第２章 チームＩＫＫＡＴＵ出動不可能！？
「えぇぇぇ〜〜！！ なんでなんでど〜してぇぇぇ〜〜！？」
ともみちゃんと約束した次の日の朝、コミックＺオペレーションルームに玲子の声が響く。
オペレーションルームには、玲子と夕香、美穂、まゆのＩＫＫＡＴＵの面々、それに南さんを加えた５人が集まっていた。
玲子は、今にもちゃぶ台ひっくり返しそうな勢いで南さんに詰め寄っている。
というのも、南さんに事情を話したまでは良かったものの、その返答がGOサインではなかったからだ。
「まあまあ玲子、少し落ち着いて話しましょう……」
「そうよぉ、子供じゃないんだから」
「まあ、気持ちはわからないでもないけどねえ」
夕香、美穂、まゆが、それぞれに玲子をたしなめる。
彼女達は玲子の事情を既に聞いているのだ。
それは昨日の事。
『もしもし〜？』
「あ、夕香？ ちょっちお願いがあるんだけど〜☆」
玲子はともみちゃんと別れたあと、例の車の行方を探るべく、夕香に連絡を入れた。
情報収集は夕香の得意分野なのである。
南さんによって手が加えられたノートパソコンが彼女の愛機。
どこに手が加えられたかわからないあたりが、ちょっと怪しかったりするのだが……。
とにかく、そのパソコンで発信機の信号を受信できるのだ。
「……ってワケなのよ〜」
玲子はともみちゃんとの約束について大まかに説明した。
『まあ〜、それは大変ですねぇ。わかりました、私に任せてくださいな』
「ホント？ さすがわ夕香！ さんきゅう〜☆」
『そのかわり、今日の晩ゴハンは玲子のオゴリですよ♪』
「にゅう〜、やっぱそうなる？ ま、しょうがないか〜」
そう、そこまでは予想できる範囲だった。
しかし……。
『では決まりですね♪ ２人とも、今日は玲子のオゴリですよ〜☆』
「へ？ ２人とも？」
『えっホント？ やった〜ラッキ〜！ ねえねえ、どこにする〜？』
受話器の奥から喜ぶ美穂とまゆの声が聞こえた。
「ちょ、ちょっと、なんでみんなそろってるのよ〜！？」
『ふふっ、３人娘は伊達じゃないんですよ☆』
理由になっていないが、妙な説得力はある。
『まあ、玲子の財布のことを考えて、いつものファミレスにしといてあげますね』
「そ、そりゃどぉも……」
実際、ありがたいのかそうでないのかは微妙なところである。
３人娘侮りがたし。
ともあれ、ＩＫＫＡＴＵミニ作戦会議ｉｎファミレスが開かれた。
玲子は３人娘に詳しい事情を説明し、協力を求めた。
いや、協力というより強制である。
そしてフリードリンクで４時間ほど粘った甲斐あって、目的地の特定に成功。
次の日の朝に南さんにＩＫＫＡＴＵ出動許可を要請することを決め、ミニ作戦会議という名のお食事会はお開きとなった。
「ふぅ、ごちそうさま〜♪ そいえば玲子ってば、あんま食べなかったね？ ダイエットでもしてるの？」
そんなことを言っちゃう美穂。
「ううん……ダイエットしたのは、あたしのお財布よう……」
「ふっふっふ、お財布ダイエットだったら、ボクはいつでも協力するからね♪」
「いいえ、結構です……心の底から遠慮します……」
給料日前でキツかったのに〜。
ある意味、ホントにダイエットになっちゃうよう。
……でも、よく考えると好都合かな？
そう、貧乏は痩せる、これは宇宙の真理！
そう思えば辛くない！
玲子は、とりあえず前向きに考えることにした。
「あら、どうしました玲子？ なにか考え事でも？」
「ううん、大丈夫！ 負けるなあたし！」
「？？」
玲子の意味の判らない返答に首をかしげる夕香。
そんな夕香を気にとめず、テンションを維持する玲子。
「それじゃ明日の朝、基地に集合！ 遅れたらメッコールイッキ飲みの刑だからね〜☆」
「な、何でメッコールをイッキ飲みかなぁ……」
少々の疑問を残しつつ、４人は家路についた。
と、まあ、そんなわけで。
ＩＫＫＡＴＵの４人は、今こうして南さんに出動のお願いをしているのだが……。
ちなみに残念ながら誰も遅刻しなかったので、メッコールは基地の冷蔵庫の中で、いつ来るか判らない出番を待っている。
「どーしてダメなんですかぁ〜！？」
玲子は南さんにさらに詰め寄る。
２人の間には、もうほんのわずかな距離しか残っていない。
「あらあら、それは早とちりですよ、玲子さん。私はまだダメとは言ってませんよ？」
「だってだって、『それは難しいですねえ』ってさっき言ったじゃないですかぁ！？」
さらに接近。
「ええ、難しいのは事実ですねえ」
ちょっとのけぞりつつも、さらっと言ってのける南さん。
もちろん笑顔のままで。
「ほらほらやっぱりぃぃ〜！！」
「ですから、難しいのであって、まだ……」
「こらぁっ！ 落ち着け玲子！！」
南さんが最後まで言い切る前に、美穂が玲子を後ろから羽交い絞めにした。
「うわっ！ ちょっ、何すんのよ美穂〜！ 放してぇぇ！！」
「それはムリだよぉ。これ以上ほっといたら、玲子と南さんのキスシーンでも見ちゃいそうなくらい接近してたからねえ」
そんなことを言いつつも、まゆはちょっと見てみたそうな顔をする。
「あら、そうなんですか玲子さん？ 私にそっちの趣味は無いんですど……でも、玲子さんがどうしてもと言うのなら……」
視線をそらし、ちょっぴり頬を赤らめる南さん。
こっちもまんざらでも無さそう。
「何でそうなるのぉぉ〜！？」
玲子が非難の声をあげる。
それを見ていた夕香が、脱線しそうな話の流れを元に戻す。
「えーと、つまり南さんが言いたいのは、あまり私的な理由で出動させるのは難しい、そういうことだと思いますが？」
「そうそう、それです。夕香さんの言うとおりですね♪」
「え〜！ だってあたしたち正義の味方でしょお！？ なのにどーしてぇ！？」
美穂に羽交い絞めにされながらもジタバタ暴れる玲子。
やはり、どうにも納得がいかないようだ。
「う〜ん、困りましたねぇ。私の一存ではどうにも……」
その時、混乱しつつあるその場を静める、一人の女性の声がした。
「なら、私が許可すれば問題ないわけね、南？」
「「「「「！！」」」」」」
全員が声の主に注目する。
「澤田司令……？」
いつの間にか、壁に寄りかかるようにして真紀子が立っていた。
腕を組むというよりは、左肘を右手で抱え込むような感じ。
そしてゆっくりと５人のそばへ歩み寄っていく。
「あ、司令〜！ 聞いてくださいよぉ！ 南さんってばイジワルなんですよぉ〜！」
「ええ、話は聞かせてもらったわ、玲子さん。でも南の考えもわかってあげてね」
「話を聞いてたって、司令、一体いつからそこに？」
もっともな疑問を持った美穂がそれを口にする。
「あななたちが南に事情を話しているあたりかしら。私が入ってきたときには誰も気付かなかったようだけど」
「それならば、どうしてもう少し早く玲子を止めてくれなかったのですか？ そうすればこのような状況にはなりませんでしたのに……」
「それは……」
夕香の疑問に、今度は少し間を空けて答えようとする真紀子。
５人は真紀子の言葉に注目する。
しかし、その続きは意外なものだった。
「面白そうだったからよ」
「「「「…………はい？？」」」」
真紀子の返答に唖然とするＩＫＫＡＴＵの４人。
普段の真紀子からは予想もつかない一言。
だが、南さんだけは特に驚いた様子はなかった。
「それに、南と玲子さんのキスも見てみたかったしね」
「あら〜そうだったんですか？ もう、先輩ったら☆」
気が緩んだせいか、思わず『先輩』と言ってしまう南さん。
一方の４人は、そろってポカンと口をあけて、時が止まったかのように固まっていた。
「ん？ どうしたの、みんな？」
真紀子が４人の様子に気付き、声をかける。
そしてまゆの時間がようやく流れ出した。
「し、司令って、そーいうことも言うんだぁ……意外だなぁ……」
当の真紀子は、さも当然の事のように言う。
「そうかしら？ 私だって、四六時中気を張り詰めてる訳ではないのよ？」
「ええ、先輩は昔からこんな感じでしたよね♪ そういえば、高校の時なんて……」
「こら南、余計なことは言わないでいいの！」
「うふふ、ごめんなさい☆」
南さんの頭に、微笑みながら軽くコツンとやる真紀子に、可愛らしく舌を出してあやまる南さん。
確かに普段ではなかなか見られない光景ではある。
そして、珍しいものを見てすっかり調子の狂った玲子が、なんとか口を開く。
「え〜と……と、とにかく、あたしたち、出動してもいいんですよね？」
その問いに、ふっと真顔に戻って真紀子が答える。
「ええ。いいわね南？」
「もちろんです。澤田司令がそうおっしゃるのでしたら、なんの問題もありません♪」
南さんが笑顔で答える。
彼女としても、反対どころか、むしろ出動させてあげたかったのだから。
それを聞いて、すでに横一列に整列しているＩＫＫＡＴＵの４人に対し、真紀子は凛とした声で命令を下す。
「チームＩＫＫＡＴＵに指令を与えます。作戦内容は、奪われたぬいぐるみの奪還。では、各員の健闘を期待します。」
「「「「了解！！」」」」
ビシッと敬礼する４人。
「みなさん、がんばってくださいね〜♪」
「もちろんですよぅ☆ 必ず取り戻すんだから！ ともみちゃんの笑顔のためにっ！！」
そう誓うと、玲子は回れ右をして走り出した。
3人娘がその後に続く。
後に残された南さんは笑顔で4人を見送っていた。
しかし真紀子の表情は、ほんの少しではあるが、どこか曇っているようにも見えた……。
つづく
【あとがき】
どもです、デロンです〜☆
やっとメインキャラが出てきました。
これでちょっとはコミレンジャーらしくなったかな？
いや、なってないかな？（笑）
でも話はあんま進んでません（爆）
さらに、ある事情で次回以降が遅くなる可能性大……
うう……ここまで読んで頂いたみなさん、お願いだから見捨てないでね？
それではまた〜☆