同人戦隊コミレンジャー#13「激戦!闘強導夢!」

「あーっ!ほんまけったくそわるい」
「・・どうしたのかしら猪名川さん」
「つ・・ついにぱんだが野性にかえったよおね」

ここコミレンジャー秘密基地では
なぜかコミパイエローこと猪名川由宇があばれてい
た。

「南さん・・猪名川さんがあれている理由・・。ご存知ですか?」
「え?由宇ちゃんが?ん〜。
 どうしてどうしてどうして〜
どうしてか〜し〜ら〜
「南さ〜ん・・・・」

くいっくいっ


がっくりと肩をおとす瑞希が
うしろから服をひっぱられる感覚を覚えてふりむくと、

コミパブラックこと長谷部彩が1部の新聞を差し出している。

「これをみろって?」

こくこく。

「えーとなになに?宝塚記念枠順確定・・?」

ふるふる。
いぶかしげな表情で新聞をみつめる瑞希に首をふって否定の意を示すと、
彩は別の一
面を開いた。
すると周りにいた詠美やあさひも覗きこむ。

「・・?ダメ虎ずるずる6連敗・・・・・」

こくこく。

・・・・・・はぁぁぁぁぁぁぁ。
4人とも、ためいきをついておもわず顔をみあわせる。

「な、なにかとおもえば・・・・」

「たたたたたいへんですね」
「あらあらアノ日じゃなかったんのね」
「あ〜ばからし〜そんなの毎年のコ・・・・・」

背後から突如ふくれあがる殺気に詠美は言葉をうしなう。
詠美の後ろにあらわれた顔は、わらってはいるが、眼がわらってない。

「な〜んかゆ〜たかなぁ?え・い・み・ちゃん?」
「やややややや、や〜ね〜、な〜んもいってないわよ。ねぇみんな?」

こくこくこくこくこく

まるでキツツキが木を穿つかのような勢いで4人は首を縦にふる。

「・・・・ま、えーわ。じゃウチ早番やさかいお先に」
「「「「おつかれさまでした〜」」」」

その夜・・・
阪神タイガースは7連敗目を喫した。



「おはよ〜さん」

朝。いつものように由宇がでてきた。
が、その機嫌はあきらかにわるい。
なにしろ昨夜、由宇の愛すべき阪神タイガースは巨人の桑田投手に完封された上、
原選手にサヨナラホームランを浴びるという、
じつに後味の悪い負け方をしていたか
らだ。
おまけに、今朝の各スポーツ紙の一面が
「桑田、完封」「清原豪快サヨナラ」「KKコンビ虎退治」
だの、巨人の勝利をほめたたえていることが、由宇の不機嫌に拍車をかけていた。

「由宇ちゃん。おはよう」
「ああ、牧やん。おはよーさん」

ちょっとばかりそっけない由宇に南さんは困ったように首をかしげる。

「あらあら?どうしちゃったのかしら?そんなにムスッとしちゃって」
「え?ウチそんなにムスッとしとるか?」

由宇はあわてて顔に手をやる。

「そうよ〜。とってもコワイ顔してるわよ。
 それはアレ?昨日も阪神がまけちゃった
からかしら?」

どがっしゃあぁぁぁぁぁぁん!!!


盛大にコケる由宇。
南さんのいきなり核心をついた一言に基地内の温度が2度ほどさがった。

「牧や〜〜ん。・・それをゆうなや〜」

ひきつりまくった顔でゆっくりと由宇はたちあがる。

「あらあらあらあら、コワイかお。
 今日はせっかく由宇ちゃんにいいものもってきけ
あげたのに」
「ええもの?」

南さんはごそごそとハンドバックをあさりだすと、
由宇の眼前に数枚の紙片をさしだ
した。

「はいきょうの巨人対阪神のチケット」

そう。そこには光り輝くプラチナチケットがあった。
チケット=南さん。この思いもよらぬ組み合わせを見せられて、唖然とする由宇。

「牧やん・・。それ、いったいどないしたん?」

「はい。先日、親切な新聞屋さんからいただきました」

南さんはにっこり微笑むと、遠い目で一昨日あった出来事を話し始めた。

「おととい、新聞屋さんがいらっしゃいまして、洗剤やサランラップや、
 このチケッ
トとかたくさんプレゼントしてくださったんですよ」
「牧やん・・・それって」
「あと映画のチケットとか後楽ガーデンのチケットなんかも・・」
「牧やん、ストップ」

瞳をかがやかせながら話す南さんに由宇が待ったをかけると、
由宇はこの世の終わり
のような表情をうかべて南さんに問いかけた。

「牧やん・・・。あんさん、何ヶ月とったんや?」
「はい?」
「そいつはなぁ、悪魔の手先や。地獄の使者や。ああ、神さん、かんにんしてーな。
 ウチの牧やんは悪魔に魂をうってしもた・・・」
「由宇ちゃん?」

おおげさになげき悲しむ由宇を見て南さんは不思議そうな表情をする。

そんな南さんを由宇は、がしぃっと両手で肩をつかんで・・

「で?何ヶ月その悪魔に魂をうったんや」
「どうゆうこと?由宇ちゃん?」

南さんは由宇がなにを言っているのか、わけがわからないとばかりに問いかえす。

「牧やん。そいつら新聞の勧誘やろ?」
「そうよ〜〜」
「あああ、かわいそうな牧やん。いったい何ヶ月その新聞と契約したんや?」

すると南さん。

「いいえ。契約なんてしていないわよ」
「はぁ?」

おもわず由宇は間の抜けた声を出す。

「たしかに新聞をとってくれとはいわれましたが、
 私すでにあさP新聞をとっていま
すからと、おことわりしました」

にっこりわらう南さんの口から紡ぎ出される言葉に由宇はそれこそ、
あいた口がふさ
がらないといった感じだ。

「・・・牧やん。それでよくモノ返せっていわれへんかったなぁ」
「ええ、いわれましたよ」
「「「「「それで!?」」」」」

あきれた口調の由宇。にっこり微笑む南さん。
そしていつのまに近くにいたのか、瑞希、詠美、彩、あさひ。
4人は興味津々な顔で由宇と一緒に南さんをとりかこむ。
南さんは「あらあら」といった感じで5人を見渡してから

「私が『そうですか残念ですね』といったら
『やっぱりいいです』とおっしゃられて
帰っていかれました」

・・・・・・・・・・

その光景を想像して沈黙する5人。

「ないてへんかったか?そいつ」

かろうじて由宇がつっこむ。
すると南さんは「ええ」と答えると、さらに

「世の中には親切な方がいらっしゃるもんですねぇ」

と、おっしゃられた。

・・・・・・

新聞の勧誘員にちょっと同情する瑞希たち。

そしてさらに、瑞希たち5人の脳裏に
「南さんには絶対かてない」という思いがかす
めたことだけ、ここに記しておこう。

「じゃあ、チケットは8枚あるからみんなでいきましょうか」
「「「「「はーーーい」」」」」

ちょっと考えれば不思議なことだ。
なぜ8枚もチケットがあるのかを。
だが誰もそれを口にすることはなかった。だが瑞希たちは
(きっと南さん、ねだったんだろーなー・・かわいそうに新聞屋の兄ちゃん)
と今度は心の底からの同情を禁じえなかったのだった。



17:30
南さんを筆頭に由宇、瑞希、彩、千紗、詠美、鈴香の7人は
水道橋の駅に降り立っ
た。
目の前には日本で初めて建設された大きなドーム球場が鎮座している。

「ねぇねぇ南さん。あさPはぁ?」

「あさひちゃんはラジオの収録が長びいてるんですって。たいへんねぇ」
「ふみゅう。せっかくたのまれてたスケブとイラストできたのにぃ」
「へ〜めずらしいな。詠美がヒトのために動くなんて」
「ふふん。これだからぱんだは。いい?くぃーんたるもの
 しもじものものに、ほどこ
しをあたえるのは、とーぜんのぎむなんだから」
「ほほぅ。だったら、あんたがもろた
 桜井あさひのサインいりのポスターとCDはな
んや?」
「ふみゅう!?どーしてそれを?」
「ははは、やっぱなぁ。カマかけてみただけや」
「ふみゅぅう。ずるぅい」

「千紗、千紗ぁ。野球場はじめてですぅ」
「よかったわね。千紗ちゃん」
「はいですぅ。にゃぁぁぁおっきいたまごさんみたいですぅ」
「そういや私も東京ドームは初めてですね」
「あら?意外ですね、鈴香さん」
「ははは、瑞希さん。私、いつもはナゴヤドームなんですよ」
「なるほどなるほど。長谷部さんは?」
「はい・・何回か」
「へーそれこそ意外」

鈴香がおもわず口笛をふくが、彩の言葉で凍りつく。

「私・・巨人ファン・・・ですから」

いっせいにひく鈴香と瑞希。

「は、長谷部さん」
「はい?」
「「今日はそれ言わない方がいいとおもうよ」」
こくこく。

と、まあ。そんな風に騒ぎながら歩いている7人は周囲の注目をあびていた。
考えてみれば当然である。
1人でも視線を独占しそうなとびきりの美女が7人も集まっているのだ。
そしてこれも当然のことながら声をかける男どももあとを絶たない。
どぐしぃぃぃぃっっ!!!
由宇のデンプシーロールの前に10カウントのコングを聞いたものは
まだ幸せだっ
た。
激戦区は瑞希と南さん。
声をかけようとする男の数が多すぎるのか、周囲では大騒ぎ&大喧嘩になっていた。
だが、それだけならまだしも、その戦いに勝って、南さんに声をかけようとする輩を
攻撃する連中まで出てきて、事態はますます大混乱。
その喧騒の原因となった7人は事態収拾が不可能と見るや、
そそくさとその場をあと
にする。
そしてその場から去る瑞希が最後に目撃したのは
南さんに手を伸ばそうとして鼻の穴

パイポを奥深くまでつっこまれて悲鳴をあげる哀れなナンパヤローであった。


そうして、ある意味、修羅場からぬけでた7人は、球場の裏手へ避難していた。

「いや〜すごかったなぁ」
「やっぱ、ゆーめーじんはお忍びでこなきゃだめみたいねぇ」

こくこく。

その時、千紗が歓声をあげる。

「にゃぁぁ!遊園地ですぅ」
「あらあら、後楽ガーデンね」

都会の中にあらわれた幻想空間。通称「後楽ガーデン」
なおも千紗は歓声をあげる。

「にゃあ!コスプレした人たちでいっぱいですぅ」

ききなれた単語を耳にして、みんなつられるように遊園地をのぞきこむ。
するとそこには、「カードマスターピーチ」や「ファイターズブレイカー」等。なる
ほど多量のコスプレイヤー達が遊園地の中にあふれかえっている。
俗にいうコスプレ無料イベントだ。

「にゃぁぁ!あの観覧車のおねーさん、手をふってますぅ」

正確には千紗が手を振ったので向こうが振り返しただけだが、
千紗はうれしそうにぶ
んぶんと手を振る。 

「瑞希おねーさん。あのヒトの格好、なんだかわかりますか?」
「んー・・ごめん千紗ちゃんわかんない」
「ああ、あれは『エアランドアームズ』ですね」

かわりに鈴香が答え出す。

「ゲームセンターにある格闘ゲームでけっこう人気あるんですよ」

なるほど。ゲーセンに出入りしない瑞希と千紗がわからないのも無理はない。

「あれは『正義の守護者 蒼きガッシュ』ですね」
「にゃぁぁぁ。かっこいいですぅ」

くいっくいっ。

その時、瑞希は彩に袖をひっぱられて振り向くと周囲の雰囲気が異様なのを察した。

「みんな!なんかヘンよ!」

瑞希の警告をはらんだ声に、全員が身構える。
見まわすと、いつのまにか周囲に人垣ができている。

「集団ナンパ・・というわけではないみたいですねぇ」
「あらあら」
「ふみゅぅあたしなんもわるいことしてないわよぉ」
「殺りますか?」

彩がさりげなくおそろしいことをつぶやいたとき、街灯の上から笑い声がきこえた。

「ふ、ふふふ。ま、まっていたんだな」
「まんまとひっかかったでござるな」

どうやって登ったのかは知らないが、街灯の上にあらわれた姿は
秘密結社「ハラジロ
シスターズ」幹部のナンダーナとゴッザール!
それを見て南さんはのんびりとした口調でしゃべりだす。

「あらあら?あなたたちは・・」

「お、おぼえててくれてうれしんだな」
「こ、ここ、ここであったが百年目でござるよ!」
「牧やん!?しっとんのか?」

由宇がおどろいて声をあげる。
すると南さんはにっこりとほほえむと

「ええ。彼らがここのチケットをくださったんですよ」

・・・・・

数秒の静寂。

「牧やん・・・・それって」
「もしかして・・」
「もしかしなくてもぉ」
「ワナ・・?」
「あらあら」
「「「「あらあらじゃなーーーい!!!!」」」」

4人まとめて突っこむ瑞希たちをよそに、ナンダーナとゴッザールは語りだす。

「し、新聞の勧誘員とは、世を忍ぶカリの姿なんだな」
「チケットにつられのこのことやってきたでござるな」
「あらあら。そんなことをいっても新聞はとってあげませんよ」
「あの〜南さん?」

かわいく、ぷんすかする南さんに瑞希がつっこもうとするが由宇がそれをとめた。

「あかんあかん。瑞希っちゃん。
 牧やんに1から10まで説明しとったら朝までかか
るで」
「はやく・・・変身」
「わかったわ!」

変身する4人!


「コミパ・・ブラック」
「コミパグリーン!」
「コミパイエロー!!」
「コミパレッド!・・同人戦隊」
「「「「コミレンジャー!!!!」」」」

いつもどおりの変身とキメポーズなのだが、なぜかきまらない。

「くぅぅ。やっぱ4人やとスペシャルファイティングポーズはきまらへんか」

由宇がわけのわからないことを呟きながらも、
4人は南さん、千紗、鈴香を囲む
フォーメーションをとる。

「い、いくんだな。わが同志たちよ」


そうナンダーナが命令すると、コミレンジャー達を囲む人の輪が徐々に小さくなる。

「ふみゅう。きたわねぇぇぇ」
「なんやねんこいつら。眼ぇ死んどるで」
「どう見たって、一般人のようだけど・・」
「どうやら・・あやつられているようですね」

のろのろとコミレンジャーに接近してくる人の群れを見て、
ブラックが冷静な判断を
下す。

「気、気がついたみたいなんだな」
「そのとおり!こいつらはとおりすがりの一般人よ!ふわははは!
お主たちに手がだ
せるかな?ゆくでござる!われらが同胞よ!」

高笑いするゴッザール。が、彼等の優越感は、
ほんの1秒後に、キレイさっぱりふき
とんだ。

どがしぃ!!

「な・・・・?」

どかばしげきごきっっっっ!!!

せまりくる一般人をかまわずどつきたおすコミレンジャー!

「ひ、ひどすぎるんだな!」
「お、お主たち。それでも正義の味方でござるか!?」

あてがはずれて激昂するナンダーナとゴッザール。
とおりすがりの一般人をあやつって、コミレンジャーを倒す。
という、せこいもくろ
みはあっさりくずれた。

「あやつられるアホがわるい!」
「あたしに、はむかっただんかいで『こっかはんぎゃくざい』なんだから!」
「正当防衛よ!」
「正義は・・尊い犠牲の上に成り立つものです・・」

そういいつつ、包囲網をすさまじい勢いで突破する!
マヌケな表情でそれを見送るナンダーナとゴッザール。

「ふっ。やはり奴らでは無理か」

嵐のように駆け抜けるコミレンジャーの前にたちはだかる新たな人影!

「・・タングス・・天王!!」
「消えろ・・・」

包囲網を抜けた勢いそのままに突っ込んでくるコミレンジャーに
タングス天王は掌を
突き出した。
カウンターで衝撃波をくらい弾き飛ばされるコミレンジャー!

「くっ・・・・!」

レッドが顔だけあげて仲間をきづかう。

「千紗ちゃん?鈴香さん?南さん!?」
「にゃあああだいじょうぶですぅ」
「私たちなら平気です」
「あらあら、びっくりしましたわ」
「・・・・こっちは、あかんけどな」

身をおこした鈴香たちが見渡すと、
コミレンジャーたちはあやつり人形と化した人々
の群れに抑えこまれていた。
ゆっくりと近づくタングス天王。
そしてそれに付き従うナンダーナとゴッザール。

「終わりだ・・・・」
「と、とどめなんだな」
「積年のウラミはらさせてもらうでござるよ!」

タングス天王の右腕が天高くかかげられた時。

「まってください!」

澄んでいて、玲瓏とした声が、りんと響きわたった。
その声の主にゆっくりと視線を向けるタングス天王。

「なんの用かな?南博士」
「・・どうやって、なにもない人々をあやつれることができるのでしょうか?」
「そーよそーよ、ずるいわよ。このひきょーもん」
「うちもそれ知りたいなぁ」

南さんの問いかけに「そうだそうだ」とばかりにグリーンとイエローがさわぎだす。
タングス天王は勝者の余裕ともとれる笑みをうかべて答えた。

「ふん。ならば冥土の土産に教えてやろう・・。暗示だよ」
「暗示?」

けげんな表情をする南さんに対し、タングス天王はなおも続ける。

「そう、暗示だ。人々には欲望がある」
「欲望?」
「そう、あなたにもあるだろう。こうなったらいい。こうしたい。俺はここにいる民
間人共にコミレンジャーを倒せばある望みがかなうと言ってみただけだ」
「そ、それをぼくらの桃色毒電波でぞ、増幅したんだな」
「それをここにいる愚民どもにかけたでござるよ」

腹を張るナンダーナと胸を張るゴッザール。

「まあ、単純な命令しか出来ないのが欠点だが
 ・・貴様らをおさえることぐらいはで
きるさ。・・さらばだ!コミレンジャー!!」

タングス天王がふたたび右手をふりかぶる!


「もうひとつ!」

再度ひびく南さんの声にタングス天王はまたしても動きをとめる。
「なにをたくらんでいるかは知らないが、下手な時間稼ぎはやめてほしい」
「・・1つだけ。あなたは『ある望み』といいましたが、それはいったいなんです?」
「それは・・・」

めずらしく躊躇するタングス天王のわきから、
ナンダーナとゴッザールが得意げに
しゃべりだす。

「こ、ここにいるヒトたちはみんな巨人ファンなんだな」
「コミレンジャーをたおせば、巨人が優勝できるという暗示をかけたでござるよ」
「巨、巨人はぜったいに、ゆ、優勝しなきゃなんないんだな」
「巨人が優勝しなければこの国が滅びるでござるよ」
もう、典型的な某球団びいきの発言に南さんはなぜかにっこりわらって・・
「そう、それがききたかったの」
「「・・・・・・??」」

ナンダーナとゴッザールが南さんの言葉に眉をひそめた。
刹那。
人の山の一部が大きくはじけた。

「あらまあ、イエロー

それまで十数人がかりでおさえつけられていたイエローが
金色のオーラをたたえてた
ちあがる!

「コラ・・今のセリフもっぺんゆうてみいや。アンちゃん」
「馬鹿な!?一度にあれだけの人数を吹き飛ばしただと!?」
「ぬぅ!往生際がわるいでござるよ」
「い、いくんだな。我が同志巨人ファンよ」

十数人の暴徒がコミパイエローに一丸となっておそいかかる!
イエローは右手を天にかかげ、さけんだ。

「召還!タイガーメガホン!!」

 説明しよう!
コミパイエローはその気力ゲージがMAXに達した時、武器であるタイガーメガホン
を装備すると「コミパタイガー」にヴァージョンアップする!(外見はまったくかわ
らない。ただメガホンもってるだけ)その効果は攻撃力30%Up(当社比)!

「瞬着!コミパタイガー!!!」

右手のメガホンが光ってうなる!

「猛虎応炎弾ブレイク!シャイニングヴァージョン!!」

ずがががががががががががががががががっっっっ!!!!

派手にふきとぶ暴徒たち。

「安心せえ。峰打ちや」

あまりにも華麗な必殺の前にナンダーナ達は驚嘆(?)の声をあげる。

「あああっ!ひどいんだな!」
「名もなき民衆を・・!おぬしそれでも・・・」

どかばきぐしゃぼけっっっ!!

「名もなきひとつの死体にしたるでコラ」
「「ひぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!!!!」」

まさしく猛虎と化したイエローに2人はすっかりびびりまくる。

「それに!巨人ファンに人権なぞないから、ええんや!!」
「そ、そんな・・」
「あ、あああ、あんまりでござるよー!」
「じゃかあしいっ!!バックスクリーンまで飛びさらせ!
 ライトニングタイガー
ショーーット!!」

どばきゃぁぁぁぁぁ!!!

正義の味方らしい(?)言動でナンダーナたちを天高く蹴り飛ばすと、
残るタングス
天王にむかいあう。

「待たしたなぁ。どついて、たたんで、甲子園浜にうめたるで」
「フン・・なんだ?そこは?」
「甲子園駅から歩いて15分・・西宮市のゴミ捨て場や!
 あんたの墓ぁ建てといたる
!」

そういって猛然とダッシュをかける。

カウンターをあわせようとするタングス天王。
一瞬にしてイエローの姿が視界から消える。
背後から殺気を感じて前方に跳ぶ!
ついさきほどまでタングス天王の頭があった空間をイエローの裏拳が通過する!

「ちぃぃっ!」

そんな闘いをよそにレッドたちは・・

「イエロー・・完全に私たちのことわすれてるわね・・」
「ふみゅぅぱんだぁ」
「・・・・・・・・」

イエローVSタングス天王の脇では、
レッドが言ったように完っっ全に忘れ去られた
3人が抑えこまれつづけていた。

「にゃああああ」
「困りましたねぇ」
「あらあら、どうしましょうか」

南さんが困ったポーズをきめると、
どこからともなく聞き覚えのある澄んだ歌声が流
れてきた。

すると、それまでレッドたちを抑えつづけていた人達は
ふらふらとコミレンジャーか
らはなれると
糸の切れたマリオネットのようにバタバタとたおれてゆく。


「この歌声は・・・」
「仕事・・終わったようですね」
「ちょっとおそかったけど、ゆるしてあげるわよ」

薄暮の中から1人の美少女の姿がうかびあがる。

「「「コミパピンク!!!」」」
「あ、あの・・予定より、その・・仕事が、で、ですね・・その」

コミパピンクの「ミラクルボイス」により暗示が解かれるという思わぬ展開に
タング
ス天王は舌打ちをする。
それを見て、勝ち誇ったかのように歩み寄るイエロー。

「ふっふっふっ。見事に作戦失敗やな。どーやら天はウチらの味方らしーな」
「ほざけ・・!ならば・・」

形勢不利にもかかわらず、強気の態度を変えないタングス天王は
鋭い眼光でにらみつ
けると「びしいっ」とイエローを指さした!

「ならば・・・・・
今日はこのくらいでカンベンしといてやろう!」

どべしいぃぃぃぃぃっっっっ!!!

一斉にコケるレッドたち。
その隙に撤退の姿勢にうつるタングス天王。

「アホ!そうカンタンに逃がすかいな!」

だが、イエローの追撃もむなしく、タングス天王は虚空へと消えた。

「クソォ・・コテコテの捨てゼリフ吐いてきよってぇ」



一方・・・

「なんだなんだ?この2人は?」
「いきなりふってきたぞ」
「『萩の月』食いますかねぇ?」
「あっ、目さましたみたいだよ」

イエローの一撃により、遠くとばされたナンダーナとゴッザールは、
ようやく夢の国
(気絶の国?)からおめざめのようだった。

「大丈夫かい?アンちゃんたち?」
「い、いたたたたた。か、体じゅうが痛いんだな」
「くぅぅ、なんて乱暴な奴でござる」

突然降ってきた2人組は、意識を取り戻すと、それまでの怒りをぶちまけ始めた。

「こ、これだから阪神ファンはいやなんだな」
「やっぱり野球は巨人が一番でござるよ」

その時、ナンダーナとゴッザールを囲む空気が一変する。が、
2人はまったく気づか
ずに話を続ける。

「や、やっぱり巨人が優勝しないと世の中よくならないんだな」
「そうでござるな。くたばれタイガースでござるよ」

周囲の雰囲気がさらに険悪になる。
さすがに何か感じたのか、おちついてまわりを見渡す2人組。
・・・・・・直後、硬直。
彼らの視界には虎ジマのはっぴを着て、黄色と黒のメガホンを持った
「私達どう見て
も100%タイガース命です」という方々しか
いらっしゃらなかったのだ。


「・・・言いたいことは、それだけ?」
「せっかく人が親切に介抱してやったのにねぇ」
「『萩の月』じゃなくて、鉄拳をくらいたいみたいだなあ」
「別に巨人ファンだからってだけでハコにする気はないんやけどな・・」

ナンダーナとゴッザ−ルを囲む輪が次第にちいさくなる。

「「ひっっ!ひいぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃっっっ!!!!!!!」」
「死刑執行書にオノレの舌でサインしたんやし・・」
「今日のゲームの景気づけということで
「埋められるのと沈められるの、どっちがいい?」
「ま、地獄のはてで後悔してくれや」

それが・・・「第1回猛虎会主催たてよこタコ殴り大会」開始の合図だった。
・・合掌。



「あらあら、なにかさわがしいですわねぇ」
「ケンカみたいですよ。今日はもう、かかわりあいたくないですね」
「にゃああああ。ケンカはよくないですぅ」

ならんで歩く3人に、由宇がゲートの近くで手を振っている。

「牧やーん!鈴香はーん!千紗ちぃー!はよせんとはじまってまうでー」
「にゃああ。由宇おねーさん。まってくださぁい」

千紗がぱたぱたと走り出すと、鈴香と南さんは顔を見合わせくすくすと笑いあう。

「いきましょうか、鈴香さん」
「そうですね」

その晩。
東京ドームのまわりでは夜中の12時すぎまで
六甲おろしの大合唱がひびきわたって
いた。

(第13話 完 〜 第14話に続く)

【有志による座談会】
由宇「あ〜つかれた。なんかウチが主役やったはずなのに、
   牧やんばっか目立ってた
ような気がすんなぁ」
玲子「ちゃ〜す。あっ、お茶してる〜まぜてまぜて」
彩「どうぞ・・『くるみゆべし』と薄皮饅頭です」
詠美「ふみゅ?おいしーじゃないコレ。どーしたの?」
由宇「コラ、いっぺんに食うんやない。
   これは、はとりが会社の慰安旅行で福島行っ
た土産やて」
瑞希「それでこのSSが遅くなったって言い訳したいの?」
由宇「いや、これはただ単に口止め料や」
あさひ「く・・口止めって・・・」
由宇「このSSの人には言えへん裏話とか、32話のやばいネタとか・・」
玲子「な〜に?それ〜?すっごく気になる〜。あたし今回出番なかったしぃ」
由宇「それはな・・・って、コラ!詠美!ひとりで全部食いよってからに!」
詠美「も〜おそいもんね〜あ、彩。お茶ありがと」
彩「おいしかった・・ですね」
詠美「土産モノというから、あんま期待してなかったけど、けっこうイケてたわよ」
瑞希「土産モノっていったら今回、仙台銘菓『萩の月』がでてたわね」
あさひ「な・・『南国少年パプワくん』に出てたアレですね」
由宇「さすがは、あさPくわしいな。あんまおいしいんで
   『萩の月』のパクリが日本
各地で出とるけど・・」
瑞希「やっぱ、本家本元が1番おいしいらしいわね」
(中略)
詠美「さてと、お茶菓子もなくなったから、そろそろ、おひらきにするわよ」
由宇「あんた1人で半分以上食ってナニゆうとんねん」
瑞希「はいはい。ちゃんとあいさつしなさい。でないとキラワレちゃうぞ」
由宇「わかっとるがな。場所を提供してくれはったラークさん、おおきに。
   それと、
おめでたおめっとさん。
   資料やSSくれはった、ゴンジーさん、Kターボさん。
   いっ
つもメールありがとな、デロンさん、海皇優さん、
   フェンリルさんにベリファさん。
みんな、おおききに。愛してるで
   さあさあいくで、シュベルツさん。仙台人HKさ
ん。LUCAさん。
   難波秋人さん。合言葉は『ウチを見よ、ウチに続け』今年こそ優
勝や〜〜」
瑞希「なんか、毎年言ってる気がするけど・・
   ここまで読んでくださった皆さん、ほ
んとうにありがとうございました」
玲子「感想や苦情はメールか掲示板にちょうだいね〜
詠美「『次は詠美ちゃんさまを主役にしろ』ってゆうメールを
   1人20通送りつるの
よ!これは、にほんこくみんのギムなんだから!」
全員「「「「「そんな義務はない」」」」」
詠美「ふみゅうううううううん


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