ソコは 東京にある とあるアパート
都心から 若干離れてるものの 生活するには何不自由なく
大学からも近いため 学生が多く住んでいる。
そして そんな場所に訪れる 女性が一人。
赤く長い髪を右側にまとめた その女性の左手には 買い物袋。
中身は 一見して食材であることが分かるが。一人分にしては 量が多すぎる。
女性は 軽い足取りで 階段を登ると 数あるドアの一つの前に止まった
ピンポーン♪
「和樹ぃ〜 入るわよ〜っ？」
空いていた右手で チャイムを押すと
女性 高瀬瑞希は 相手の返事を聞かずに
鍵のかかっていないドアを開ける。
そう これは 彼女の日常的な行為。
マンガ描きとしては一流だが 生活力が著しく乏しい彼のために
たまに訪れては 掃除したり御飯を作ったりと世話を焼いていたのだ。
「まったく無用心よね 鍵もかけずに・・・ところで それは 何してるの？」
そして 住人 千堂和樹はというと、
本やら 紙やら 菓子の袋やらで散らかった 部屋
・・・コレ自体は いつもの見慣れた光景であるが・・・の中で 空のダンボール箱を見つめ 唸ってた。
「見ればわかるだろ。ちょっと 部屋の物を整理しようと 思ってな」
「わからないから聞いたのよ・・・って あとかたずけ！？ アンタが？」
「なんだよ そんなに驚くようなことか？」
「うん かなり。色んな意味で」
・・・その間０．５秒の即答・・・
図星をつかれた 和樹は頭をかく
「・・・ほら コノ前ので仕事が 一応ひと段落したから、今のうちに 身の回り整理しておこうと思ってだな 」
「コノ前って ああ澤田さんに送った原稿？」
「・・・ああ、まぁ そんなとこ・・・」
「ふ〜ん、それは殊勝な心がけに聞こえるけど・・・ じゃあ この部屋の状態はどう説明するの？」
「ぐっ・・・」
さらに図星をつかれ 言葉につまる千堂和樹。
実際 『不要品』と書かれたダンボール箱の中に入っていたのは
たった数冊の同人誌だったりする。
「いや〜 ハハハ。 こうして見なおしてみると やっぱり 捨てるのは惜しいというか。
コノ本だって また 後で読みたくなる時もあるかもしれないし。」
「（はぁ〜・・・）まったく その点はアンタらしいけど。まぁ そういうことならーーー」
ポイポイッ ポイポイッ！
「ち、ちょっとちょっと 瑞希さんっ！？」
「遠慮しなくても いいわよ 私だって ゴミ屋敷に通いたくないし。こういうのはね 勢いが大切なのよーーとっ♪」
彼女の動きは止まらない。手馴れた手つきで本をまとめては
次々とダンボール箱の中に入れていくーーー
「いや 確かにそうだったが ーーーーて ちょ、まて 何故ベッドの下を！？」
「大丈夫、アンタの性癖は コノ前で あきらめてるから（ゴソゴソッ）ーーーと
この本。いらないわよね。 大分使われたようだし」
「あっ いやそれは大事なお宝ーーじゃなく 資料ーーー ちょ だから まて その本だけは ご勘弁をーーーッ！！！」
ポイポイポイッ
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・
・・・・数時間後 ・・・・
・・・トントントンッ・・・
見違えるほど綺麗になった部屋の中で、まな板の上で 小気味よく響く包丁の音
そう瑞希は 当初の目的である 御飯の準備を行う。
側には ３箱に増えた 『不要品』と書かれたダンボール箱。
ちなみに全て厳重に梱包されており 簡単に取り出せないようになっていた。
・・・そして 彼は その箱を見つめ 体操座りでいじけていた・・・
「もうっ いつまで うじうじしてるのよっ。 片付けると決めたのはアンタ自身でしょ？」
「そんなこと言ったって・・・・。お前なぁ、これだけで 幾らしたと思ってんだよぉ（グスッ）」
「そりゃあ 和樹の気持ちだって これでも少しはわかるわよ これでも。
でも こういうのは 中途半端に残しても 邪魔になるだけでしょ。
こうと決めたら即行動っ。 すっぱり捨ててしまえば踏ん切りがつくものなの」
「・・・そんな、もんか？」
「そんなもんよ。だから あきらめなさい 和樹」
「・・・わかった お前の言うとおりにするよ。」
「うん わかればよろしい♪」
「・・・そっか・・・まさか お前に言われるなんてな・・・」
（・・・・・・・あれ？）
・・・この時 瑞希は どこか奇妙な 違和感を感じた・・・
いや 今だけではない 部屋に入ってきた時から 今日の彼は どこかおかしかったのだが
今のセリフも 廃品の山に言われたものではない まるで もっと別のなにか重要な意味があるような・・・・
「かずｋーーー」
「そういえば瑞希。編集長、原稿を送った次の日 お前に何か言ってなかったか？」
「え？ ううん。 最近仕事が 忙しいらしくて あまり話は。」
「そっか・・・じゃあ 今度の日曜、時間 空いてるか？」
「へっ？」
脈絡のない 会話に翻弄されながらも 彼女は脳内のスケジュール表を照合する。
実際のところ 今のところ特別な予定は入っていない。
もっとも ハラジロシスターズの活動が活発化してる現在
どんな不測の事態が起こり 非常召集がかかるか わからないのであるが。
「ん〜・・・今のところはないけど。ひょっとしたら 用事が入るかも」
「だったらさ・・・その日 俺とデートしてくれ」
「！？デッー！？」
ザクッ！？
「！？イタッ！？」
「瑞希！？」
「だ、大丈夫っ ちょっと指を切っただけだから・・・」
バンソウコウを探す和樹を横目に 瑞希は切れた指を口に含んだ。
幸いなことに傷口は浅い しばらくすれば これで血も止まるだろう。
「おいおい なにやってんだよ瑞希」
「そ、それは 和樹が変なこと言うからっ」
「別におかしくなんかないだろ 今までだって よく出かけてるじゃないか」
「そ、それは そうだけど・・・」
確かに 二人は 以前から 遊園地や映画館や買い物に出かける時がある。
が その時も 券が余ったから、とか 何かのついでに出かける等 その意味をはぐらかしている。
『デート』なんて ダイレクトな言葉を使うことは 今まで ほとんど なかった。
「・・・和樹 本当に どうしたのよアンタ」
「・・・別に 何もないよ いつものままさ、いつもの・・・」
「ほんとに ほんと？ もし 話したいことがあったら いつでも私にーー。」
「だからっ ソレがあるから 今度ーーーっ」
「・・・？？？」
・・・・・・・・・・・・
「・・・言いたいことは わかる。・・・ 今この場で言っても変わりない、ってんだろ。
でもな 頼むっ もう少しだけ待ってくれ。情けないが 俺にはまだ踏ん切りがつけられないんだ。だから・・・」
「・・・和樹・・・」
「ああ、もう いいだろっ 決定っ。 待ち合わせは昼の１２時 駅前な。
いいな ぜったい遅れたり 他の予定をいれるんじゃねえぞっ」
「・・・・・・・・・うん・・・わかった・・・」
「
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
いつもの日常で 流れていたの世界 ふいに生まれた 小さなずれ。
・・・だが このずれが 後に何を意味するものなのか、彼女は まだ知るよしもなかったのだ・・・
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同人戦隊コミレンジャー 第２９話 プロローグ