同人戦隊コミレンジャー第9話（前編）
昨夜の攻防から一夜が明けた・・・
無事任務を終えた 瑞希、彩、由宇、詠美、あさひの5人は
再びコミックZのブリーフィングルームに集結していた。
澤田「みんな 昨夜はご苦労様 五人とも 本当によくやってくれたわ」
五人が揃ったことを 黙認すると、コミックZの最高責任者である
澤田司令官は まず簡単に ねぎらいの言葉を口にした。
瑞希「いえ そんな、仲間を助けるのは当然のことですし」
由宇「それに 相手がアイツラだけやったしな。たいしたことはあらへんわ」
その 言葉にいち早く答えたのは 瑞希と由宇
詠美「そうそう♪ あんな奴 このクィーンの詠美ちゃんさまにかかれば
もうコテンパンのケチョンケチョンなのよ♪」
彩 「・・・(コクッ）」
更に 詠美の言葉に 彩が続いた。
あさひ「そ、それにしても 助けた方が ままさか鈴香さんだったなんて
・・・そ、その、びっくりしましたです。」
瑞希 「本当・・・鈴鹿さん、変装までしてたし、初めは気が付きませんでした。」
鈴香 「ええ 一応特別任務でしたので ちょっと頑張ってみていたのですよ。
でも 結局敵にばれてしまって・・・昨夜は お世話になりました」
あさひに続いて話しているのは風見鈴香さん。
実は 昨夜ハラジロシスターズに追われていた張本人である。
千紗「にゃぁ♪鈴香お姉さん すごいです。千紗も 皆さんの為に すごいお仕事したいです。」
南 「ふふふ、千紗ちゃんにも いつかお願いする時があるかもしれませんですから 。その時にお願いいたしますね」
千紗「はいです。千紗 楽しみにしてるです☆」
最後の会話は オペレータ係の千紗と、コミックZ責任者の牧村南教授。
というわけで 現在コミックZブリーフィングルームには 彼女達9人が揃っていた。
由宇「・・・それで 今日はなんのようなんや？ 澤田はん。労をねぎらうためだけに 呼んだわけやないんやろ？」
澤田「さすが わかっているわね猪名川さん。では そろそろ本題に入ろうかしら。」
そういうと司令は静かに席に腰掛けた。和やかな雰囲気が一転し、辺りに軽い緊張感が包み込む。
澤田「では南、例のものを 彼女達に」
南 「はい 司令」
そういうと南は茶色の封筒机に置き そのまま瑞希達の前に差し出す。
彩 「これ・・・昨夜の」
澤田「そう。これは昨夜 あなた達が風見さんと供に守ってくれたものね。封筒の中身を見てちょうだい。」
瑞希「は、はあ・・・（パサッ）」
司令の言葉にしたがい、まず瑞希が中身を確認した・・・そして・・・
瑞希「・・・な、なによっ？ これぇっ！？」
由宇「！？なんや なんや？」
詠美「えっ？なに なに なに！？ 一体なにが書いてあるのよぉ！？」
瑞希「・・・・・」
瑞希は何も答えない。彼女は 紙を持ったまま硬直していた。
不信に思った由宇と詠美は 硬直したままの瑞希の肩越しから 封筒の中身を覗き込む。
詠美「ふ、ふみゅみゅ！？（硬直）」
由宇「ほっほう、こいつは・・・みずきっちゃん あんたも好きやなぁ♪（ニヤッ）」
瑞希「（ビクッ！？）な！？ そ、それどういう意味よ！？
由宇「いやいや みずきっちゃんも やっぱり健全な女の子♪ちゅうこっちゃ☆」
瑞希「ち、違うわよ！？ わ、私はーーー」
・・・どうやら中身は厚手のA4用紙のようであった。だが紙を見ただけで ここまで慌てる人など居はしない。
あさひ「あ、あの私も・・・み、みせて・・・」
彩 「・・・？」
そんな 瑞希と詠美の硬直ぶりと由宇に謎の笑みにつられ、彩、あさひもA4用紙を覗き込み、厚紙の正体を確認した。
彩 「・・・・・・」
あさひ「・・・わ・・わぁ・・・（赤面）」
A４の厚紙の裏には キャラクターの絵と吹きだしと枠線がペンでかかれていた
そう。この厚紙の正体は同人誌用の原稿用紙だったのである。しかも その内容は・・・
千紗「にゃぁ？ なにが描かれているの・・・」
瑞希「！？ 千紗ちゃんは よんじゃ駄目っ！」
続いて 覗きこもうとする千紗ちゃんに気付いた瑞希は あわてて彼女を制していた。
千紗「にゃああ？どうしてですか？お姉さん」
瑞希「え、えっとそれはその・・・こ、これは大人にならないとわからない話だからよっ（汗）」
もっとも 実際には千紗の年齢は彼女達とは大差ないのであるが・・・
由宇「ま、確かに お子様達には刺激が強すぎるやもしれへんかな？ なぁ 詠美ちゃん？」
詠美「な、なによぉ！私はアダルトな詠美ちゃん様だもん！こ、こんなお話 全然 ちっとも 全く 平気だもんっ！」
由宇「そっか。詠美ちゃん様は大人なんやな？ ほなじっくり見せたるわ☆ ほれほれ♪」
詠美「ふみゅ〜〜〜〜っ 温泉パンダが苛める〜〜っ（涙）」
瑞希「・・・はぁ〜（溜息）・・・二人とも―――」
毎度おなじみな展開に対し、呆れつつも止めようとする瑞希・・・
澤田「猪名川さん、大庭さん 中身は確認できたかしら？」
だが 実際に二人（由宇と詠美）の騒ぎを止めたのは澤田司令の声であった。
由宇「！？は、はいなっ 読ませていただきましたで 澤田はん（汗）」
詠美「ふ、ふみゅぅぅ・・・（こくっ）」
澤田「ではコノ原稿について 気付いたことを述べてちょうだい」
由宇「き、気付いたことか？それは・・・」
詠美「ふみゅみゅ〜〜」
司令の 突き刺すがごときの鋭き眼光に対して、大粒の脂汗とゴマカシ笑いを顔に浮かべる
由宇と詠美の両名。そして・・・
彩 「・・・『ホホメス』・・・」
そんな二人に変わり 質問に答えたのは 今まで原稿を眺めていた彩であった。
由宇、詠美「！？」
瑞希 「？ 長谷部さん ホホメスって 一体・・・」
詠美 「ち、ちょっと ちょっと 彩ぁぁっ！？ コレがホホメスの作品ってことは、
まさか コレって『伝説の同人誌』の生原稿ってことっ！？」
彩 「・・・（こくっ）」
瑞希 「へっ 伝説の同人誌？それって・・・」
由宇 「あ、彩っち！ その原稿もう一度見せてみぃ！」
彩の返事を待たず 由宇は原稿を奪い取り、もう一度と見直す。先ほどと違い 真剣なまなざしで・・・
瑞希 「あ、あのぉぉぉ？」
由宇 「ほんまや、このタッチ、確かに『ホホメス』そのもんや☆」
瑞希 「だからぁ〜！ ホホメスって・・・」
あさひ「あっ、え、えっと・・・ス、数年前に居ました そ、その、『幻の同人作家』さんのことです。瑞希さん」
なにがなんだかわからずに、一人取り残されていた瑞希に対し、ようやく あさひのフォローが入る。
瑞希 「？まぼろしの同人作家？」
あさひ「ええ、その、とてもスゴイ作家さんなのですけど、だ、誰も見たことがなくて、その・・・謎なので、えっと」
瑞希 「へぇ〜〜っ・・・でも その人の描いた原稿が どうかしたの？」
由宇 「『どうかしたの？』・・・やてぇ〜？ なにを ゆうてんねんっ！ アンタはっ！」（ズイッ！！）
そんな何気ない瑞希の言葉に対し 今度は由宇が激しくつめよる。
瑞希 「ち、ちょっと猪名川さん？（汗）」
由宇 「ホホメスの同人誌はなっ！ 全ての作品が クオリティ、作画力、仕上げ技術も全て超トップクラスッ！
しかも『伝説』の名のとおり 同人市場でも滅多に見ることのできない超レア中のレア本なんやっ！
マニアの間では 一冊何万円以上の価格で取引されとるっ！
生原稿やったら それこそ何百万の価値になることやら・・・」
瑞希 「な、な、何百万円〜っっ！？ こ、これがっ？」
驚きのあまり 目をしろくろさせて 瑞希は原稿用紙を見直した。
十数ページの原稿が 何百万もするなど （比較的）一般人の瑞希には想像もつかないことであった。
詠美 「ふ、ふんっ！ それぐらい たいした事ないわよ！ あたしのだって それぐらいの価値があるんだからぁっ！」
そして、強がりを見せる詠美でさえも 声が少しうわずっていた。彼女も心の中では『ホホメス』の力を認めているのでしょう。
だが・・・
由宇 「しかし ウチは嬉しいわぁ〜 まさか そんな貴重な生原稿を コノ目で拝む事ができるなんて♪」
澤田 「そう・・・やはり あなた達でも わからないのね・・・」
一同 「「「「「？？」」」」」
突然の謎の言葉に 一斉に澤田司令の顔をみる五人・・・彼女の顔には 明らかな失意の表情が浮かんでいた。
由宇 「どないな意味や 澤田ハン？コノ伝説の原稿の どこに問題が―――」
南 「あのね 由宇ちゃん・・・それは『伝説の同人誌』ではないの」
由宇 「へっ？」
由宇達の疑問に対し 南教授が静かに答える。
南 「この原稿は ホホメスさんの名を騙り、そっくり真似て作られたもの・・・つまり『贋作』なのよ。」
・・・・・・・・・
そこは広い部屋だった・・・そして その部屋を占める空気は黒くよどんでいた。
何処に光源があるのだろうか？・・・蒼白い光が かろうじて 三人の人影を映し出していた。
大志 「――つまり貴様等はスパイには逃げられ、肝心の原稿も取り戻せなかった・・・と言うのだな？同志達よ」
不意に静寂が破られた。――と、影のうちのひとつ、直立不動を保っていた男が 振り返った
それに呼応するように、直立不動の影の前に跪く二つの影がびくりと振るえた。
オタク縦「お、お許しくださいでござるぅぅ カリスマン様ぁぁぁ〜っ！」
オタク横「ほ、本当は 簡単に捕まえている所だったのだなっ！ ですが あの時 アノ五人に邪魔されて・・・
そ、そうだなっ！悪いのはあのコミレンジャーどもなんだなぁぁぁ〜〜っ！」
そういうと総統の顔色をうかがうべく 二人は顔を持ち上げた。
ボコボコに膨れ上がった二人の顔は 昨夜の戦いの結果を物語っている。
大志 「・・・いいたいことは 終わったかね？」
バチバチバチッ・・・
直立不動であった影から 手が伸びだした。更にその手からは 禍禍しき光が溢れ始める・・・
オタク縦「オ、お待ち下さいでござる！ま、まだ作戦は終わっていないのでござるよっ！（汗）」
オタク横「そ、そうなんだなっ まだ僕たちには『コレ』があるんだなっ！！ コ、コレがこの手に居る限り、
僕達に失敗は ないんだなぁ〜っ（汗）」
大志 「・・・・・・」
カリスマンの手にあった禍禍しき光は 黒き光の矢に変わりはじめる・・・
カッ！！
ビガガガッガガーーーンンッ！
オタクズ「「ヒィィィィイ〜〜〜！！」
その刹那 黒き矢は ゴッザール、ナンダーナの頭上スレスレをかすめ、部屋の壁の一部を破壊していた。
大志 「・・・よかろう。ではお前達に もう少し猶予を与えてやる。感謝するが良い、我輩の慈悲部かさに」
オタク縦「モ、もちろんでござるよ カリスマン閣下！」
オタク横「カ、カリスマン閣下は 神さま 仏様 救世主さまなんだな〜♪」
大志 「クックックッ 頼りにしておるぞ 我が同志達よ」
だが、彼の視線の先にあるものは 自分の忠実なる僕ゴッザール、ナンダーナの姿ではなく 彼らの他の中にある同人誌であった。
・・・小さく『ホホメス作』と記されていた古びた同人誌に・・・。