コミレンジャー 第５話 瑞希の挑戦！ 〜後編〜
ファミレスの勝手口から少し離れたところに、２人の男の姿が現れた。
男たちはそれぞれ大きなダンボールを抱えている。
一方の男は、ダンボールがその大きさから感じるほど重くは無いのか、足取りに余裕が見られる。
しかし、余裕がありそうな割には妙に汗をかいていた。
もう一方の男は、おそらく同じ物と思われるダンボールを抱えているのにもかかわらず、
隣を歩く男と比べるとそれほど余裕があるようには見えなかった。
そして、勝手口の前まで辿り着くと、余裕あるほうの男が片手でダンボールを支え、
開いたほうの手で呼び鈴を鳴らす。
ブー。
呼び鈴というよりはブザーというような音が響くと、間を空けることなくドアが開き、
その向こうからメイド服のような制服を着た女の子が顔を出す。
男たちはその女の子の顔を確認するでもなく、決して爽やかとはいえない笑顔を浮かべこう言った。
「お、お待たせしたんだな。これが今日の分のブツなんだな」
「お代はいつものように例の口座に振り込んでおくでござるよ」
「口座ねぇ……そこを調べれば何か面白いことがわかるかもしれないわね？」
「……」
「……」
女の子の声を聞き、顔を見て、男たちは凍りつく。
そして……。
「お、おおお、お主はコミレンジャーのリーダーの女！？ どうしてこんな所にいるでござるかっ！？」
「もちろんアンタたちを待ってたんじゃない」
「ま、待っててどうするつもりなんだな？」
「そうね、とりあえずアンタ達がこのストラップで何をしようとしてたのか
白状してもらうとか、どう？」
腕組みをしてにっこり微笑む女の子。瑞希だ。
もちろん男たちとはナンダーナとゴッザールのことである。
「……」
３人の間に若干の沈黙が訪れる。
そしてナンダーナとゴッザールはイやな汗をかきながら顔を見合わせたかと思うと。
「に、逃げるんだなっ！」
「賛成でござるっ！」
ダンボールを投げ出して逃げ出そうと後ろを向くナンダーナとゴッザール。
しかし振り向いた２人の目の前にビシッとハリセンが突きつけられる。
「おっと、どこに行くんやおふたりさん？ まだウチらの用は済んどらんで？」
２人の行く先を遮るように由宇、詠美、彩、あさひが立ちはだかる。
いや、４人ともすでにバトルスーツを身に纏っているため、
イエロー、グリーン、ブラック、ピンクと呼ぶ方が正しいかもしれない。
「お、お主らいつの間に！？」
「ば〜か、あんたたちが固まってるあいだに決まってんじゃない！」
「悪い事言いませんから、おとなしく縛についたほうがいいです……」
「わ、私もそう思います」
「み、見くびらないでほしいんだな！このナンダーナとゴッザール、か、簡単には諦めないんだなっ！」
威勢のいいセリフを言い放ったナンダーナ。
しかし世の中、威勢がいいだけではどうにもならないこともある。
「ほぉ〜、そうかぁ、直接体に教えてやらんとわからんようやなぁ……？」
突き出していたハリセンを上段の構えの位置へと持っていき、それに左手を加え両手持ちに移行する。
これで威力は倍率ドン！ さらに倍！ である。
そしてナンダーナとゴッザールの後ろでは、隙を突いてバトルスーツを身に纏ったレッドが
釘バットモードにしたミズキャーステッキを振りかざしていた。
それを見たゴッザールは、滝のような油汗をかきながら、一言。
「お、お手柔らかにお願いするでござるよ……」
この後ナンダーナとゴッザールがどうなったかは言うまでもないだろう。
合掌。
「ここね……？」
コミレンジャーの５人は、ナンダーナとゴッザールの説明の元、小さな工場の前へと辿り着いた。
いや、工場（こうじょう）というよりは工場（こうば）と言ったほうがしっくりくるかもしれない。
窓は全て硬く閉ざされており、外からは中の様子を窺うことはできないようだ。
「ほらほら、ここかどうかきいてるんだから答えなさいよう！」
「こ……ここでござる……」
「……なんだな……」
詠美にせかされて、心身ともにボロボロなナンダーナとゴッザールが答えた。
哀れ２人とも、散々ボコられた末にロープでぐるぐる巻きにされていたりする。
正義の味方の取る行動としては、少々人道的にマズイ気がしないでもないが……。
「さて、どうやって中に入ろうか？」
「う〜ん、ここはハデにどーんと壁でもぶち壊して入るっちゅうのはどうや？」
「いえ、あまり油断しないほうがいいと思います……」
とかなんとか話し合いが進められている、その最中。
ピンポーン♪
と、呼び鈴を押したと思われる音が鳴り響いた。
何事かと慌ててイエローが、おそらく呼び鈴があるであろう、工場の玄関先のほうを見る。
するとそこには『どどど、どうしましょう！？』といった感情を体で表現しようとしているかのように
あわあわしてるピンクと、彼女に呼び鈴を押すよう指示したと思われるグリーンの姿があった。
「……って、そこ！ 人がいろいろ考えてんのに、なにしとんねんっ！？」
「ふぇっ！？」
「うっさいわね、せーせーどーどーと正面からはいればいいじゃない！」
ビクッとするピンクと、何故か無意味に胸を張るグリーン。
そのグリーンに向かってイエローは歩み寄ると、スパーンとハリセンで軽くどついて。
「アホかっ！ だったら一言ウチらに言ってからやらんかい！」
「ふみゅうっ！？ な、なにようパンダのクセにパンダのクセにぃ〜！」
いつものケンカモードに突入するイエローとグリーン。
特に止めようとはしないレッドとブラック。
呼び鈴の前でその光景を眺めてるピンク。
彼女たちはあることを忘れていた。いや、忘れていたというより、頭から抜け落ちていたというか。
そう、呼び鈴を鳴らすと普通どうなるかを……。
「は〜い、どちら様〜？」
がちゃりとドアが開き、露出度の高い格好をした女の子が現れた。
ショートカットで、紅いコスチュームに身を包んでいる。クリスタルグリッターズ、紅きミーホだ。
ただ、今はエプロンと三角巾をしている為か、なんだか威圧感のかけらも感じられない。
その証拠に、ドアのそばに立っていたため彼女と最初に目が合ってしまったピンクにも……。
「……ど、ども♪」
とか言って微笑まれる始末。
幹部の威厳丸つぶれ。
「ぬあっ！？ コ、コミレンジャー！？ なんであんた達がここにぃっ！？」
ワンテンポ遅れて驚くミーホ。ハラジロシスターズ関係者、驚きすぎ。
「ちぃっ！ こうなったらしゃあない、全員正面から突入や！」
「了解！」
「了解……」
イエローの言葉を合図に、一気にドアを駆け抜け中に入る５人。
エプロン姿のミーホはそっちのけで。
「うわ、あんた達いきなり……って、こら、ちょっと待ちなさいよ〜！」
幹部、立場無し。
ドアを駆け抜けた５人を待っていたのは、ストラップ製作の作業場だった。
大勢のオ･ターク達が黙々と作業にいそしんでいる。
どうやらあのストラップはオ･ターク達の手作業によって作られたものらしい。
その技術をちゃんとした仕事に生かせば……と思えなくもないが、何分オ･タークだから仕方がない。
「？ あれ、何してるんだろ？」
レッドの視線の先では、何やら角張った形…携帯電話に手足をつけたような形をしたコア･オ･タークと、
クリスタルグリッターズの残りの２人、白きマーユと翠のユーカが特別な作業を行っているようだった。
「さあ、Ｋ−タインよ、始めなちゃいなさーい！」
「デンパー！」
マーユの掛け声に応じて、コア･オ･タークはストラップの入ったダンボールに向けて手をかざす。
そしてその手が光ったかと思うと、『何か』がダンボールに向けて発せられた。
「……ど、どうやらああすることで、ストラップに何か力を注入しているようです」
あさひがスキャニンググラスで解析した結果を報告する。
「それだけでなくて、えと、おそらく皆さんから集めたコミックパワーを、その……
お、おしりのあたりに蓄えてるみたいです」
おしりのあたり。
形が携帯電話なので、おしりというと大体バッテリーの場所だと思われる。
「なるほどね。ということは、あのコア･オ･タークを倒せば、皆元通りになるかも……」
ドバァンッ！!
「ちょっとあんた達、ドアに鍵かけることないでしょおっ！？おかげで入るのに苦労したじゃないっ！」
その時、大きな音と共にドアが破られ、同時にミーホの大声が響いた。
「なんや、あんたか。遅かったやないの」
「ムッキー！ むかつくーっ！」
その大声に作業中のオ･タークやユーカ、マーユも何事かとドアの方を見る。
「あら、ミーホ、大きな声出してどうしたんですか？ ……って、コミレンジャー！ いつの間に！？」
「え？ コミレンジャー？ ……わあっ、ホントだ〜！ 何でこんなことにいるの〜っ！？」
「……似たようなセリフをこう何度も聞くと、さすがに新鮮味がないですね……」
「そ、そですね……」
このあたりの単純さがハラジロシスターズらしいといえばらしいかも。
ミーホはマーユ、ユーカ、そしてＫ−タインと呼ばれたコア･オ･タークと合流した。
「ええと、何か調子狂っちゃったけど、とにかく仕切りなおしよ」
「そうですわ、ここからが本番です！」
「……まだ何もしてないけどね」
「マーユうるさい。それじゃ、いくわよ……コホン。
ふははははっ！ 流石は我らが宿敵コミレンジャー！ よくここがわかったわねっ！？」
腕組みして、テンションを上げるためにも高笑いするミーホ。エプロンと三角巾は取っている。
しかし対するコミレンジャーのテンションはまだそれほど高くなく。
「まあね、こっちには道案内がいたから」
そう言ってレッドは破られたドアの方を指差す。
するとそこには、ぐるぐる巻きでボロボロなナンダーナとゴッザールが顔を出していた。
「す、すまないんだな……」
「無念でござる……」
「あーっ、あんたらのせいだったのっ！？ またドジ踏んだんでしょ！？」
「帰ったらタングス天王様に報告ですわね」
「きっとお仕置き部屋行きだよ〜」
「……！？」
「そ、それだけはカンベンするでござるっ！」
お仕置き部屋という単語に過剰反応するナンダーナとゴッザール。
おそらく世にも恐ろしいお仕置きが待っているのであろう。
「ま、それは置いといて……いろいろとコケにしてくれた御礼させてもらうわ！ オ･ターク達よ！」
「ウィーッ！！」
大勢のオ･タークたちがコミレンジャーを取り囲む。
「さぁて、ようやっと暴れられるみたいやな……」
「ま、このていどあたしたちにとっては準備運動みたいなもんだけどね〜」
イエローとグリーンは数的不利な状況をなんとも思わないかのようなセリフを発する。
「ふん、その減らず口、今すぐふさいでやるわ！さあ、コミレンジャーをぼっこぼこにしちゃいなさい！」
「ウィーッ！！」
周囲を囲っていたオ･ターク達が、一斉にコミレンジャーに襲い掛かった！
……数分後。
「まぁ、こんなところかしらね？」
ほこりを掃うようにレッドはパンパンと手を打ち合わせる。
「ふふ〜ん、だから言ったでしょお？ 準備運動だって！」
「せやな、それについてはウチも同意見や。さて、体もあったまったとこやし……」
そう言ってチラリとクリスタルグリッターズのほうを見やるイエロー。
「これからが本番てとこか？」
「……ああっ！？ なんかバッサリ省略されてるしっ！？」
「あんまりにあんまりだよ〜」
「もう少しオ･ターク達にも丁寧な扱いをするよう要求しますわ」
いや、オ･タークさん達のことは好きなんだけどね。
「むうぅ〜、こうなったら……Ｋ−タイン！ お前の出番よっ！」
「デンパー！」
クリスタルグリッターズの後ろから、Ｋ−タインが両腕を突き上げ、雄叫びと共に歩み出た。
突き上げた両腕をコミレンジャーに向けると同時に肩（と思われる部分）のアンテナが伸びる。
「デンパーッ！！」
再び雄叫びを上げたかと思うと、その両腕から見えない『何か』が発せられた！
「きゃあああっ！？」
「ぐぅっ！？ な、なんや急にっ！？」
頭を抑え、膝をつくコミレンジャーの５人。
「いたたたたっ！ な、なんなのよこれ〜！？」
「――ッ！？ こ、これは一体……」
「うぅ……今、スキャニングします……わ、わかりました！ あのコア･オ･タークの両手から
得体の知れない電波のようなものが……あ、あれ？ 画面が……あれれ？」
それまで様々な情報を映し出していたピンクのスキャニングバイザーが、突如機能しなくなった。
「あははーっ、Ｋータインの電波攻撃を受けると
電子制御されてるものはみんなパーになっちゃうのよ！」
ミーホは両手を腰に当て、自分の力によるものでもないのに何故か得意げに笑う。
「もしかしたらさ、変身も解けちゃうかもよ〜？」
「まあ、マーユったらえっちですねえ♪」
「あ、あほ……別に裸には……な、ならんで」
頭だけでなく全身にまで痛みが回る中で、イエローは意地のツッコミを見せる。
だがその行為が返って攻撃を強めることになってしまった。
「ほほ〜、まだ余裕があるみたいだねぇ？ それじゃＫ−タインよ、パワーアップいっちゃいなさい！」
「デンパーッ！！」
Ｋ−タインの両腕に更なる力が込められる！
「あたたたっ！！ こらぁ、いいかげんにしときぃ……」
「いったーっ！ あ、あんたが余計なこと……いたっ！ 言うからでしょーが、バカパンダぁっ！」
「な、なんやて、この……くぅーっ！！」
こんな状況でも喧嘩しようとする根性は凄いものがある。
しかし、そろそろシャレでは済まなくなってきた。
変身装置でもあるコミレンブレスから僅かながら煙が出始めたのだ。
「ちょ、ちょっと、これってマズいんじゃ……？」
「そうかも……しれません……」
「一体どうしたら…… ！！ そうか、もしかしたら！ みんな、ちょっと……」
何かを思いついたレッドは、皆を呼び寄せ耳打ちする。
「よっしゃ、イチかバチかそいつで行ってみよか！」
「よ〜し、あたしの力をみせてあげるんだから〜！」
イエローとグリーンが痛みをこらえ立ち上がる。レッド、ブラック、ピンクも後に続く。
そしてイエローはキッとＫ−タインを睨みつけると、一気に駆け出した！
「攻撃こそ最大の防御や！ いくでぇ〜っ！ 猛虎応炎弾っ！！」
右腕を振り上げてコミックパワーを集中させるイエロー。
その腕を前に投げ出すかのように思い切り突き出すことで、猛き炎の塊となったコミックパワーが
掌から湧き上がり、Ｋ−タインへと襲いかかる！
「でぇやぁぁぁぁっ！！」
ゴオオォォォォォォォッ！！
「ふん、無駄無駄！ Ｋ−タインよ、妨害電波よ！」
「デンパーッ！」
コミレンジャーに向けていた両腕を飛来する炎の塊に向け直し、力を込める。
すると僅かに空間が歪んだように見えたかと思うと、Ｋ−タインに向かっていた炎の塊の軌道が逸れ、
Ｋ−タインの体を掠めるようにしてその後方に着弾した。
「くっ！ あかんかっ！？」
「甘いですわコミレンジャー！ Ｋ−タインの妨害電波の前ではどんな攻撃も無力です！」
「……では、これならどうですか？」
「えっ！？」
「――シャドウ・ストライク」
Ｋ−タインの死角へと高速で移動したブラックが、その脇腹に鋭い手裏ペンを突き立てる！
ドシュッ！！
「デ、デンパッ！？」
苦痛に顔を歪めるＫ−タイン。
しかし先程の毒電波でダメージを受けていたためか、決定的なダメージは与えられなかった。
「デンパーッ！」
ブラックの攻撃に逆上したのか、両腕を振り上げ、その腕をブラックに向けて力任せに振り下ろす！
「――ッ！！」
「させませんっ！ ヴォイス・レインボーッ！！」
ピンクの七色の声が光に変換される。
そしてその光が虹のような束になり、Ｋ−タインへ一直線に突き進む！
「デ、デンパ――ッ！？」
ズドォォムッ！！
振り下ろす腕がブラックに当たる直前で光の束がＫ−タインを吹っ飛ばす！
「ありがとうございます……助かりました」
「い、いえ……私、その、夢中で……」
「ああっ！ ちょっと大丈夫なのＫ−タイン？」
「デ……デ……デンパーッ！」
床に転がっていたＫ−タインだが、まだまだこれからと言わんばかりに起き上がろうとする。
だがその隙を逃さずグリーンが攻撃をたたみ掛ける。
「おとなしくねっころがってなさいよね！ コピボン大増殺―っ！！」
Ｋ−タインの頭上の空間に歪みが発生し、瞬く間に無数のコピー本が召喚される。
「いっけぇぇぇっ！！」
ドガガガガガーーッ！
グリーンの腕を振り下ろすポーズを合図に、それらが弾幕のように一気に襲いかかる！
「な、なによ！ そんなコピー本なんて、オ･タークには通じてもコア･オ･タークには通じないわ！」
「デンパーッ」
ミーホのあせりと強気が入り混じった叫びが聞こえたのか、コピー本に埋れていたＫ−タインが
今だ降りそそぎ続けるコピー本を弾き飛ばしながら勢い良く立ち上がる。
だがそれを見てもグリーンは余裕の表情で。
「ふふ〜ん、それはどうかしら〜♪」
「――そういうこと！」
「なっ……」
Ｋ−タインに降りそそぐコピー本に紛れて飛来する影。
そう、ソードモードに変化させたミズキャーステッキを構えたレッドだ。
落下の勢いを載せて鋭い斬撃を繰り出す！
狙うはただ一点！
「てぇぇぇぇぇいっ！！」
「――Ｋ−タイン、アンテナを戻しなさい！」
「え……！？」
ヒュンッ！
レッドの繰り出した斬撃はあとわずかのところで空を切り、Ｋ−タインを飛び越す形となって着地した。
「おしかったですねぇ♪」
「そんな……何故あたしの狙いがわかったの！？」
信じられないといった表情でユーカを見やる。
「そうですねぇ、弱点としては一番目をつけやすい部分ですから、こちらも読みやすかったのですよ。
連続攻撃で注意を引きつけるところまではよかったのですけど、後一歩でしたわね☆」
「すっご−い！ さすがはユーカ！ ボク全然わかんなかったよ！」
「ま、あたしは気づいてたけどね」
「……」
「な、なによ、その疑うような視線は……」
もう勝った気でいるのか、余裕を見せるクリスタルグリッターズ。
一方、がっくりと膝をついたレッドは。
「……なんてね♪」
「へ？」
「残念だったわね！ あたしの本当の狙いは、これよっ！！」
Ｋ−タインの背後にあるバッテリーのストッパーに手をかける！
そしてストッパーを外し、バッテリーを引き剥がす！
「デ、デンパーッ！？」
突然バッテリーを失ったショックか、暴れようとするＫ−タイン。
「デン……パ……」
だがエネルギーの供給源を絶たれた為か、その動きは徐々に停止しようとしていた。
「今やっ！ みんな、行くでっ！」
「ＯＫ！！ それじゃ準備はいい！？ ハートフルブラスター召喚！」
コミレンジャー５人がそれぞれのコミレングリップを構える。
するとコミレングリップが光り輝き、５人の前にハートフルブラスターが現れた。
「これで最後よ！ ハートフルブラスター・シュ――――トッ！！！」
ズギュウウゥゥゥゥンッ！！
光の奔流がＫ−タインを飲み込む！
「デン……パ―――ッ……！！」
シュウゥゥゥ……。
光が収まる頃には、Ｋ−タインの姿は見えなかった。
後に残ったのは、断末魔の叫びと、床に転がる一つの携帯電話だけだった……。
「う、嘘……」
「なんで……」
「こうなるの〜っ！？」
そろって目が点になっているミーホ、ユーカ、マーユ。
掌を返したような戦況の変化を認めたくないようだ。
「ま、これが実力の差ってやつよ。わかったかしら〜♪」
「全くやな。身の程を知れっちゅうもんや♪」
こちらもまた掌返したように喜ぶグリーンとイエロー。
「チームワークの勝利です……」
「そうですね♪」
「あたしたち５人が一つになれば、どんな敵にも負けないってね♪」
続いてブラック、ピンク、レッドも喜びをあらわにする。
「さて、と……ところであなたたち、まだやるつもり？」
クリスタルグリッターズの３人に問い掛けるレッド。
「あ、あったりまえでしょおっ！？ まだあたしたちには切り札が残ってるんだから！」
「そ、そうでしたわ！ 危うく忘れるところでした！」
「ボクはすっかり忘れてたよ〜」
「と言うわけで、ナンダーナ、ゴッザール、桃色毒電波よ！あいつらに目に物見せてやるんだからっ！」
「……」
ミーホのセリフに答えるべき男達、ナンダーナとゴッザールからの返事は帰ってこなかった。
「あれ？ ナンダーナ？ ゴッザール？」
「ああ、あいつらならホラ、あそこや。ザコども片付けるときについでにトドメさしといたんや」
グリーンが親指を立て、自分の後方を見向きもせず指し示す。
その先には、ぐるぐるボロボロに加え、頭上にひよこがクルクル回ってそうな状態で床に転がっている
ナンダーナとゴッザールの姿があった。
「あ、あらら〜？」
「ダメだコリャ……」
「え〜と……」
互いに顔を見合わせたクリスタルグリッターズの３人は、そろってコクンとうなずくと。
「じゃ、そういうことで！」
シュタッと挨拶するように手を上げたかと思うと、その場から猛ダッシュで逃げていった。
「あ、コラ！ 待ちなさ〜い！」
一瞬遅れてレッドが声を上げるが時すでに遅し。
「ふ〜んだ！ 待てと言われて待つわけないよぉ〜だ！」
「覚えてろ〜、ですわ！」
「次に会った時があんた達の最後なんだから〜！」
ベタなセリフを残して走り去るクリスタルグリッターズ。
その姿はあっという間に見えなくなってしまった。
「まったくもう……」
「ま、ええやないの。事件は解決したんやし♪」
「そーそー！ あたしがちょっと本気だせばこんな事件ちょちょいのちょいよ！」
レッドの肩をポンと叩くイエロー。
その横ではグリーンが鼻タカダカ〜な様子で胸を張っていた。
「ピンクさん、集められたコミックパワーはどうなりました……？」
「ええと……だ、大丈夫です。この空間にコミックパワーは残っていません♪」
「そう……ちゃんとみんなの元に戻ってるといいね」
ピンクの報告を聞き、ほっと胸をなでおろすレッド。
そしてみんなの方を見て。
「それじゃ、帰ろうか！ みんなの待ってる、コミックＺに！」
「お〜っ！！」
【エピローグへつづく】