
 私にとっては金賞以上の作品だったんです。」
「なんだか わかります その気持ち」

 金賞 銀賞というのは 結局 他人が つけた評価にすぎません。
好み趣向の違いといってしまえば それまでですが
作品にこめられた思いを郁美ちゃんは 強く感じ取ったのでしょう。。

 「帰ってからも その思いは消えなくて。 なんだかいてもたってもいられなくて
 だから 思い切って先生あてに メールを送ったんです。メールアドレスを調べてもらって 」

 少女は 顔を枕元に向けました。本来は 食事を食べるときに使われるでしょう
 その机には 高そうなノートパソコンがおいてました。

 「最初は ちょっと怖かったん。特定の個人、しかも見ず知らずのメールを出すのは初めてだったから。
  
でも どうしても 伝えたかったんですっ。 感動を与えてくれた 千堂先生に
  なにか言いたくて たまらなかったんです。
  ・・・そしたら 次の日には 先生からメールが送られてきたんです♪
  こんなメール初めてでとても嬉しいって♪  おかげで さらに絵に励むを頑張れるって♪
 ・・・おかしいですよね すごいのは先生のほうなのに、感謝したいたのは私なのに。」
 
彼女は軽くキーボードに触れました。 流れていた スクリーンセーバーの文字が消えて
そのかわりに いくつかの小さなウィンドウが 映し出されます。

ウィンドウの中には メール受信のも見えました。 送信者は 千堂かずきさんのモノばかり・・・
おそらく この小さなウィンドウだけがが 千堂さんと郁美ちゃんをつなぐ・・・今の彼女と外をつなぐ
 唯一つの小さな『窓』・・・。

「でも 嬉しかった・・・ 初めてだったんです 人に感謝されたこと。私を必要としてくれたこと・・・
「そんなことないですよ 郁美ちゃん。お兄さんだって あなたを必要としてますし、それに・・・」 
「違うんです。」
「え?」
「・・・確かに みんな 私を労わってくれます。  でも・・・私は なにもできない、なにも返せないっ。
ただ みんなに与えられてばかり、 みんなに苦労かけてばかりっ」
「・・・・・・」
「千堂先生だけなんです。 私は力になれたは。それが とても小さな力だったとしても・・・
 そして 思ったんです 私は先生の力になりたいと 先生の手助けをしていきたいと」

そういうことでしたか 郁美ちゃんが 恐れているのは・・・

「あってみたいと・・・思わないのですか?」
「会ってみたい。すごく会ってみたいっ 会ってもっといろいろなことを 話してみたいですっ
 でも・・・私の正体を知ったら きっと先生は幻滅する。今まで偉そうに批評して いた『立川さん』が
 こんな何もできない 情けない女の子だってことしったら・・・」
「・・・・・・」

「ううん 幻滅しなくても 今までどおりでなくなる。かわいそうな少女だって 私を憐れむようになる。」
「・・・・」
 「私は・・・かわいそうな少女じゃない・・・」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ごめんなさい やっぱり つまらない話でしょ?」
「郁美ちゃん・・・私の話も聞いてもらえますか?」
「はい?」
「・・・・・・私の仕事は宅配屋。 車、人力などを用いて
  商品や新聞、荷物などをご自宅などに運ぶ 伝達手段の一つです。」
「・・・は?」

「起床は 朝の6時前 帰宅は 夜の10時過ぎ、会社内では お客様の荷物を車に積み込み
伝票どおりの場所にもって行き 承認の判をもらいまた 別の場所に荷物を運び また判をもらう
その作業を繰り返してます。」
「は、はぁ・・・」
「荷物で気をつけないといけないのは それが壊れやすいものか そうでないか。
 なんのために運ばれるかなんて関係ありません。それが お仕事なのですから」
「・・・・・・・」
「・・・そう思って すごしてました。 
だから 私はうれしかったんです あなたに出会えたことに」
[え?」

「・・・初めて会った時 あなたは『宅配屋』の私を『鈴香さん』と よんでくれましたよね。
 そして 千堂さんからの お荷物を 愛しそうに 受け取り。 クッキーまでいただきました
 ご存知ですか?  ウチのペンギン便のキャッチコピー」
「(ふるふる)すみません わかりません」
「『まごころ運ぶ宅配便』、。私の運ぶのは 荷物だけじゃなくて。 ソレにこめられた 思いと共に運ぶ・・・
 今まで 仕事にかまけて 忘れかけていた大切なことを
 郁美ちゃん あなたの おかげ思い出せました。  感謝しております。」


私は 子供をあやすように 郁美ちゃんの頭に軽く手をのせ、その小さな体を抱き寄せました

「ス、鈴香さん?」
「郁美ちゃん みんな同じなんです。 一人で生きていけない・・・皆に 少しづつ 助けられ
 教えられて生きている。あなただけでないんです」
「・・・でも 私は助けられてばかりで お兄ちゃんにも迷惑かけてばかりで・・・」
「そんなこと ありません」
「え?」
「だって 雄蔵さんは 郁美ちゃんが 大好きだから。 人間は 不思議な生き物でしてね
 大好きな人のの重みは全然 苦に ならないのです。 あなたもいってたでないですか
 『好きな人の力になれて嬉しい。だから 力になりたい』って。」
「あ・・・・・」
「郁美ちゃんは 今まで心配かけまいとして ずっと心を抑えてきたのですね。 えらいと思います。
 でもね、 すべて背負う必要は ないと思います。」
「・・・・・・」
「だから、つらいときは素直に甘えてみてください。悲しい時には 胸を借りて泣いてみてください。 
 心にしまいこんだままでは いつか 心が押しつぶされてしまいます.。
 あなたを大切に 思ってくれる人に 思いっきり心をぶつけてみてください。
 ・・・まぁ 相手が わたしでは そこまでは できないと思いけどーーー」
「・・・・・・・・」
「郁美ちゃん?」
「・・・・(ひっく)」
「・・・大丈夫ですよ 私は荷物を運ぶ宅配屋 悲しみだって 預かりします・・それに・・・・。」
「・・・(ひっくひっく)
「私も あなたが大好きですから」
「う、う、う、うぁああああぁぁんっ」
「・・・ ありがとうございます。」

彼女の両目から流れるのは 大粒の涙。 
一粒一粒が 悲しみの塊。
だから 私は受け止めます。
大切な思いをこぼさぬように。

季節は夏 だけど もうすぐ秋がやってきます。
望もうと望まないと 時は確かに 過ぎていき
世界は ゆっくりと動いていき 
思いも 少しずつ変わっていきます。

でも だからこそ 彼女は 笑顔で いてほしい。・・・

・・・だって、 それが『私』と『立川さん』の 願いなのですから



【葉月編 完   次回 長月編に】



あとがき

こんばんは ゴンジーと申します。
ということで 今回のお話は・・・後半が かなり強引な展開です(滝汗)
雄蔵さんも登場しませんでしたし(^▽^;;;)
まったく 文章は難しい・・・(;。;←いまさら

話の内容は 以前から書きたかった 海のお話。
当初は 和樹が海に来る日を書こうと思っていたのですが
調べてみると その日は7月29日!?
というわけで 残念ながら断念・・・思うようにはいかないですw;;;

ちなみに 鈴香さんが 海行きのチケットを渡したのは7月23日
ちょうど いくみんの 誕生日なのですよね。
ですから きっと これが 兄が考えた 妹への誕生日プレゼントでは なかったのではないかと
自分は解釈しておりますが・・・皆様は いかが思いますか?

さてさて 今回で「私の立川さん」のお話は一段落・・・でしょうか?(^^;
もっとも まだまだ 未消化の部分が多いので この前のように大幅な推敲をおこなったり
ひょっとしたら長月編もに続くかも しれませんが(^^;)>
やはり 登場させたいですからね〜〜雄蔵さんはw

ということで 駄文で失礼いたしましたが もし喜んでいただけましたら幸いですm(_ _)m
それでは


追伸: 鈴香さんには ぜひ水着姿を 披露してほしかったです(* ̄▽ ̄)マテ

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