〜プロローグ〜

「んじゃ、また明日な、瑞希」

　画材の入った袋を右手に、スーパーの買い物袋を左手に、ちょっとだるそうな挨拶をする和樹。
う〜ん、最近徹夜が多いみたいだし、疲れてるのかな？

「うん、それじゃね♪」

　一方、手ぶらでにっこり挨拶するあたし。
　どことなく足取りの重そうな和樹の後姿をしばらく見つめ……。

「ふぅ……」

　ため息一つついてみる。

　今日、あたしは和樹の買出しにつきあった。
　無事入稿をすませ、やっと一息つける和樹のために、
　何かおいしいものでも作ってあげようかと思って
　冷蔵庫を空けたら、何にも入ってないんだもん。
　ちょうど画材のストックも無くなってきたみたいだし、
　なかなか外に出たがらない和樹を半ば強引に連れ出して、一緒にお買い物。
　スーパーで一通りのものを買い、その足で画材屋さんへ。

　ここまではよかったんだけど。
　和樹御用達の画材屋さんでは彩ちゃんが働いていた。
　和樹と彩ちゃんが画材の話で盛り上がっている間、
　あることにふと気付くあたし。
　そういえば、みんなコミレンジャーとしての時間以外でも、何かかしら頑張ってるんだなぁって。

　猪名川さんと大庭さんは、言わずと知れた同人作家。
　彩ちゃんも同人活動してるし、今もこうしてバイトを頑張ってる。
　千紗ちゃんだってお家のお手伝いしてるし、
　あさひちゃんは押しも押されぬアイドル声優。
　南さんや澤田司令、鈴香さんもそれぞれ立派な仕事をもってる。
　でも、あたしは……？

「ふぅ……」

　ため息、もう一つ。
　和樹に何か食べさせてあげたかったのに、ちょっとそんな気分じゃなくなっちゃった。
　ゴメンね、和樹。

　……。
　あたしには何ができるんだろう？
　いきなりマンガ描けって言われても無理だし。う〜ん……。

「……何か新しいこと始めてみようかなぁ？」

　な〜んて言ってみたりして。

　テュルル〜ルル〜　ルルルルルルル〜♪

　突然鳴り出すあたしの通信機。
　コミックＺからの通信？　とりあえずでなくちゃね。

「もしもし、瑞希です」
「にゃあ、瑞希のおねーさん、こちら千紗ですよ☆」

　通信はコミックＺオペレーターの千紗ちゃんから。

「どうしたの、千紗ちゃん。何かあったの？」
「えとですね、南のおねーさんがみんなを集めて欲しいって言ってたんで、
　えと……そういうことです♪」

　なるほど、召集ね。

「了解、今からそっちに向かうね」
「はい、お願いしますです☆」

　……。

　みんなに会えば、少しはこの気分も晴れるかな……？

【本編へつづく】

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