「ねえねえ？アンタ、今年は誰にあげるの？」
「えへへ〜♪実はさぁ…！」
「え？うんうん…キャ〜♪」

　今日は待ちのそこかしこで、いつもと違う空気を発散させている。
　それは…そう。
　言わずと知れたイベント「バレンタイン・デー」の真っ最中であった。
　そしてそれは、彼女達も例外ではなかった。

「……………」
「はあっ…」
「ぅぅぅぅぅぅぅうう〜〜」

　いや、例外だったのかもしれない。

「！？…ねえ、みんな？ちょっとどうしちゃったワケ？！」

　今日もいつも通り、コミックＺにやって来た瑞希。
　…が、本部に到着するなり、いつもと違う様子に目をキョトンとさせていた。

「…あ……高瀬…さん。…おはよう…ございます。」
「え？ど、どうしたのって…ああああの、その、別にバレンタインが、ぁああの…」
「そ、そうよ！この『コミレンジャーのエース』・詠美ちゃん様が何で貢物なんか…！」
「ちょっと…わ、わたしは何も言ってないわよ！？」

　いつもより反応がおかしい。
　全員（一部を除く）、バレンタインの影響の所為だろう。

「そ、そうですね…その、高瀬さんは別にそんな事…あああゴ、ゴメンナサィ…」
「…って、謝んなくってもいーわよぉ（汗）………ん？」

　くいっくいっ

「どうしたの？長谷部さん。」
「チョコ…です。…食べてください…」
「ちょっとねぇ？（苦笑）…そういうものは、然るべき相手に手渡すものであって…」
「そーよそーよ！何でこの詠美ちゃん様に…
『手作りで愛情たっぷりのチョコです！食べて下さい、お願いします！』
　…の一言ぐらい言えないわけえ〜！？以前は「差し入れ」とか貰ってたのにぃ〜！
　ちょおちょおちょっ〜〜おムカツクぅ！」

　この基地に来て、この仲間達と共に戦ってから数ヶ月。
　しかし今だ慣れた気がしないのは、皆こういった個性を持っているからだろう。
　少しこめかみの辺りが引き攣るような感覚を覚えた。
　と…。

　くいっくいっ

「それでは…アレはいいの…でしょうか…？」
「え？アレ？？……ええ！？」

　彩に促されるまま、瑞希はそちらを見やる。
　信じられない光景を。

「いやぁ〜長官。相変わらず『女の子達』にモテモテですね！」
「あら、そういう鈴香さんだって。その両手に抱えているものは何？」
「ハハッなに言ってるんですか。長官は両手でも持ちきれないから
　毎年『イヌ』で送ってるって話し、ここじゃ有名ですよ？」
「もぅ、自慢になんないわよ。でもどうしましょう。…今年は『トリ』で送ろうかしら？」
　・
　・
「…アレは…いい…のでしょうか？」
「はいはいぃ！ゴメンねぇ〜長谷部さぁん！」
「ああああの…高瀬さんも…謝ってますねぇ？あ…わ、私と、いい一緒ですねぇ？」
　そして後ろでは…

「むっかぁ〜！なんでパンダまで貰ってるわけ〜！？笹でも食べるべきなのよ〜！！」
「はいはい…と。負け犬の遠吠えはカッコワルイで？モテない詠美ちゃん♪」
「『怒（Ｐｉ♪）』むかつくむかつくちょおむかつくぅ〜！温泉子パンダのくせにぃ〜！！」

　戦いが無ければ、実に賑やかである。
　そう、彼女達に、特別な日など無い。
　強いて言うなら、毎日が特別なのだ。
　無論、今日も例外ではなかった。

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―――ここは『シメキリ・オトス城』

「ふむ。この騒ぎの原因はバレンタインと言う日なのだな？ミーホよ…」
「はっ！あの二人に調べさせて参りました、タングス天王。」

　不気味なモヤが重く垂れこめた城内の一室。
　王座から続く、赤い絨毯の上で悠然と立つ男と、かしずく女がいた。
　男の名は『運命のタングス』。
　タングス天王と呼ばれて久しくなる。
　もう一方、女の名は『クリスタル・グリッダーズ』のミーホ。
　今回の作戦を打ち立てたのも、この女性だ。

「なるほど、それを巧みに利用すると言うわけか。…抜かりは無いな？」
「はい。必ずや御期待に添いましょう、タングス天王。」
「ふむ。…いかがで御座いましょう、カリスマン大帝陛下。」

　そういうと、タングスは玉座を仰いだ。
　だが、玉座の前に一枚の薄い生地があり、シルエットが見えるのみとなっている。
　そのシルエットは静かに動き、言葉少なに語り始めた。

「クックック…。なかなか、楽しめそうな作戦では無いか。
　良かろう、貴様に任せるぞ。同志ミーホよ…」

　決して低くは無い、だが、強い意思のともった男の声である。
　その声に一喝されれば、いかな選りすぐりのミーホといえど失神してしまうだろう。

「ははぁ〜〜〜！必ずや、コミレンジャー達を葬って御覧にいれます！
　…出撃せよ！コア・オ・ターク『カカオンガー』よ！！」

　ミーホは声高らかに、一際影の強い後方へとその名を叫ぶ。
　すると…その名のものは、不気味な咆哮を上げ、姿を現した。

「カカオンガァァァァァ〜〜〜〜〜！！＜＜コア・オ・ターク『カカオンガー』＞＞」
「フフフフ…いいぞ！ミーホよ！さあ行け、カカオンガー！
　奴等に目にものを見せてやるがいい！カリスマン大帝に勝利を！」

　(うふふふ。私達『クリスタル・グリッターズ』は、
　大帝陛下と天王が永遠に愛し合う事を望んでいますが故。
　その望みの為とあらば、あらゆる限りを尽くしましょう…)

　これから、彼らの手によって恐怖の時間が始まるだろう。
　コミレンジャーたちに迫る強敵。
　彼女達は、その恐怖を打ち消す事は出来るのか。

＜前編終了＞

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コメント：
いやぁ〜！戦隊モノはやっぱいいねえ！
あ…っと。
ここで紹介した『コア・オ・ターク』とは、怪人化した『オ・ターク戦闘員』です。
こうなる為には、体内に『マニア結晶体』を埋め込む必要があります。

…さて、どうして『マニア結晶体』なのか？
「サガ・フロンティア２」をプレイされた方には、判りそうだと思います。
紛らわしい単語が出て来たものですから（笑）

では、後編に期待して下さい♪