こみっくパーティ 二次創作SSシリーズ
六月・・・それは 静かな季節・・・
空に輝く 太陽の光は、薄き雲の布に包まれ、
絶え間なく注ぐ小雨は、鳥のさえずり、都会の喧騒を包む・・・
・・・時は、静かに包まれていく・・・
季節は梅雨・・・ 耳をすますと 雨音が聞こえてくる 午後の昼下がり。
私は大きな門の前で立っておりました。
門の向こう側には 大きなお屋敷と広い庭園が広がっております・・・ココは裏門のはずなのですが（＾＾；）。
私は もう一度表札にかかった文字を 読みなおしてみます・・・
「・・・『立川』」」
・・・やはり 何度見ても 表札の文字が変わることはありません
「・・・・・・・」
・・・まぁ ここに 立ち尽くしていても仕方がありませんよね。
私は 一呼吸おいたあと 呼び鈴のボタンに触れました。インターホンに話し掛けました。
「まいど～ 宅配便で～す。ご依頼の品 お届けにまいりました♪」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・さて 私が どうして ここにいるのか？
はい、それは もちろんお仕事のためなのですが、
その経緯については ちょっとだけ話を遡らなければいけません。
『私と 立川さん』【水無月編】
・・・・・・・・・・
その頃の私は コミパ会場に・・・正確には会場のスミで、一人で座っておりました。
そこは 私たち『ペンギン便』 宅配注文受付けの場所でして。
この席で 皆様のお荷物をお預かりし、伝票に書かれた目的地まで 運ぶわけです。
「・・・・・・・・」
もっとも、この宅配の受付が忙しくなるのは イベントも後半にはいってから、
つまり この時は まだまだ こられるお客様も おられないわけでして・・・・・・
「ふ、ふわぁ～。」
・・・と（コホン、）失礼しました（//ｖ//）。とにかく 私にとって まだまだ休憩時間というわけ です。
とはいえ 寝ぼけ眼で 応対をしては 店の信用にかかわります。
私は眠気を取る為に、イスを背もたれにして軽く後ろに、伸びを・・・
「ん、んん～～～っ」
「久しぶりだな 宅配屋」
「ひゃ！？」
その時でした。突然現われた巨大な人影に きき覚えのある太い声
私は 突然のことで 私の体は 硬直してしまい
「う、うわたた・・・わきゃっ！」
そのまま 椅子から転げ落ちてしまいました・・・
「うう、イ、イタタ・・・」
「・・・・どうした？」
「い、いえ お久し振りです 立川さん」
うう、恥かしい所を お見せしてしまいました・・・
顔を見上げると、やはり この前と同じガクランの彼の姿。
私は打った腰をさすりながら尋ねました
「え、えっと、今回も 、千堂さんのサークルでしょうか？」
「うむ」
「花束などは・・・」
「ない。」
「はい 承りました。では後ほど あなたに お届け・・・」
「いらん」
「・・・え？」
「オレに 届けるな。」
・・・・・・あ、相変わらず謎なことばを・・・（・。・；）
あなたに 届けなければ この本は一体誰に・・・・・・、
「これが伝票だな」
「あ、はい そうです。」
ビリッ
「え？」
ガリガリガリ
私の返事を聞くよりも早く 伝票を一枚だけ むしりとり 何かを書き始めました。
ああ♪、なるほど 今回は宅配を、私としたことが（＾＾）
ガリガリガリ
あれ？立川さんの書いているのは『依頼者控え用』の一枚のみ
・・・通常は 他の数枚と重ねて書かなくては・・・
「あ、あの、立川さ・・・」
「ココにいけ」
ズイッ
私の言葉を遮るかのように。
それを、私の目の前に突き出しました。
「は、はい あの・・・」
「必ず 貴様が届けろ わかったな」
ズン、ズン、ズン・・・
「あ、あの ですからーーー」
・・・・・・・
あっという間に 会場内に消えてしまう 彼の姿。
私の手に残っていたのは 同人本購入+宅配の代金と、「送り主控え」と書かれた一枚の紙だけ・・・
・・・ちなみに 下を見てみると 立川さんの書いた文字が 机に そのまま綺麗に写っておりました。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・というわけで 話は元にもどしまして・・・
私は 自動で開く門から中に入り 広すぎる中庭を横切り
立川さんの玄関（ひょっとして通用口でしょうか？）のドアをあけました。
ガチャッ
「まいど～ ご注文の品をお届けに参りました～」
ここまで 大きなお家です。てっきりお手伝いさんや 家政婦さんが でてくるのかと おもったのですが（＾＾；））
「いらっしゃいませ 鈴香さん わざわざご苦労様でした♪」
私を でむかえて下さったのは、意外にも 一人の少女でした。
年は 中学・・・1，2年でしょうか？肌は透き通るように白く、サラッっと桃色の髪は 腰まで伸びていて
なにか料理の途中だったのでしょう、フリル付エプロンを纏った姿が とても可愛く似合っております。
・・・っと そういえば？
「？何故 私の名前を？」
「はい 兄から聞きました♪先月は 兄が色々とご迷惑したようで ・・・重ねてありがとうございました（ペコ）」
「・・・ということは あなたはまさか？」
「あ、申し遅れました、私は妹の 『立川郁美』です☆」
・・・・・・え？ えぇーーー！？
び、びっくりしました・・・まさか あの立川さんに こんなに似てな・・・（ゴホゴホッ！）
こんなに歳のはなれた可愛らしい妹さんが居られたなんて・・・。
・・・・・・・・・
「・・・あの、それで 本は？」
・・・（ハッ！）い、いけない お仕事お仕事・・・。
「あ、では ご注文の千堂さんの同人誌 をお届けいたします。 どうかお確かめください」
「はい、ありがとうございますっ♪」
郁美さんは 私の差し出した本を嬉しそうに受け取り、中身を確認すると、
其の本を大切そうに胸に抱え込みました。
そんな彼女の表情は 喜びに満ち溢れていて、
・・・先月の雄蔵さんの姿と正反対な・・・・・あ、・・・。
「あなたが『立川さん』・・・（ボソッ）」
「はい？」
「あ、いえその・・・あなたが本当の『立川さん』なのですね。 千堂さんとのお知りあいの・・・」
「・・・・・・・・・」
郁美さんは ちょっと困ったような顔を一瞬見せましたが、やがて静かに頷きました。
「なるほど、それで アチラの立川さんが・・・」
「兄が どうかしましたか？」
「あ、いえ こちらの話です（＾＾；」
このとき、私は先月のコミパの立川さん（雄蔵さん）を思い出してました。
千堂さんの同人誌を見つめる立川さんの表情、それに其の時に言ったことば・・・
・・・つまり、妹のお気に入りの千堂さんは 兄である立川さんにとっては・・・
なるほど、そういうことだったのですね。
「・・・では 私はこれで・・・」
「あ、ちょっと待っていてください。もうすぐクッキーを焼きあがると思いますので
よろしければ 召し上がってください」
「あ、いえ そんな おかまいな・・・」
「上手に出来てるか ちょっと自信がないですが・・・すぐ戻ってきますので 待っていてください♪」
「・・・あ、」
トトトト・・・
私の返事を待つことなく、郁美さんは、そのまま屋敷の奥に行ってしまいました。
・・・こういうところは 兄妹似ということでしょうか？（＾＾；）
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
それにしても 彼女が立川さんの妹さん だったなんて、未だに信じられません。
・・・まさか 血がつながっていないとか・・・ハハハ まさか そんなことは
「遅かったな」
「ひやぁっ！？」
背後から聞こえた声に 思わず振り向くと そこには 立川雄蔵さんの姿。
「・・・なぜ いつも驚く？」
あん、あなたこそ 何故 いつも突然に現われるのですか？（汗）
「宅配屋・・・本はどうした」
「はい たった今お渡しいたしました。とても 喜んでおられましたよ♪」
「そうか」
「可愛らしい妹さんですね・・・」
「・・・・・・郁美が・・・」
「え？」
「貴様に会いたいといったのだ。会って是非礼がしたいと、だが アイツを会場まで連れて行くわけにはいかん」
「なるほど それで宅配の依頼を・・・」
「うむ 俺からも礼を言わせて貰う。 かたじけない」
「あ、そんなに 頭を下げないでください（＾＾；；） これも私のお仕事の一つなのですから」
「・・・・・・・う、うむ・・・」
「はい そうです♪ それにしても、先月の行動も、今月の行動も すべて妹さんのためだったのですね？」
「・・・・・・・・」
「・・・お優しいですね☆」
「・・・・・・フンッ」
彼は なにも答えず そのまま顔を背けてしまいました。
そっぽを向かれてしまった為 彼が今どんな表情になっているのかは わかりません
・・・・・・・・・・・・
「・・・風見鈴香よ」
「？？はい」
「我等のこと。決して他言無用・・・特に千堂和樹、奴にはな」
「・・・大丈夫です。私には 宅配人としての 守秘義務があります。お二人のことは誰にも話さないことをお約束します。」
「うむ,『男』と『男』の約束だ。」
・・・・・・・・・え？
「あの・・・申し訳ありませんが 私は男性ではないですよ（＾＾；」
・・・・・・・・・
「・・・・・・なんだと？」
「これでも女性なのです、私。」
・・・・・・・・・・・・・・・
「・・・真か？」
「真です。」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「・・・・・・・・」
「・・・・・・・」
「ふむ・・・ならば 『男』と『女』の秘め事だ」
「プッ♪」
「なにがおかしい？」
「す、すみませ・・・立川さ・・・だ、だって・・・ふふっ♪」
「・・・・・・・・・」
す、すみません 立川さん 笑いがとまらないのは
そのセリフのせい だけではないのです。
ようやく、立川さん達の謎に辿り着けた喜び、
雄蔵さんに またひとつ近づけた嬉しさでいっぱいになっているから。
それが嬉しくて 顔が引き締めらなくて・・・・
「お待たせしました あ、 お兄ちゃん おかえりなさい・・・ どうしたの 顔まっかだけど？」
「・・・なんでもないっ」
「す、すみません 立川さん・・く・くく♪」
「？？」
・・・これが 私と立川郁美ちゃんとの 出会い、
そして立川兄妹との お付き合いの始まりでした。
その後、私は 郁美ちゃんから たくさんの宅配物を頼まれるようになり、
そして、彼女の秘密を知ることになるのですが・・・それはもう少し先の話ということで・・・。
そうそう アノ後 郁美ちゃんから頂きましたクッキーは その帰りの車の中で早速味わいました。
彼女が はじめてのクッキーは サクサクというよりも 少し粉っぽい感じで
だけど とっても甘く そして 何故かちょっぴりしょっぱい味がしてしました。
＝ 「水無月編：もうひとりの『立川』さん」完 // 次回 「文月編」 に続く＝
あとがき
こんばんは ゴンジーと申します。
今回のお話は 鈴香さんSS 第３弾・・・の改訂版です
どの編が改訂なのかと 申しますと 前編後編をあわせただけ・・・でなく
実は 気になっていた細かい部分の展開を 色々と変えてしまっております
・・・もっとも 話の本筋である「鈴香さんと 郁美ちゃんの出会い」に関しては 変わっていないので
ストーリ的には問題はないはずですが・・・（＾＾；）
あ、そうそう 最近久々に コミパ（ＤＣ版を）プレイしてみたのですが・・・鈴香さん コノ頃から登場してましたか！？∑（￣□￣；）
ま、まぁ コノ頃の鈴香さんは まだ郁美ちゃんたちから 直接手渡しで頼まれてなかったということで ご容赦を（＾＾；；）
では 稚拙かつ ツッコミどころの多い文で恐縮ですが もし購読して 楽しめられましたら幸いです
それでは