「まさか・・・南がねらわれるなんて・・・・」
コミレンジャー秘密基地のとある１室では、澤田真紀子司令が頭をかかえていた。
「東京ドームの時といい、今回といい、内部情報が漏れている可能性がありますね」
鈴香の言葉に、眉をひそめる。
「東京ドームの事件の後、南さんを転居させましたけど・・・・」
「そうね・・・・・」
そういって、真紀子は先日発生した「南女史拉致未遂」の事案を思い返していた。
「それに突如あらわれた蒼い戦士・・・・。はっきりとは言えませんが、
現在のところすくなくとも敵ではないと思われます」
「・・・・・・・・・・」
「ですが、判断するには情報量が少なすぎますので、
ひきつづき情報収集という方向でよろしいでしょうか」
「そうね・・・・それじゃあ、その方向でお願いするわ」
鈴香の報告に別のところをにらんでいるような表情で答える真紀子司令。
そんな司令の姿に鈴香は釈然としないものを感じたが、
その正体がわからないので黙っておくことにした。
「わかりました。ま、これが、あたしの仕事ですから」
そういって、鈴香は帽子をかぶり敬礼を１つ。
「それでは・・・あたしは先にいってますね」
「ごくろうさま」
鈴香が退室して、独りになった司令室で真紀子は煙草をとりだすと、
火をつけて胸の奥まで吸う。煙をいっしょに吐き出した言葉は・・
「・・・・来たわね・・・・・・・・蒼い戦士・・・・・」
「きょ〜おのおやつはなんだろな〜〜〜♪」
「アホ・・・・はしゃぎすぎやで」
「大庭さん・・・・うれしそうですね」
午後の３時に近い頃。いつもどおりのおやつタイムに詠美はすっかりうかれている。
「だって〜〜〜〜〜〜今日のおやつ当番は彩なんだも〜ん♪
彩の買ってくるおやつって趣味い〜から、あたしだ〜い好き♪」
「そうね。長谷部さんのおやつはハズレがないわよね」
トップスのチョコレートケーキ。
マキシム・ド・パリのナポレオンパイ。
ＦＬＯのタルト。
ｅｔｃ．ｅｔｃ…
今まで彩の買ってきた歴々のおやつを思い返して、
瑞希もすっかりおやつモードにはいって紅茶の準備をはじめている。
彩のおやつに瑞希の紅茶。
詠美のうかれる気持ちもよくわかる。
「そおでしょ、そおでしょ、そおでしょぉぉぉ。
おととい、温泉パンダが買ってきたタイヤキは最悪だったから、なおさらよねぇぇ」
「なんやて！タイヤキのどこがワルイねん！」
「ふみゅぅ！ヒトにキムチ入りタイヤキ食べさせといてナニいってんのよぉ」
・・・そうなのだ。一昨日のおやつ当番であった由宇が買ってきたモノは
「おこのみタイヤキ」
食べるまで、中身がナニかわからない。
（※実在します）
こしあん、つぶあん、カスタード
これらを引いたら大ラッキー。
他にはイチゴジャムやバナナ。肉まんの中身にとろけるチーズや激辛カレー。
果てはキムチや謎のオレンジ色のジャム・・・
まさに考えられるだけのバラエティにとんだ代物だったのだ。
買った理由が・・・・・
「おもしろそやったから」（兵庫県・猪名川さんの証言）
・・・・・・あまりのすさまじさに、からし納豆入りタイヤキを食した真紀子司令が
経費で落とすのを認めなかったという１つの事件である。
「それに！タイヤキはやきたてが１番なんだから！」
「・・・・大庭さん。論点がずれてる」
ぷしゅーー。
瑞希が汗ジトツッコミをいれたとき、ドアが開いて、
ケーキ屋のビニール袋を手にした彩が帰ってきた。
「あ、彩〜〜☆おかえり〜〜〜」
「ただいま・・・帰りました・・・・」
おやつに、もとい、そういう彩に詠美をはじめとする４人がわらわらと群がる。
「ねぇねぇ彩〜〜。今日はナニ買ってきたの〜？」
「キャベツ・・・・です」
「「「「キャベツ？？」」」」
「ＨＩＲＯＴＡの・・・・キャベツ・・」
けげんな表情を見せる４人の前に、彩は「ＨＩＲＯＴＡ」とかかれた袋の中から
２０ｃｍ強の立方体の箱を３つとりだす。
「ＨＩＲＯＴＡのジャンボシュークリーム・・・・通称・・キャベツ」
「ジャンボシューって、コージーコーナーのみたいなやつの？」
瑞希がコージーコーナーのシュークリームの大きさをあらわすかのように
右拳をつくってさしだすと、彩はふるふると首をふって箱をあけた。
中から出現したのは、赤ん坊の頭くらいの大きさをしたシュークリーム。
（※もちろんこれも実在します）
「「「「・・・・・・・・・」」」」
あまりの大きさに声を失う４人。
「なんや・・・・コレ？」
「・・・・キャベツ・・」
彩は、瑞希が用意してあったケーキナイフを手にすると器用にそれを６等分にする。
その断面を見て、４人は「キャベツ」と呼ばれる代物の由来を理解する。
シューと薄くぬられたカスタードクリーム。
それとパウダーシュガーが幾重にも重なり、
それがまるで傍から見ると、キャベツの形態をなしていたからだ。
「なるほど・・・・・」
「たたた、たしかに・・キャベツ・・・ですね」
「ふみゅ〜さすがは彩ね♪」
「これはホンマうまそうやな」
次々と感嘆の声があがる。
「ふふっ。じゃ、あたしは紅茶をいれてくるわね。あさひちゃん手伝ってくれる？」
「あ、はい。瑞希さん」
そういって瑞希とあさひは、ぱたぱたと給湯室のほうに去ってゆく。
「ほな、ウチは牧やんたち呼んでくるわ」
「それじゃ、あたしお皿とってくるわね。彩はキャベツをきっといてね」
こくこく。
こういうときだけ行動が素早いのは、「やっぱり」なのである。
「いっただっきま〜す☆」
作戦室のテーブルの上には、９人分の１人２切れのキャベツと紅茶。
午後３時におこなわれる、コミレンジャー定例のおやつ＆作戦Ｔｉｍｅだ。
「さて・・・・・」
ひとしきり、他愛のない談笑がすんで、真紀子司令が口調をただすと、
それまでのなごんだ空気が一変して、部屋にはりつめた緊張感がただよう。
「こないだのサンシャインでの１件だけど・・・・」
「・・なんか、わかったんか？」
由宇の問いに、真紀子司令の隣りにすわっている情報担当の鈴香が
「さっぱり」といった感じで両の掌を上にする。
「正直なところ。南さんが狙われるとは思わなかったですね。
たしかに南さんがいなくなればこちらの戦力はソフト面ハード面、
ともに大幅な戦力ダウンですから・・・」
「・・・・敵も・・・めずらしく頭をつかってるようですね」
カリスマンやタングス天王が聞いたら、ひきつりそうなセリフがぽそっと流れる。
「・・・それに・・・・わたしたちを助けてくれた『蒼い戦士』・・・・・」
「そーよ！そーよ！この詠美ちゃんさまのお誘いを蹴るなんて、
なまいき×２！ちょ〜おなまいきぃ！！」
詠美の叫びに、つい先日のことが思い出される。
「あんたも『ハラジロシスターズ』とたたかっとんのやろ！？」
「だったら・・仲間」
「そーよ！そーよ！この詠美ちゃんさまにきょーりょくするぎむがあるわよ」
「おねがい！あたしたちに力をかして！」
しかし蒼い戦士はさびしそうな顔を見せると
「ごめんね」といいのこして去っていった。
「い、い、いっちゃいましたね・・」
「あーあ、やっぱ詠美のアホの言い方がまずかったんやろなぁ」
「ふみゅーん☆なによ×６」（泣）
（１７話「南さん、危機一髪！？」より）
・・・・・・・・・・・・・・・
「あああ、あれは・・あれは、お誘い・・だったんですか？」
「どう聞いても挑発か命令だったような・・」
「ウチやったら、飛び蹴りでツッコミいれるでアレは・・・」
詠美ちゃんさまの激昂に冷静＆冷淡なツッコミが次々とはいる。
「ふみゅー。ふみゅー。いいじゃないの〜〜〜〜〜〜」
こくこく。
「彩！そこ、詠美を甘やかすんやない！ったく・・・・」
「あ、そっちのほうでしたら、視認情報がありますよ」
紅茶のおかわりをすすりながら、
鈴香がドタバタでＱな５人に、さらっと言ってのける。
「「「「「・・え？」」」」」
ぴたっと動きを止めて、とたんに色めきたつ５人。
「ホンマか？」
「いったいどこで？」
「ど・・どんな、情報ですか？」
「ふみゅー！？あの蒼いヒト死んじゃったの〜！？」
・・・・・・・・・・・・・・・
しーーーーーーーーーーーーーーーーーーーん
空気が凍結する。
「ふみゅ？どおしたの？みんな固まっちゃって」
くいっくいっ
気がつくと、詠美のそでをひっぱっている彩がいた。
「なに？彩」
「詠美さん・・・死人情報じゃなくて・・・・・視認情報です・・・・」
「・・・・・・・・・・・」
しばしの間。
「ややや・・・やーねー。ジョークよジョーク♪
詠美ちゃんサマのちょっとしたブラックジョークじゃない」
「そのわりには声ふるえとんでアンタ」
「そこ！だまっとく！！」
由宇の呟きに詠美の素早いツッコミ返しが炸裂する。
「えっと・・・・ですね」
もうすこし、やさしい日本語を使っておけばよかったと
少し後悔している鈴香が気を取り直すかのように
紅茶をさらに１口すすりながら話をもどす。
「私達は１度、彼女を見たことがあるかもしれないんですよ」
「「「「「ええっ！？」」」」」
意外な言葉に５人の視線が鈴香に集中する。
「・・・・いつ・・・・どこで・・・ですか・・？」
瑞希が代表するかのように問い直すと、
めずらしく５人とも固唾をのんで鈴香の答えを待つ。
「後楽園♪憶えてませんか？」
鈴香が指をぴっと立てて答えると、４人の脳裏にある光景がうかんだ。
「にゃぁぁ！遊園地ですぅ」
「あらあら、後楽ガーデンね」
「にゃあ！コスプレした人たちでいっぱいですぅ」
「にゃぁぁ！あの観覧車のおねーさん、手をふってますぅ」
「瑞希おねーさん。あのヒトの格好、なんだかわかりますか？」
「んー・・ごめん千紗ちゃんわかんない」
「ああ、あれは『エアランドアームズ』ですね」
「ゲームセンターにある格闘ゲームでけっこう人気あるんですよ」
「あれは『正義の守護者 蒼きガッシュ』ですね」
「にゃぁぁぁ。かっこいいですぅ」
（１３話「激戦！闘強導夢！」より）
「・・・・・・あ！」
瑞希が「はっ」としたように顔をあげる。
「にゃあ！？ひょっとして？」
千紗も思い出したかのように声をあげる。
「・・・・・・？？？」
ただ１人、あさひだけが状況を把握できないまま、５人は勝手にもりあがる。
「あのカッコ！どっかで見たことあると思うっとったら・・！」
「アーケードで見たことあるわね〜〜」
「あ・・・・・・・・！」
ここへ来て、格闘ゲーム大得意の声優桜井あさひも
蒼い戦士の姿を思い出してはっとなる。
「「「蒼きガッシュ！！！」」」
「「「？？？？？？？？？？？？？」」」
声をそろえる詠美と由宇にあさひ。
あさひにいたっては
「ああ、あたし。あのゲームのヒロインの声もやってるんです」
と、言い出す始末。
一方、ゲーセンに行かない瑞希と千紗。
盆踊りレボリューション３ｒｄＭｉｘしかやらない彩は、
頭に？マークをかかえている。
「そういうコトなんですよ」
「・・・・・なにが・・そういうことなんでしょうか？」
にこにこしながら、全てを把握してそうな雰囲気でしゃべる南さんに
瑞希が怪訝な声でたずねる。
「あらやだ瑞希さん。さっき詠美ちゃんたちが言ったじゃないですか。
蒼い戦士の方はガッシュさんの格好をしてらっしゃるって♪」
（・・・・・言ってません）
瑞希は心の中で突っ込むが、イヤなものを感じて口にはだせない。
「ですから。今度はみんなでその蒼い戦士の方に会いにいってみませんか？
ってことですよ」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
心の中によぎる不安。
にこやかに話す南さんの言葉のウラの意味を知ってか知らずか、誰も口をひらかない。
にこにこにこにこ。
静かな空間を支配するのは、みんなの反応をまっている南さんの天使の微笑み。
ああ、この雰囲気にさからえるものがいるのだろうか。
いや、ない。
「ど・・・ど、どおやって・・・・でしょうか？」
しばしの沈黙のあと、あがなう力を失ったあさひが
５人を代表するかのように、おそるおそる南さんに問いかける。
すると南さん。
にっこり無敵のエンジェルスマイルと指を立ててるいつものポーズで
「きまっているじゃありませんか」
ごく・・・・・・・
南さんのセリフに５人が思わず息をのむ。
「みんなで行ってみませんか？『後楽ガーデンコスプレフェスティバル』」
「「「「いやぁぁぁーーーーーーっ！やっぱりぃぃぃ〜〜〜〜〜〜！？」」」」
絶叫する瑞希、あさひに詠美、由宇。
彩は、ただ１人だまってティーカップを見つめている。
「牧やん・・・・マジか？」
「そそそそそ、そんないきなり・・・」
「ふみゅぅぅん。彩〜〜。だまってないでなんか言ってぇぇ」
こんらんしている詠美は、となりに座っている比較的冷静な彩に助けを求めた。
・・・・が
「その・・・私も・・・・やって・・・みたいです・・・・・コスプレ・・・・・・」
助け舟はこなかった。
「長谷部さんまで〜〜〜〜〜〜〜〜っ」
ついに瑞希も泣き叫ぶ。
もっとも・・・例外もいるようだけど・・・。
「まあまあ、落ち着いてください。瑞希さん」
パニックにおとしいれた張本人が、他人事のように瑞希たちをなだめにかかる。
「これは、作戦会議の一案ですから。
真紀子司令が認めてくれなければ、実行できませんよ」
ウラをかえせば、真紀子司令が命令をくだせば
有無をいわさずコスプレをさせられてしまうということなのだが、
今の瑞希にそこまで判断できる能力は残っていない。
「司令・・・？」
半泣き状態で真紀子を見やる瑞希。
そう・・最後のかすかな光にすがるように・・・・・・
・・・・が、
「了承」
１秒で作戦は了承されてしまった。
「いやあぁぁぁぁぁ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜！！」
「衣装とチーム分けはこっちで決めとくわ。それじゃ、今日の作戦会議はこれで終了ね」
「はい」
淡々と話す真紀子司令。
にこやかにはなす南さん。
「そんなあああぁぁぁぁぁぁぁ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜！！！」
瑞希の悲痛な絶叫だけが作戦室にひびきわたっていた。
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幕間休憩の座談会
玲子 「あたしのでばん〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜！！」
瑞希 「ど、どうしたの？玲子さん。いきなり叫び出んじゃったりして」
詠美 「そおよ！びっくりしたじゃない！ひじょおしきよ！」
由宇 「・・・・あんたが言う資格ないで・・・・それ」
詠美 「ふみゅう！どおいうことよ！」
由宇 「そんまんまのイミや。胸に手ぇあてて考えてみ」
玲子 「あ〜た〜し〜の〜で〜ば〜ん〜〜〜〜」
あさひ「そそ、そういえば。玲子さん・・その・・・出なかったですね」
玲子 「しくしくしく」
瑞希 「ま、まあ、ファンから差し入れの白い恋人でも食べて元気だして」
玲子 「うう。あ、ありがとう。瑞希ちゃん・・・・はぐはぐ」
由宇 「瑞希っちゃん。この『白い恋人』どこで入手したん？」
瑞希 「あ、ファンから玲子ちゃん宛てに送られてきたの」
詠美 「ふ〜ん。あ、けっこういけるわね。・・はぐはぐ」
あさひ「そ、そんなファンがいるなんて。あ、あたし、玲子さんがうらやましいです」
瑞希 「あさひちゃんが言ってもあんまり説得力がないような・・・」
由宇 「しっかし、今回はナニ書きたかったんか、あんま伝わってこーへんなぁ」
詠美 「キャベツを書きたかったんじゃな〜い？今もこうしておやつネタだし」
玲子 「でも、コスプレイヤーは大好きな甘いものよりも体型維持の方が大事なのよぉ」
瑞希 「う〜ん。玲子さんが言うと説得力あるわ」
玲子 「そおよお。毎日の体型＆体重チェックは欠かせないんだからぁ」
詠美 「じゃ、この最後の１枚も〜らいっと☆」
由宇 「あ！ウチもねらっといたのに」
詠美 「はやいもん勝ちだもんね〜。はぐはぐ」
あさひ「こここ、後編はどうなるんでしょうか・・・」
瑞希 「やっぱりコスプレしなきゃいけないわけ〜？」
由宇 「うちらもやらなあかんのかぁ？」
詠美 「ぱんだはやっぱり着ぐるみでしょ♪笹持って☆」
由宇 「商売繁盛、笹もってこ〜い！ってちゃうわ！どあほ！」
玲子 「あたしの出番・・・・・・・・・・・・」
由宇 「ま、そんなことよりも気になんのは・・・・」
瑞希 「気になるのは？」
由宇 「いったい誰なんやろなぁ。第６の戦士」
詠美 「あたしわかんな〜い☆」
玲子 「しくしくしくしく・・・・・・・・で〜〜ば〜〜ん〜〜〜〜〜〜〜」
（休憩中の楽屋から生中継）