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3月・・・ それは旅立ちの月

光あふれる この季節に
人は扉をくぐる
進むのは未来、歩むのは人生
起こるは別れ 生まれるは出会い
幾度となく 扉を開き、くぐりぬける
これまでも そして これからも

・・・・・・・・・・・

そこは
いつもの会場 いつもの場所
そこでは 数々の本と 数々の仲間たちと
多くの出会いがまっています

だけど 私は そんな会場から離れ
1人 外へと 向かいます。

・・・そこは人目を放れた 片隅に
そこは 秘密の受け渡し場所
私と立川さんの いつもの場所

そして今日も 
あの人は 待っていてくれました。

・・・・・



「私と 立川さん」弥生編 



・・・・・・・・・

「まいど〜 おなじみ ペンギン便です♪ご依頼どおり、
 郁美ちゃんを会場まで お連れ致しました。」
「・・・うむ」

私が挨拶すると 
彼は軽く うなずき いつものように塀にもたれます

「で、郁美は どこだ?」
「今は 会場の入り口前に そこで千堂さんを待っているそうです。」
「?置いてきたのかっ 貴様」
「無粋なことは できませんので☆」
「・・・むぅ」

だから いつもと違う所といえば
今回の依頼が 千堂さんの同人誌でないことと
それから・・・・

「心配でしたら 見にいかれますか?」
「・・・ふんっ、 俺も そこまで野暮ではないわ。」
「そうですね」
「・・・最後ぐらい アイツの好きにさせておこう。」

・・・これが 彼ら最後の依頼ということ・・・

「ーーーって なに言ってるですかっ 雄蔵さん。
 郁美ちゃんは病気を治すために日本を離れるのですよ。縁起でもない」
「・・・そうだな、失言だ 許せ。 だが・・・」
「だが なんですかっ?」
「・・・向こうには 親父やお袋も待ってくれている。 治ってもココに戻るとは限らぬ。」
「・・・・」

・・・そう 彼女の強い希望でもあり
郁美ちゃんは 今年の春 手術をすることになりました。
しかし それは 日本で行うのは 難しいらしく、
また 手術後も しばらくは長期入院を余儀なくされるらしく
だから 郁美ちゃん、そして、雄蔵さんは・・・

・・・・・・・・

「・・・そんな 顔をするな、鈴香。今生の別れでもあるまい。」
「・・・ですね。郁美ちゃんとはメールもありますし。・・・雄蔵さんも できますよね?」
「ふん メールは苦手だ。」
「・・・・・・」
「そんな顔をするなといっておる。・・・手紙をだす。それで 良かろう」
「・・・はい お待ちしてます♪」
「ふんっ」

彼は 少し困ったような 顔を見せ 照れ隠しにそっぽを向きます。
それは 初めの頃には 考えられない表情です

そう、あの頃の 雄蔵さんは 大きく強く そして 少しだけ怖く
人を寄り付かせないような 印象を持ってました。
その割りには いきなり私の側に 現れたりして
いつも 驚かされたものでした

・・・そう あの時から・・・

「・・・一年も経ってるのですね」
「む?」
「あなたに お会いしてからです。」
「・・・そうか たった一年だったのか」

・・・・・・・

あれから一年。たった一年

結局 彼は妹のために一生懸命な お兄さん だったわけで
たまには暴走もあったわけですが

そんな姿を ほほえましく思い、
そして 少し うらやましく思い、

最初は 好奇心だったけど
やがて 好意に変化して
今の気持ちは 恋かもと
思うと少し さびしくて

結局 私は宅配屋で
だけど それだけじゃないと 信じていたく
郁美ちゃんは 笑ってくれて
雄蔵さんは 認めてくれて

・・・・・

悲しみも たくさんあったけど
ケンカも 少し あったけど

それらを全部含めても
みんな 大切な思い出といえるものばかりで

・・・・・・・ だけど ・・・・・・


・・・どれだけの 時間が経ったのでしょうか・・・

いつの間にか 青空に赤みがかかり
遠くから 夕闇が迫ってます。

聞こえる 場内アナウンスも
更衣室使用の 終了や 宅配便準備などの連絡に変わっていました。

「・・・もうすぐ コミパも終わりですね」
「そう・・・だな」

「では 私は これで」
「・・・行くか、鈴香。」
「はい これから 仕事が忙しくなる時間ですので」

今の時間は 会場客が 押し寄せる 一番忙しい時
本来ならば もっと早くいかなければ いけなかったほどです。

「・・・風見」
「はい」
「・・・・・・今までご苦労だった。お前に出会えたことを 俺は最大の幸運に思う」
「・・・こちらこそ、長らくご利用いただきありがとうございました」
「・・・達者で暮らせ。」
「雄蔵さんも ・・・お元気で」

・・・・・・・

最後に 軽い会釈で 頭を下げると
そのまま 私は会場に向かって 歩きはじめました。
留まる 彼に背をむけて、私は 走りだしました。
そのまま 振り返ることもなく、
うるんだ瞳を、見られないように

目の前に見えるは 広い会場、祭りの終わる 大きな会場へと

私の仕事はこれからなのだから。



・・・・・・・・・

こうして、
私と立川さんの 一年は終わりました。

・・・・・・・・・



・・・・そして・・・

私は車を走らせてます。
いつものように 荷物を積んで。
お客様の ご依頼の場所に ご希望の品物を運ぶ
それが 私の仕事ですから
そう これは いつもと同じ 普通の日常
だけど 少しだけ変わってしまった いつもの日常

・・・・・・・

交差点での信号待ち。 そこで 私は ふと見上げました。
フロントガラス越しの青空には 一筋の白い飛行機雲が

・・・・

私は 軽く手を振りました。
見えないぐらい、こっそりと

もちろん その雲が 彼等の飛行機のものとは 思っていません
だけど、私は知っています。
この青空の中に 彼らは旅立っていくこと
今 ここに 彼らが いないこと・・・

だから 私は 軽く手を振りました。
気づかれないくらいに、こっそりと
どこまでも 高く広い空に

・・・彼らを乗せた あの空に向かって・・・

・・・・・・・・・

【弥生編: あの空に軽く手を振って (完)】



あとがき

ようやく ここまで・・・(^v^

と ご愛読 ありがとうございました ゴンジーと申します。
初めて描いたのが 確か3年前の10月
途中休暇期間があったものの
なんとか 予定の弥生編まで 描ききることができました。(>_<

この作品を書き上げるにあたり いくつか制約を決めていました。

一つは 原作に出来る限り忠実なサイドストーリーにすること
一つは 実際の月ごとに話を決めて書くこと。
そして 弥生編まで 書き上げること・・・。

しかし これが なかなか難しくて・・・(ー。−;

例えば 葉月編について これは あとがきでも 述べてましたが
当初 和樹が海に行った日を書く予定だったのが
それが 7月だったのをしり 無理やり 時期をずらしたり

神無月編では 書きたいイベントが目白押しだったので
特別編と称し 二つも追加したり

逆に 霜月編や 睦月編では イベントがまったくないので
どう展開してしようかと あれこれ悩んだり・・・
(これが 休載期間を設けた理由だったりww)

あと 郁美ちゃんの幽霊イベントだけは ドウシテも 辻褄あわせができず
あれは あさひちゃん もしくは 本当の幽霊(笑)だった ということにしてで 
自分をなっとくさせたりなどなど
(いえ、だって DC版のCGでは 髪を解いてますよね?『大きいリボンをした女の子』の
 幽霊のはずなのに、つまり これは別人の可能性が高いわけですw はい)


まぁ それも 喉元過ぎればというやつで
こうして 曲がりなりにも 無事 目標を達成できましたw

これも ひとえに 皆様の応援があった(?) からこそです(^^

本当に ありがとうございましたm(_ _)m

というわけで 長々と描いてしまいまして 恐縮でしたが この辺で
もし ご購読いただき 少しでも楽しんでいただけましたら 幸いです。

それでは


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そして エピローグ編へw(ぉ




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