こみっくパーティ 二次創作SS『私と 立川さん』


〜皐月編〜

五月・・・それは始まりの季節・・・
淡く柔らかだった若葉達は  光を帯びた青葉に変わり、
古巣から飛び立った雛鳥達は 青空の高さ、広さを知り 若鳥へと変わる・・・
・・・本当の始まりの季節・・・・・・




日差しも 温かさから暑さに変わり始める 黄金週間の最終日。
私は ライトバンを背に ぼんやりと空を眺めてました。
右手には缶コーヒー、左手には伝票。そして 口から出るのは 軽い吐息・・・
私は ただ ぼんやりと空を眺めてました

あっ、吐息の理由は 世間一般がオヤスミモードな この時期に
わざわざ朝早くから 即売会場に 仕事で来ているからではないですよ?
・・・それはいつものことですし(苦笑)
ただ、ふと先月の出来事を思い出してしまって・・・

・・・ほんと 不思議な出来事でした。
子猫を 助けるために ライトバンを素手で止めてしまう男性・・・
・・・まぁ 世の中には ダンプカーを投げ飛ばしたりする少女も居るそうですので
ひょっとしたら 珍しくないのかもしれませんが(^^;)
でも やはり噂に聞く話と実際に目にしているのでは 全く意味が違ってきますというか・・・

「ほんと 不思議な方でした・・・彼は いま何所に居るのでしょうか・・・」

そんなひとり言まで もれてきてしまった自分に驚いてしまったりして(汗)

・・・ウッ!?・・・
上を見つづけていたせいでしょうね 首が少し痛くなってきました。
私は首を休める為にふと目線を下に落としました。

その時 即売会場サークル入場口には そろそろ列が生まれはじめてました。
きっと一般入場口には もっと長い列が出来ているのでしょうね。・・・本当は いけない事らしいのですが(^^;;)

そして・・・サークル口の前で なにやら揉めておりますね?どうやら 二人の方が口論をされているようです。
一人は この即売会を運営しております、コミパのスタッフさん。
そして もう一人の方は・・・まさか アノ人は!?


・・・『噂をすれば影』とは 将に このことなのでしょうか!?

私は 自然に ソノ場所へと足を動かしておりました。




「・・・で、ですから 開場までは参加者の方々は入れない規則になってますので・・・」
「フンッ 開場前には引き上げる。それで問題なかろう。」
「い、いえ そういうことでは・・・(汗)」
「ならば どうしろというのだっ!」

私が門前に着いた時にも 口論は まだ続いておりました。
そして思った通り 私は その二人の事を知っておりました。

「・・・あらあら 鈴香さん♪ おはようございます☆」
「あ、おはようございます。南さん(ペコリ)」

今 私に挨拶をしてくださいました女性は コミパスタッフの『牧村 南』さん。
コミパ内でも かなり有名な方でして、その優しく 温かい人柄で
スタッフ方だけでなく、サークルの方々からも多大な人望を集めておられます女神のようなお方なのです。

「今回はサークル参加なのですね? 列の最後方はアチラに・・・・」

・・・少し おとぼけな所もあるのですが・・・(汗)

「あ、いえ、私は ココで何があったのか と気になってしまいましたもので・・・どうなされたのですか?」
「ええ・・・、実は 先ほどから こちらの方が 開場前にイベント会場に入れてほしいと無理を言われまして・・・」
「なにが無理だというのだっ!」

そして もう一人の男性の方は・・・間違いありません やはり彼は あの時の・・・

「俺は コレを置いて来るだけだ。・・・なぜ貴様は引き止めるっ!?」

そう言いながら 彼が突きつけたものは・・・花束ですね?
誰かへのプレゼントなのでしょうか?

「で、ですので 先ほどから言ってますとおり 規則は規則ですので・・・贈り物でしたら コミパが始まってから直に渡されれば――」
「出来ぬっ!俺は奴に知られてはならぬのだっ!」
「う〜ん・・・ 困りましたねぇ〜。一体どうすれば---」

そういうと 南さんは腕を組み頬に手を添える形で 考え込んでしまいました・・・
・・・・・・プレゼント・・・ですか。

「あのぅ、 それを お渡しすれば よろしいのですか?」
「「??」」

同時に二人が私に振り返ります。
特に 彼のほうは 少し驚いた様子です・・・今まで私のことに気付かれていなかったみたいですね。

「・・・貴様は・・・」
「はい、私は荷物と真心を運ぶ配達人です。 よろしければ 任せていただけませんでしょうか?」
「・・・・・」



・・・・・・・・・・・

♪ピンポンパンポーン♪
「ただいまより こみっくパーティを開催いたします」
場内からのアナウンスと拍手が響き渡りました イベント開催の合図です。

ドドドドド・・・!
そして その合図を皮切りに 大勢の客たちが一斉に会場内に駆け込んで行く音が聞こえます。

ですが私はソノ音を背に受けて 会場から はなれた場所に向かって行きました。あの方に 配達物を届ける為に・・・

「まいどっ ペンギン便です☆ ご注文の品 確かに千堂和樹さんのサークルに届けてまいりました。」
「・・・うむ・・・」
「それから こちらが千堂さんからお預かりしました同人誌です、どうぞ御確認ください」
「・・・・・・・」

・・・ペラ・・・
彼は黙って本を手に取ったかと思うと その場で本を読みはじめました。

「あのぅ・・・」
「・・・・・・」
彼は 静かに読みつづけております。
・・・私は 彼が読み終わるのを しばらく待つことに致しました。

・・・・・・・・
今回初参加のサークルの机に 祝いの花束を置いてくること。
そして そのサークルの作家さんである 千堂和樹さんから 同人誌を頂いてくること。
それが 今回 私が頼まれたことでした。

どうやら 彼にとって 自分の姿を千堂さんに見られてしまうことは 絶対に避けなければならないことらしく、
だからこそ 彼(千堂さん)が会場に入る前に入場し 花束を置いていこうと思っていたのだそうです。
(ちなみに私が初めに行った時には サークルには誰に居ませんでしたので とりあえず花束だけを置いておき、
 同人誌は また後で引き取りに行きました。もちろん 立川さんのことは内緒にして・・・)

それにしても・・・・

・・・ペラ・・・
「・・・・・・」

彼はまだ 熱心に同人誌を読みつづけております・・・ですが・・・

「・・・・・・」
「あの・・・立川さん?」

ピクッ!?
ページをめくる腕が その場でとまりました。顔は本を睨んだままでしたが。

「? 貴様、何故オレの名を知っておる?」
「何故って・・・先程 御自身で おっしゃっていたではありませんか。
 『奴(千堂和樹)に会ったら 立川の名を出せ。そうすれば奴も解る』・・・と」
「・・・ふむ・・・なるほどな。 確かに俺は『立川』だ・・・」
「はぁ・・・?」

そうそう、彼は『立川』さん というお名前でした。
そして 千堂さんの反応の様子から見るかぎりでは
立川さんと千堂さん お二人は かなり親しい間柄のように私は感じました。
・・・それなのに 立川さんは 自分の姿を見せることを拒み、会おうとなさらない・・・なぜでしょう?
そして なによりも いま私が不思議に思っていることは・・・

「・・・で、なんだ?」
「あ、はい 立川さん、私はご注文の品を間違えてしまったのでしょうか?」
「何故だ?」
「ええ、その同人誌を眺める あなたの目はその・・・その本を望まれているようには見えなかったもので。そう まるで敵を眺めているかのように・・・」
「・・・・・・」

立川さんは 何も答えてくれません。 ・・・やはり 気を悪くされてしまったのでしょうか?

「す、すみませんっ 私、失礼なことを言ってしまいーーー」
「敵か・・・フン、うまいことを言う・・・」
「・・・えっ?」

そ、それは、どういう意味なのでしょう? 
ですが そんな私の疑問を答える事もなく 立川さんの言葉は続きました。

「・・・今回は世話になった。いくらだ?」

そう言いながら ガクランのポケットに手を突っ込む立川さん
どうやら 宅配のお金を払ってくれるつもりのようです。ですが 私は・・・

「あ、御代は先程の分で結構ですよ。」
「バカな、俺は 本の代金しか出しておらぬ」
「ええ、ですが 先月のお礼もありますし 今回は送料サービスということで☆」
「先月・・・だと?」
「はい 先月、子猫を助けていただきましたお礼です。」
「・・・あれは 貴様のネコか?」
「いいえ? 違いますが?」
「・・・・・・・」

立川さんは 首をかしげてしまいました。
・・・そうですね 自分でも 少し おかしなことを言っている気が致します。
でも しかたありませんね、それが私の正直な気持ちですので。

「・・・フン、おかしな奴だな 貴様」
「ですね、たまに そう言われます♪」
「・・・・・・そうか・・・ (フッ)」
「はい そうです♪(ニッ♪)」

はじめて見せた 立川さんの微笑み(といっても微かに 口が緩んだだけですが)
私も おもわず笑顔で 答えてしまいました。

「『立川雄蔵』」
「・・・・・・はい?」
「オレの名だ。・・・貴様の名は?」
「え、私は風見・・・『風見鈴香』です」


び、びっくりしました 
『人に名を聞く前には まず自分の名を名乗れ』を実戦したのでしょうか?
それにしても いきなり過ぎですよ 立川さん(^^;)


「ペンギン便の風見鈴香だな・・・その名、覚えておくぞ」
「あ、どうも恐縮です(ペコリ)」

思わずさげてしまった頭を再び持ち上げた時、
立川さんは 本を読み終え、自分の懐にしまう所でした。そして・・・

「では また会おうぞ 風見鈴香」
「はいっ これからも よろしくお願い致します♪(ペコリ)」
「・・・うむ・・・」

ズン・・・ズン・・・ズン

そして 彼は そのまま背を向けて去って行きました。先月と同じように・・・
・・・いえ先月とは違いましたね。
今 私たちは約束しました 再び出会う日があることを・・・



それにしても謎の人物であった 立川さんは 出会ったことにより更に謎な人物になってしまいました。
次に出会えた時は 一体どうなるのでしょう? 謎は更に深まるのでしょうか?それとも・・・

「風見〜っ!!! なに そんな所でボサッっとしとるんだぁぁ〜っ!!!」

その時 私の耳に 宅配便の先輩方の声が・・・
そうでした。 私はお仕事で ココに来ていたのでした。(汗)

「すみませ〜んっ いま行きま〜すっ!」

私は 大急ぎで 駆け出しました。 
蒼く輝く空の下、あの会場内で まだまだ多くの出来事がまっているはずです。

そう・・・イベントは まだ始まったばかりなのです☆

= 「皐月編:初サークルに花束を」完  // 次回 「水無月編」 に続く=


〜 あとがき 〜
ということで 立川雄蔵さんと風見鈴香さんのSS第二段です。
 冒頭の詩(?)に書いてあるとおり、今回のSSから自分にとっての本当のはじまりです。

というのも 今回のSS執筆で一番書いてみたかったことは実は
「立川さんの謎の種明かし」だったからなのです。(正確には「謎の推理」というべきでしょうか?)

例えば 実際のゲームの中では 花束を渡した人物は明確に されておりませんでした。
で、「立川さん本人がおいていったのかな?」と 和樹は推理しているみたいでしたが
それはないのでは?と自分は考えておりました。

正体を見られる危険性、また サークル参加者でないのに 和樹達よりも早く会場に入ることは
まず 考えにくいことなのですから。

というわけで 今回のSSのような方法を取っていたのではないかと 自分は推理しているのですが
皆さんは いかが思われましたでしょうか?

というわけで 今回も つたない文章で恐縮ですが もし楽しんでいただけましたら恐縮です。
それでは

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