同人戦隊コミレンジャー 〜 強襲！ タングス天王 〜
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「意外やったわ・・・まさか影にあんさんが居ったなんてな・・・」
「それに・・・いつものコンビがいない・・・貴方は・・・本気で私達を・・・
潰しに来たんですね・・・・・・」
「ふ・・・」
イエローとブラックの言葉に、タングス天王は、浮かべていた笑みをさらに強める。
そして、彼女らのほうへ向け、ゆっくりと歩き出した。
「来るなら来なさい！」
「あたし達と勝負しようなんて、ちょ〜生意気！」
レッドとグリーンが、すかさずラケットとスケブーメランを構えるが、
タングス天王はそれを意に介さぬように２人の間を通り過ぎる。
結局、彼が立ち止まった所は、コミレンジャー達が先程倒した
指揮官クラスの戦闘員の側だった。
「あれだけコミックパワーを使って知能と作戦を与えてもこの程度か・・・
“メダカを龍にしよう”とか“クズ鉄を金に変えよう”などという考えが
甘すぎたな・・・フン・・・所詮、メダカはメダカ、クズ鉄はクズ鉄か・・・」
自らの考えを、浅はかだったと鼻で笑い、
タングス天王は、その戦闘員達に手をかざす。
「俺のコミックパワー・・・返してもらうぞ・・・クズめ！」
彼等の体から淡い光が立ち上り、
それがタングス天王の手に吸い込まれるように消える。
吸い込まれる光がなくなったとき、３人の戦闘員がいた筈の場所には、出来損
ないと言っても違和感の無いフィギュアが三つ落ちていた。
「待たせたな、コミレンジャー諸君・・・始めようか・・・」
振り返りながら、タングス天王はすっと腰の剣に手をかける。
だが、その瞬間、彼の視界は紅に覆われた。
「先手必勝！ 後ろ向いとるあんたが悪いんや！！」
勝ち誇ったようにイエローが叫ぶ
「ちいぃぃぃ！！！」
ドォォォォォォォン・・・・・・
タングス天王に避ける暇を与えることなく、巨大な火球が炸裂した。
「アーッハッハッハ！ ハラジロのナンバー２も、
大層なことを言うとった割には意外とあっけなかったなぁ！」
爆風がまだ収まらぬ中で、高々と笑うイエロー。
「・・・・・・最悪・・・」
レッドは呆れたように額に手を当て、かぶりを振る。
「何が最悪やレッド、“後ろ向いとったら殺る”のは普通やで？」
「そうは言っても相手は幹部なんだし、もうちょっと引っ張ったって・・・」
「何でいちいち客のニーズに応えなあかんのや！
王道守るばかりが人生や無いで。
変身中にぼてくるような戦隊もんがあってもええやろ。」
「ねぇ・・・それって、何か違わない？」
「違わへん、違わへん。勝ったもんが正義、それでええんや☆」
腕を組んで満足そうに頷きながら、イエローは、話を勝手に自己完結させた。
「・・・あ・・・頭痛い・・・」
「む、むりですよ、レッドさん。あ、あの、ああなったイエローさんは、
その、今までも止められなかったじゃないですか・・・」
「とにかく・・・終わったという事で・・・良しとしましょう？」
「そうそう、勝手にいいトコ取りされたってのは納得いかないけど、
『働かなくて良かった、らっき〜』って思ってればいいのよ。」
少々沈み気味のレッドの背中を、グリーンがポンポンと叩いた。
それで少しは慰められたのか、レッドはようやく立ち上がる。
が、しかし、彼女達の後ろで、緩やかに空気が動いた・・・
無論、まだ終わってはいなかったのだ。
『勝った者が正義・・・か・・・なかなか良い言葉だ・・・』
「なッ・・・！！」
イエローを初めとし、コミレンジャー達は次々と後ろを振り返った。
ドンッという強い衝撃波と共に、立ち込めていた土煙が一気に霧散する。
黒く焼け焦げた大地・・・その中心にタングス天王は立っていた。
カスリ傷一つ負うことなく・・・・・・
「さすがに、今の不意打ちには驚いたな・・・」
「そんな・・・そんなアホなことがあるか！ うちの炎は直撃だった筈や！」
「たしかにそうさ・・・しかも威力、重さ、精度も見事だったよ。嬉しいね、
これだけの力を付けていたなんて。」
タングス天王は涼しげに、そう言ってのけた。
「なら・・・何故・・・」
５人の顔には、明らかに動揺が広がる。
「タネあかしをしようか。」
彼女達の心中を感じ取ったか、タングス天王は余裕の表情で左手を開く。
そこにあったのは何かの欠片。
それはみるみると光に姿を変え、彼の掌に吸い込まれる。
「取っ手・・・？ 持っていたのは・・・コミックパワーで作った盾？」
「正解だよ、コミパブラック。」
ブラックの呟きに反応し、タングス天王は口端を歪めた。
「あの一瞬で、俺は盾を描き上げた。」
「有り得ません！ あ、あんな一瞬で物を実体化できるような
コミックパワーの持ち主なんている訳が・・・」
「残念ながら、いるんだよ・・・ここに・・・この俺がね。」
全身に絡み付いたマントを大きく払い上げ、タングス天王は自らの左腕に手を当てる。
その手首には、淡く輝く銀色のブレスレット
「今日の戦い振りを見ていて判ったよ。
もはや出し惜しみをする必要など無いことがね。
お前達の力に敬意を表して見せてやる・・・我が全力と、真の姿を！！」
カチッ・・・
乾いた小さな音が響き、主人の腕を滑ったブレスレットは地面を転がった。
刹那・・・！
ゴォォォォォ！！
彼の体から放たれた光は濁流となって辺りを埋め
戒めを解かれた力の波動が全てを飲み込むかのような圧力を生みだす
「このコミックパワー・・・このプレッシャー・・・全部こいつの・・・」
愕然と呟くレッド
５人の見守る中、周囲に満たされていた全ての力が、タングス天王へと集った。
「さぁ！ この姿！ この力！ お前達の瞳に、しかと刻み込むがいい！！
変身！！“修羅場モード”ッッ！！！」
周りを埋め尽くしていた輝きが一点に集中して太陽のように煌き、弾けた。
光のカーテンの中から姿をあらわしたのは、全てを蹂躙する象徴・・・“漆黒”
漆黒の装備に身を包んだタングス天王。
圧倒的なコミックパワーに凍りついた空間の中で、彼は大きく両手を掲げた。
「大いなる神器よ、我が手に来たれ！ 右手にＧペン！！ 左手に絵筆！！」
呼び声に応え、神器が彼の手の内に現れる。
「ふみゅうっ！ 何をする気よ！！」
「先程、出来るわけが無いと言われたこと、それが出来ると証明する。
お前達にコミックパワーの究極型を見せてやるのさ。」
「なっ、何ですって！？」
タングス天王は、ゆっくりと腕を交差する。
「この力を突き詰め、成長させると、瞬時に物を創り出すだけでなく、
仮の生命を生み出す事すらできる！ それが我が真の力・・・
“創造の力”だ！！！」
ヒュン！
一瞬だけ、何かが宙を切る音が響く。
そして彼女達は見た。
いつの間にか両手を広げた格好で立つタングス天王の前に、くすんだ色ではあるが
間違いなく自分達と同じバトルスーツを着込んだ５人の人物を・・・
「何よこれ！ 私達！？」
「・・・・・・気持ち悪い・・・」
「ふふ・・・この娘らは、まず君達自身と思ってもらったらいいよ。そうだな・・・
“コミレンジャー・ナイトメア”とでも名づけておこうか。」
「“悪夢”やて？ またけったいな名前を付けおってからに！」
「フン、俺のコミックパワーをたっぷり使ったヒロイン達を相手に、何処まで
そんな軽口が叩けるかな？ さぁ・・・イッツ・ショータイム・・・・・・」
それを合図とし、５人のナイトメアの足が一斉に動いた。
――――――――――
「いけない！！」
バンッ！！！
コミックＺ指令室に、司令・澤田真紀子の切迫した声が響き渡った。
「先輩！？」
そのただならぬ様子に、彼女の右腕である牧村南が慌てて駆け寄る。
モニターを見つめつづける澤田司令は拳を握り締め、ゆっくり息をはいた。
「南・・・車を出して・・・すぐに秋葉原に行くわ。」
「！・・・先輩まさか！？ 無茶です！！」
「無茶は承知よ・・・でもこのままではあの娘達は負ける！
貴方も知っているでしょう？ あの力に対抗する手段は・・・だから・・・」
「・・・・・・」
しばしの間、無言で床を見つめる南。
だが、すぐさま何かを決心した瞳を自らの先輩へと向けた。
「判りました・・・でも、目的を遂げたらすぐに退いてください！
それが条件です！」
「ええ・・・判っているつもりよ・・・」
「では、車ではなく転移装置のほうを使ってください。そのほうが早いです。
１０分で調整しますから！」
「・・・きっとそこまで持たないわ・・・出来るだけ早く終わらせて！
お願い！！」
「はい、全力で！」
さっと一礼した南が踵を返して指令室を出て行く。
「迂闊だったわ・・・触媒無しで創造の力を行使できる者がいる可能性くらい
考えられた筈なのに・・・私は・・・何を根拠に油断していたというの・・・」
南の背を見送りながら、彼女は歯ぎしりと共にそう呟いていた。
――――――――――
ギュォォォォン！
ナイトメアレッド、ナイトメアイエローが立ち止まり、光球と火弾を撃った。
「ブロック・・・」
ブラックが仲間の前に飛び出てそれを防ぎきる。
そして彼女はすぐに次の行動に移った。
残像を残し、姿を見せたのは技を放った敵の後ろ。
「・・・シャドウ･ストライク・・・」
隙だらけの敵の背中に渾身の一撃を叩き込む。
しかし・・・
ガキッ！
「・・・！！」
その一撃は、いつの間にか目前に現れた敵
・・・ナイトメアブラックのバリアに防がれていた。
だが、彼女は慌てない。
「お願い・・・します・・・」
一言そう言って、後ろ向きにジャンプする。
「了解ブラック！ いっくわよ〜！」
「絵はおとなしく紙の中に戻っとりぃ！！」
「あたしのちょうかれ〜なスケブーメラン、喰らっときなさい！」
そして、間髪をいれずに必殺技の構えに入っていた
レッド、イエロー、グリーンがそれぞれの技を解き放つ。
「捉えましたね・・・」
一番後ろで状況をスキャンしていたピンクがそう言ってのけた。
半ば確信を持って・・・
だが、直撃と思った瞬間、ナイトメアブラックが大きく前に飛び込んで
バリアを張り、ウインディ・スマッシュの光球と猛虎応炎弾の火球を相殺した。
残ったスケブーメランは、その変幻自在な動きをものともせず、
他のナイトメア達が斬って捨てる。
「ちいぃ！ ピンク！」
「ミラクル･ボイス！」
三人の同時攻撃を受け流されたコミレンジャー達は、
次に、ピンクの声で敵の動きを封じる手段に出る。
しかし、それすら読んでいたように、ナイトメアピンクが、
同じく声でミラクル・ボイスを中和した。
「クソッ！ やらしい動きばかりしおってからに！
今日の指揮官の性格がうかがえるで！！」
「少し・・・退いたほうがいいわね・・・」
一度間を取るため、コミレンジャー達は一箇所に集まる。
「・・・タングス天王の言葉・・・どうやら本当みたいですね・・・」
「『自分だと思って間違いない』・・・か。たしかにやりにくいわね
・・・動き方が一緒なんだもん・・・」
「ふ、普通に技を使っても、全て読まれています。ど、どうしましょうか。」
そんな時だった。
今までずっと戦いらしい動きをしていなかったナイトメアグリーンが、
ニヤリと嫌な笑みを浮かべたのは・・・
ゴゴゴゴゴ・・・
「な・・・何！？」
地面から響いてくる音に、５人は後ろを振り返る。
「ふみゅうぅぅぅぅ！！！ う、うそ！ あたしのわざぁ！？」
グリーンの声が示す通り、彼女達の背後には、巨大なコピー本がそびえ立っていた。
「こ・・・こんなの・・・冗談じゃないわよ・・・」
突然の事態を前に、彼女達は足が動かない。
それを嘲笑うかのように、コピー本はゆっくりと倒れ掛かった・・・
――――――――――
「終わったな・・・」
愁いを含んだ声で、タングス天王は呟いた。
「奴等のコミックパワーの回収は・・・戦闘員に任せるか
・・・これ以上・・・俺は・・・」
少し俯き加減で重いため息をつき、彼はそのまま踵を返す。
ズン・・・
背後で重々しい音がした。
タングス天王は足を止め、後ろ髪を引かれたかのようにもう一度、
先程まで見つめていた場所を振り返った。
「！！」
しかし、そこには彼の予想とは違う光景があった。
無事であったコミレンジャーの５人と真っ二つに割られたコピー本、
そして、限りなく蒼い煌き・・・
「ふぅ・・・」
最初のものとは明らかに違うため息を、タングス天王はついた。
僅かに覗く口元から伺える表情は・・・安堵・・・
彼は、すぐにそのことを否定するかのように首を大きく左右に振る。
（・・・俺はこんな時に一体何を考えている！？
俺は・・・今の俺は・・・ハラジロシスターズの最高幹部なんだ
・・・こんな事を思っていては・・・！）
だが、彼はそこで思考を止めざるを得なくなった。
眼前に迫る蒼い光
タングス天王は、抜き放った剣を光めがけて振り下ろした。
ギィン！
金属同士のぶつかる音と共に、蒼い光の正体が明らかになる。
「やはり貴様か・・・」
「にゃはははは〜♪ ピンチになったらやって来る、
良い子の味方コミパダークちゃんと〜じょ〜♪」
「コミパダーク、あまりふざけていると痛い目を見るぞ！」
タングス天王は、続けて真横に剣を薙ぐ。
「お〜っと。」
ガキンッ！
ダークはぶつかった剣の力を受け流し、
その勢いを使って大きく間合いを取った。
「相変わらず流石だな。しかし、余計な世話かもしれないが、
いつものように奴等の手助けをしなくていいのか？」
「にゃはっ♪ もう少し頑張ってもらっておこうと思ってね♪
あたしがキミを押えるまでの間ね。」
「ほぉ・・・それで、どういうつもりだ？」
「ふふ〜ん、知ってるんだ〜、
創造の力で描かれた物は、術者を黙らせちゃったら、
み〜んな消えちゃうって。だ・か・ら♪ 速攻で倒すから覚悟してね♪」
「フフフ、察しの良い事だ。だが、俺は君がくる事もちゃんと予測していてね、
君のためのヒロインも既に描いてあるんだ。しかも特製のをね・・・」
「あ〜っ！ ずるい！」
「遠慮は要らないさ。俺と戦うなんて言わずに、
俺の創造の力を味わってきなよ・・・来い！ インフェルノ！！」
ヴァサッ・・・
大きな羽ばたきの音がする。
そのあまりの風圧に眼を閉じたダークが目を開けると、
真横に伸ばされたタングス天王の左腕には、
黒く巨大な翼を持つ女戦士が座っていた。
「す・・・凄まじい力を感じる・・・それは・・・？」
「俺のオリジナルのイラストに、
俺と、我が総統陛下のコミックパワーを注いで創り上げた
君のためのヒロインさ。」
「カ・・・カリスマンの・・・くっ！！」
「さぁ、待ちくたびれたろう・・・インフェルノ、行っておいで！」
タンッ・・・
言葉に応えて、黒き天使が空を馳せる。
「う〜っ、負けないからっ！」
負けじとダークも身構えた。
ガキンッと言う甲高い音を響かせ、剣同士が何度もぶつかる。
最初の攻防を見る限り、剣技はほぼ互角。
しかし、すぐに優劣が現れ始めた。
カリスマンとタングス天王、
やはり、この２人の力というものは並々ならぬものがあるのだろう。
次第にダークが押され始めていた。
彼女をはるかに上回るスピードで繰り出され始めたインフェルノの剣は、
確実にダークにダメージを与えていく。
「くぅっ！」
ドンッ！
突進してくるインフェルノの体を蹴り、ダークは大きく間合いを広げた。
傍観しているタングス天王は、笑みと共にダークを見やる。
「さっきの勢いはどうした？ コミパダーク。随分と息が上がったなぁ。」
「まだまだだよ。早くキミの相手をしないといけないから。」
「フッ、まだ元気は余っているようだな。だが、余所見は危ないぜ。」
「何を・・・えっ！？」
大きく開けたはずの距離、それをインフェルノは、
ダークがタングス天王に気を取られたほんの僅かな間に詰めていた。
かわし切れない ―――――
そう踏んだダークは防御の姿勢を固めた。
ガッ！
重い音が響き、彼女の体が大きく空に踊る。
インフェルノはさらに、落下地点めがけて一気に移動した。
ダークの眼前に・・・息がかかるくらい近くに、インフェルノが迫る。
その時だった。
完全に圧倒されていた筈のダークの蒼い瞳が、
ギラリと強い光を湛えたのは・・・
「翼があるのに直線的な動きしかしない、それが、
強くても戦いの経験が無いキミの弱点！！！」
地面すれすれでいきなり体を立て直したダークは、即座に地面を蹴った。
右腕が大きく後ろに引かれ、その拳に闇色の炎が宿る。
「一撃必殺だよっ！ ダーク･クリムゾン！！」
地面を蹴った勢い
相手の突っ込んでくる勢い
ダークの繰り出した必殺技は、
吸い込まれていくようにインフェルノの鳩尾を捉えた。
拳で燃え盛っていた炎が即座にインフェルノを包む。
「ふっ・・・オペレーションは完了した。
ここをお前の本当の死に場所とするがいい！ な〜んちゃって♪」
ダークは、ぶいっ☆ と一度決めポーズを取り、
その後、指先をまっすぐタングス天王に向けた。
「さ〜て、今度はキミの番だよ、タングスクン☆」
しかし、当のタングス天王は、浮かべた笑みを収めない。
それどころか、口端の歪みはさらに大きさを増した。
「そんなに笑っちゃって〜。なぁに〜？ あたしがこの娘を倒すなんて予定外？」
「いいや、まだ予定通りさ。何せまだ終わってなどいないのだから・・・」
「タングスクン、言いたいことが判んないぞ。」
「言葉のままさ・・・お前達が俺のヒロイン達を倒すなんて、
たとえ一生かかっても出来はしない！
例え闇の炎で焼かれようとも、俺がこの力を以って創り上げた命は不滅！！」
「にゃははっ、な〜に言ってるの〜？ 絶対に無理なことは言わないの♪
それに、あたしはきちんと倒したぞ☆」
「嘘だと思うのなら、今回、お前が手伝わなかったコミレンジャー達の声に、
よく耳を傾けてみるんだな。」
「えっ！？」
タングス天王の言葉を聞き、
ダークは弾かれたように、５人の戦士達が戦っている場所へと目を向けた。
・・・・・
「いっけぇぇぇぇ！」
ナイトメア達の陣形の隙を狙い、レッドがウインディ・スマッシュを放つ。
その光球は、一度地面にバウンドした瞬間、大きく軌道を変え、
一人僅かに陣形から外れていたナイトメアピンクをまともに捉える。
テニスのツイストサーブを応用した形だ。
「これならどう！？」
しかし期待とは裏腹に、
爆煙の晴れた先には無傷のナイトメアピンクが平然と立っているだけ。
「こ・・・これも駄目なんか！？」
「なぐってもだめ、ぱんだのわざもだめ、なんなのよぉ！」
「・・・ピンクさん・・・相手が・・・防御した形跡は・・・？」
「ま、全くありません！」
「どうして！？ あたし達の性格を・・・
行動を裏の裏まで読んで攻撃を当てているのに、
ダメージを全然与えられないなんて！」
防御をしない敵に対し、掠り傷さえ付けられない。
そんな現実が彼女達をまごつかせ・・・
キィィィィン・・・
お返しとばかりに撃たれたナイトメアピンクの音波に、
５人は一瞬対応が遅れる。
結局、それが命取りとなった。
「しまった！！」
気付いた時にはすでに遅く、音による重圧が体に纏わりつき、動きを封じる。
ナイトメア達は、動けないコミレンジャー達に近寄ると、
見せつけるように緩慢な動作で、それぞれを羽交い絞めにした・・・
・・・・・
「攻撃が・・・通じてない・・・？」
ダークは、それが信じられないかのように、何度も目をこすった。
「・・・ってことは・・・あたしが倒したと思ったあの娘は・・・」
「正解」
タングス天王がそう呟いた途端、ダークの背中に何かがぶつかる。
ほとんど不意打ち的な攻撃に、ダークは地面を転がった。
見上げればそこに、火傷一つ無いインフェルノが立っている
そして、その横にはタングス天王・・・
「これで判っただろう・・・？ 俺の言葉の意味が・・・」
「何故・・・どうして・・・」
「我が創造の力は、お前が知るであろう
過去の暗黒サークルが使用していたもの、
あるいは我が総統陛下の使う“創造の力”とは根本が異なる
・・・とだけ言っておこうか。」
「根本が・・・違う・・・！？」
「最期に教えてやろう・・・
俺の創造の力で創られし物に対抗する手段はこの世で二つ・・・
一つは俺と同質の力で創った物をぶつけること。もう一つは・・・
ふっ・・・やはり止めだ。万に一つも出来ぬ事を教えてもしょうがない・・・」
結局、言いかけたことを途中で止め、タングス天王はスッとダークを指差した。
インフェルノが頷き、ダークを羽交い絞めにする。
「さて、次こそ真の終わりだ、コミレンジャー、そしてコミパダーク・・・
お前達のコミックパワーは、我がハラジロシスターズが有効に使わせてもらう！」
最後の命令を下すため、タングス天王は、大きく腕を振り上げ・・・
『貴方の創造の力を破るもう一つの手段・・・貴方が説明する気が無いのなら
・・・私が実践で示してあげましょう・・・』
「何ッ！！」
突如として響いた声
タングス天王は、手を振り上げた格好のまま、そちらを向いた。
その彼に両目に映ったのは・・・光
何者をも飲み込んでしまいそうな印象を与える眩い光
「ま・・・さか・・・」
タングス天王の呟きが終わるか終わらないか・・・
そんな速さで、光は辺りを一閃した。
「ぐ・・・」
ガクン・・・
タングス天王が膝をつく。
そして、パキン・・・と高い音を立てて、
彼の左腕部分を覆っていた漆黒の装甲が崩れた。
彼は、周りを見渡した。
隣にはボロボロのインフェルノが居り、ナイトメア達の姿は既に無い。
逆に、コミレンジャー達や、周囲の建物は無傷であった。
「・・・・・・これが・・・これが“幻光拳”・・・その最強に位置する“没”の型
・・・く・・・ははははは！ 思いもしませんでしたよ！
まさかこんな所で貴方と会えるなんて！！」
光が放たれたほうを見つめ、タングス天王は高らかに笑った。
だが、彼の出す雰囲気は、全く笑ってなどいない。
「幻光拳・・・その破壊力が絶大であるだけでなく、
コミックパワーを基本に作られた物は全て無に還すことができる技・・・
標的のみを射抜く技・・・伝説の中だけに存在する極技・・・そして・・・」
彼は獣のような眼光を飛ばす。
その視線の先には、ひとりのシルエット。
「こうしてお会いできるなんて光栄ですよ・・・幻光拳をあやつる唯一の人、
過去、無数に存在した暗黒サークルを壊滅させた一番の功労者たる女性
・・・コミックＺ司令・澤田真紀子殿！
いや・・・伝説の戦士“コミパゼット”よ！！！」
「・・・そこまで知っているのね
・・・もしかしたら貴方は、私が『久し振りね』なんて言っても
差し支えの無い人物なのかしら？ タングス天王・・・」
自らの名を叫ばれた女性は、肩で大きく息をしながらも、
真っ向からタングス天王の鋭い視線を受け止めていた。
―後編に続く― ＨＯＭＥ