11話    友情のカタチ(前編)

「ふふふ・・・同志よ、共にこの世界に真の平和と正義をもたらそうではないか!」
「あぁ、この腐った世の中を正すためにも、大・・・カリスマンに賭けるよ」
―――――――――――

「いっやぁ〜〜〜〜〜〜〜〜!」
突然、瑞希が悲鳴をあげた。
「なんや・・・さわがしいやっちゃな・・・」
「ふにゅ〜〜」
「ど、どうしたんですか?」
「・・・・・・」
それに起こされる4人。
チュンチュン。
鳥のさえずりが聞こえるものの空は暗い。そして、震えるような寒さ。
それもそのはず、彼女たち・・・いや、コミレンジャーの面々は日本アルプスの山中にいた。
彼女たちの強化合宿が始まる・・・・。

「なんやて? 和樹がハラシロと手組んどる夢を見たって?」
「うん・・・」
瑞希が不可解な夢を告げ、円になって話し合っていた。
うな垂れる瑞希に申告な面持ちの3人、そして残りの1人はというと・・・
「そんなことで詠美ちゃんさまの睡眠をジャマしたわけ?信じらんな〜い!ということで、わたしはおやすみ〜」
床に着く者。
「アホはほっとくとして、でも、ただの夢やろ?」
「そうよね、いくら和樹でも・・・」
「・・・わたしも、見ました」
一瞬でその場の空気が氷つかすような彩の発言。
「・・・和樹さん」
・・・・・・・・・・・・・・。
重たい空気が漂ってる。
それでも彼女だけは
「くぅ〜〜」
夢真っ最中だった。
「まっ、そないな時のための合宿やし、和樹はそんなヤツやない」
「そうね」
由宇が楽天的にこの場を締める。彼女の明るさが生きた。
「そんじゃ、ボチボチ準備しますか? ハチさんも飛んでることやし」
ハチさん。ミツバチの容姿をしているが、偵察用小型カメラ。
そして、澤田真紀子指令の手に届く範囲外のコミレンジャーの監視にも兼用される。
「で、でも、え、詠美さんが」
あさひが振るえているような声をあげると、すぐさま由宇が右腕を振り上げる。
それに対し、「待ってください」と彩が由宇の前に出る。
「これを・・・」
彩の手に持たれていたのは一冊の本。
『激選!心霊写真100連発』
それを詠美の枕もとに忍ばせる・・・。
数分後、耳をふさぐ一同であった。

「ラジオ体操〜第一〜♪ ちゃんちゃらら〜ちゃんちゃらら〜♪」
昔懐かしい音楽が山中に木霊する。
朝のメニュー。ラジオ体操に5kmのロードワーク。
「さっむ〜い!」
一斉に声を上げた。
「なんで、牧やんはこんな時季にしたんや!」
「『寒くないと合宿にならないでしょ?』ですって」
由宇もわかっていたが、納得のいかない様子。
「ただのいじめじゃないの!?」
「お、大庭さん、ハ、ハチが」
「あ〜うっとうしい!」
超小型偵察用兼監視用カメラ、『ハチさん』も表に飛び出し、詠美を中心に軌道をとっていた。
「長谷部さんは寒くないの?」
平然とメニューをこなす彩を見て瑞希が尋ねた。
「・・・はい」
これをまた平然に答える。
「(ブラック・・・恐るべし・・・!)」
と、心奥深くで思うレッド・グリーン・イエロー・ピンクだった。
「ふか〜くいきを吸って〜♪」
ラジオ体操は深呼吸までにすすんでいた。
ろくにラジオ体操をしないままロードワークに出かける。


「はぁはぁ・・・」
「あ〜しんど〜!」
「ふみぃ〜〜〜」
「あ、あう・・・」
アップダウンの激しい山道。
初日でもあり、ろくに準備運動してない体が悲鳴を上げている。
「(さすがの彩でも・・・)」
みんなが一番後ろの彩のほうを見る。
「・・・・・・」

顔色ひとつ変えない彩の姿があった。
「ふつうじゃない」と、思う面々だったが、
「(って、感心してる場合じゃないわね。あたしはテニス部よ!意地っていうものがあるんだから!)」
結局5キロを完走できたのは、瑞希と彩だけだった。


朝のメニューをこなした頃には日も高くなっていた。

「ごはんどうする〜?」

本当なら早朝のメニューをしまし、清々しい朝日を浴びながらの朝食だったが、
お天道様は高々としていた。
そんな遅れた朝食、言わばブランチを作り終えた瑞希が皆の体調を伺うように聞いた。
「ウチはええわ・・・」
「わたしもいらな〜い・・・」
「わ、わたしもいいです・・・」
グッタリ気味の由宇、詠美、あさひに対し、
「・・・わたし、いります」
彩はいたって健康優良児だった。
「あんた食べんの?大人しい子だと思ったら大間違いじゃない!」
「やめとき詠美」
「そ、そですよ。けんかはよ、よくないです」
「あんた達は引っ込んでなさい! あんた、さっきからみてれば優等生ぶっちゃって!」
マイペース過ぎる彩が気に好かないのか、突然罵声を浴びせる。
由宇とあさひが止めにかかるが、
「・・・・・」
彩は詠美の目を見つめたまま無言だった。
「なっなにだまってんのよ! くやしかったらなんか言ってみなさいよ!?」
「・・・役立たず」
「なっ、なまいき〜!こっこの詠美ちゃんさまに『役たたず』なんて! ちょ〜むかつく〜!」
「よせlって詠美!」
彩に飛びかかろうとする詠美をうしろから支えこんだ。
「ちょっとパンダやめなさいよ!あんたのない胸が当たってるでしょ!」
「なんやて〜?今日ぐらい勘弁したろうと思おっとたんやけど!」
「あっ、あうぅ・・・」
ふたりにとっては日常茶飯事なことでも、あさひにとっては ただ立ちつくすだけだった。
「じゃ、じゃあ、あたしと長谷部さんだけ? 5人分作ちゃったわよ」
「あぁ、そんならあとで食べるからええわ!」
「ふみゅみゅみゅみゅ〜〜〜ん!」

「そ、そう?」

ビィービィー!

とても食事中とは言えない雑然とした空気に無線の音が響いた。
「はい。高瀬です」
「あらあら、みなさん大丈夫ですか?」
声の主は牧村南教授。おっとりした声とは裏腹にコミックZには不可欠な研究者だ。
暴れまわりぐったりとした詠美と由宇、そして、その場に座り込んでしまったあさひ、
彩は何食わぬ顔で食事をしている。
とてもではないがまとまりがあるとはいえない・・・。
「ちょっと・・・だいじょうぶじゃないみたいです」
瑞希はそんなメンバーを見て、苦笑しながら答えた。
「正義の味方さんにしてはすこし情けないですね。それに、詠美ちゃん?

 仲間同士でけんかはいけませんよ。今度やったら本当にお仕置きですから」
「ふみゅ〜」
一部始終監視されている南が詠美に告げる。
イエローカードもかなりの枚数のはずだが、難を逃れるが詠美らしい。
南がただ忘れているだけなのかもしれないが・・・。
「あら、その卵焼きおいしそうね?」
ハチさんモニターから見えたテーブルの上の瑞希が作った卵焼きを見つけ、
思わず声を漏らす南であった。
博士の普段の一面。
「それより牧やん、何の用や?」
「あ、そうそう忘れてました。あまりに皆さんがだらしないから、コーチを呼んでおきました」
「はい?」
疑問の声を上げる。
語尾が上向き。まさに疑問型。
「どうしたんですか?コーチですよ?いてもおかしくないじゃないですか」
「せやけど、『コミZ』にそんなヤツおるんか?」

「由宇さん、『コミZ』じゃありません。『コミックZ』です」
「別にいいじゃない、『コミZ』でも」
「詠美ちゃんまでそういうこと言わないでください。『コミックZ』です
 指令が『人類の平和のために』と創設した、由緒ある名前なんですから!」
コーチの話題に移ったはずが、話は全く別な話題になっていった。
それに乗る南も南だが・・・。
「・・・どっちでもいいんじゃ」
彩は言い合いを続ける中に終止符を打つが届かず。
「南、しゃべりすぎよ!」
無線の相手が変わると、一瞬にして緊迫した空気が流れる。
その声の主は澤田真紀子指令。コミックZの創設者であり、コミレンジャーの主でもある。
「いい、コーチの件は本当よ。今のあなた達にコーチをつけるのは危険かもしれないけど、

時間がないのよ!相手は待ってくれないのよ!!」
「・・・はい」
戸惑いながらも返事をする5人。
「よろしい!もう着いてる頃だからしっかり鍛えてもらうのよ」
「はい」
更にハッキリしたした返事で答え、無線が切れた。
「『もう来てる』って」
緊迫した時間から解かれ、肩をなでおろしながら瑞希が皆に向かって言う。
「そないなヤツ、見いへんかったけどな」
ガサ・・・ガサ。
「な、なにか聞こえませんか?」
「・・・はい」

襖のむこうから聞こえてくる謎の物音、
そして、『コミックZ』の語るコーチとは?
次回へ続く・・・


あとがき
祝! コミレン同人化!
と、いうことで、既に記載させてもらってました11話ですが、
旧作があまりに拙いので書き直してみました。
かなりわかりやすくなったはずですが、いかがなものでしょうか?
読み直してみて、自分で言うのもおこがましいのですが、今の自分の作風と違うので意外と面白かったです。(笑)
すこし新鮮な気持ちになりました。

キャラクター的なことは、他のところで経験したことが為になってたりします。(笑)
でも、やっぱあさひが難しいかな?(汗)
ではこの辺前編をおしまいとします。
あと3編ですね。(苦笑)
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