=シーン3.5 和樹のマンション前近く=

・・・・タッタッタッ・・・・・・・

 と 小走りで 和樹の家にむかっているのは 先ほど別れたはずの高瀬瑞希
 その手には 和樹に渡すつもりだった 夕食用の弁当がぶら下がっている。

瑞希「いけないいけない わたしってば・・・和樹 まだ 起きてるといいんだけど」

 などと 呟きつつ 小走りで走る彼女。和樹の住むマンションの前に到着した。

 ドガシャアアアーーーーン!!!

 だが 次に瑞希の眼に写った背景は激しい轟音、そして粉々になったガラスの破片と、
 窓から 落ちていく千堂和樹の姿だった。


瑞希「あ、あぶないっ!」

 ガシッ!

 だが、和樹が地面と衝突するよりも早く、彼女は 和樹を空中で受け止め 見事に着地に成功する。
 こうした身のこなしは 流石 コミレンジャーと言ったところか。

瑞希「ちょっと 一体 どうしたのよ?和樹」

和樹「・・・・・・・・・」
瑞希「!!」

 最悪の事態を想像し、瑞希は青ざめた表情で 彼の胸に耳を当てる。
 ・・・彼の胸は規則正しく脈を打っている。どうやら気絶しているだけのようだ。

瑞希「・・・バカッ 生きてるなら返事ぐらいしなさいよ」

 そのキツイ口調とは 裏腹に彼女の口からは 微笑と安堵の溜息がもれた。
 だが これで状況がわかったわけでも 好転したわけでもない。
 瑞希は 事の原因を確かめようと和樹が飛び出してきた窓を凝視し・・・そして 少女と目が合った。

すばる「・・・あぁぁっ!? その人を助けてしまったですのっ?」
瑞希 「えっ!? まさかーーーー」
すばる「そいつは 成敗しなくてはいけないのですの! 待っててください。今 トドメを刺しに行くですのっ!」

 謎の少女は窓から顔を引っ込めた。玄関からまわって こちらに降りてくるつもりである。

瑞希「あのコが・・・・・・・!!」

 多くのことが謎であるが 誰が犯人であるかは理解した瑞希
 和樹を抱いたその腕にも大きな力がこみ上げてきた。・・・

和樹「・・・・だ、ダメだ・・・・戦うな・・・瑞希」
瑞希「!?和樹?」
和樹「・・・に、げるんだ・・・はやく・・・っ!」



人戦隊コミレンジャーDC 「=序章=THE NEO COMIRENJER」 その2


=シーン4 公園=

 ・・・・・・・・・和樹のマンションから少しはなれた場所に 公園があった・・・
 街中にあることをわすれさせてしまうほどの 多くの緑に囲まれたこの場所は
 広い芝生、噴水などの手入れなども行き届いており、
 その割には 意外なほどに 利用者が少なく 人の目を感じさせない。
 だから この公園をしる者にとって ココは隠れたデート スポットとなっていた。

 ・・・そして 今その公園のベンチには二人の男女の姿。

 男性はベンチの上に横たわったまま しずかに眠り、女性は彼に膝枕を貸していた。
 ・・・まさに 独り者がみると 嫉妬に燃え上がる、羨ましいシチュエーションである。
 ・・・だが 実際は そんな甘い状況ではないことが、女性の悲しげな表情をみるとわかる・・・

和樹「・・・・・・う、う〜ん・・・」

 夕日の赤い光に照らされ、男は ゆっくりと その瞼を開けた。
 彼女の表情に 少し笑顔が戻る。

瑞希「・・・気がついた?」
和樹「・・・・・・・・そっか、俺は・・・」

 男は しばし記憶の糸を手繰り寄せ、自分たちが ここまで逃げてきた事を思い出した。
 そして 追っ手の姿がいないのを確認すると そのまま倒れこんでいたのだった

瑞希「大丈夫?・・・やっぱり 病院のほうが良かったんじゃないの?」
和樹「いや・・・・・・問題ないって 少し、やすめば・・・」
瑞希「でも・・・」
和樹「それよりも 俺に もう少しこの膝枕の感触を楽しませてくれないか?」
瑞希「・・・・・・バカッ・・・」

 そして 瑞希を心配させまいと 笑顔を見せる和樹、
 だが その力ない笑顔は よけいに不安を駆り立てる結果となった。
 ・・・瑞希は 少しだけ迷ったあげく、 先ほどから考えていた疑問を口にした。

瑞希「ねぇ和樹 アノ後なにがあったっていうの? 彼女は一体何者なのよ?」
和樹「・・・・・・・・・」
瑞希「・・・和樹?」
和樹「・・・・いや・・・・・彼女ことは俺もしらない・・・ただ・・・」
瑞希「・・・ただ?」
和樹「・・・・・・・・・俺が狙われた理由なら・・・わかる・・・。」
瑞希「ーーーどういうこと?」
和樹「瑞希、お前なら知っているはずだ ・・・俺がどんな人間だったか・・・」

 和樹は 少し悲しげなに彼女の視線を外して 悲しげに空を見上げる。
 頭上の空は 灰色を帯び始めていた。


瑞希「う、うん・・・えっと 千堂和樹:体力それなり 知力ギリギリ ルックスそこそこ 性格グータラ 
   それなのに アニメにはまって マンガばっか描いて・・・」
和樹「・・・いや そういう事でなくてだな(汗)。 もっと重要なことはあるだろ。俺の過去で・・・」
瑞希「過去?アンタの昔なんて・・・・・・・アッ!!」

瑞希の表情が 凍りつく。
和樹は 自分の言葉の意味を 理解したと判断し言葉を続ける。

和樹「・・・あの娘は 俺に『成敗する』といっていた。・・・それって普通『正義の味方』が『悪者』を
    倒す時に使う言葉だよな?」
瑞希「だ、だって あの時の和樹はーーーそ、それに 司令や南さんが そんなことするはずーーー!!」
和樹「・・・・・・だが そのもしも『上』からの命令だとしたら?」
瑞希「・・・上?」

 瑞希はきょとんとした顔で和樹に聞きかえす。
 また 和樹は和樹で 『なんだ?』という顔を 瑞希に見せる。

瑞希「・・・だって 澤田司令が『コミックZ』の最高責任者なんじゃ・・・」
和樹「だから 俺がいってるのは その『上』の組織のことだよ。・・・知らなかったのか?
    『コミックZ』 は とある防衛部隊の一部隊に過ぎないということを」
瑞希「・・・・・・」

 瑞希は 軽く首をタテに動かした。

和樹「そ・・・そっか・・・・・・」

 その後 和樹は 聞こえないぐらいの小声で「何故だ?」と、つぶやいた。
 だが 確かにコミレンジャー達『コミックZ』と 他の『対策部』とは ほとんど接点がない。
 特に知る必要もないことだろうということで 南さんも司令も あえて話さなかっただけかもしれない。

和樹「・・・とにかく、もし別の組織が俺を許さなかったとしたら・・・そして俺を抹殺する為に
   差し向けられた『リーフファイター』が彼女だとしたら・・・

瑞希「で、でも それなら なんで今頃になってーーー」
和樹「今まで 俺を確実に しとめられる機会を狙っていたのかもしれない・・・だったら つじつまが合う。」
瑞希「そ、そんな・・・」

 なれない試験勉強に続き 修羅場モード発動のマンガ執筆で 気力体力ともに 使い果たしている和樹。
 ・・・確かに命を狙うならば 今が絶好の時である。 

瑞希「・・・・・・(ブルブル!)ううん、違う! そんなの何かの間違いよっ!わたし 確認してみるっ!」

 そう言うと瑞希は 司令たちに聞く為に 右腕の通信機で・・・

瑞希「・・・あっ!?」
和樹「どうしたっ?」
瑞希「私、いま通信機、つけてなかった・・・。」
和樹「・・・・・・・・」

 和樹は 乾いた笑い声が漏れる。


瑞希「な、なによっ 仕方ないじゃない。私だって こんなことになるなんて思わなかったしーーー」
和樹「・・・ま、いっさ。その必要は なくなったようだしな」
瑞希「え?それって・・・」

すばる「ああ、ようやく 見つけましたですのっ!ココであったが百年目ですの!」
瑞希 「!?」

 瑞希が顔を上げた時、いつの間に現れたのか、ソコには さっきの少女の姿があった。

すばる「ソコの貴女、はやく ソイツからはなれてくださいですの。 側に居ると危険ですの」
瑞希  「あ、あなたこそ なんで和樹に コンナひどいことをっ?!」


すばる「決まってますのっ! 今 そこに居る男は かつて地球を混乱におとしめた秘密結社
     『ハラジロシスターズ』の生き残り タングス天王ですの!
     だから 退治しなくては いけないですの!」
瑞希 「!?(和樹の過去をしってる?ということは やっぱり和樹のいうとおり・・・)」
和樹 「・・・やっぱり 俺の予想通りみたいだな・・・グッ! 」
瑞希 「和樹?」

 和樹は ベンチから起き上がり立ち向かおうとする・・・が すぐに片膝突いて倒れた。

和樹 「ハハハ、そう簡単には体は回復してないか。」
瑞希 「ちょっと!マダ動いてはーーー」

 和樹を案じ 近寄ろうとする瑞希、だが なぜか和樹は彼女を制した。

瑞希 「か、和樹?」
和樹 「瑞希・・・これまで 色々と迷惑かけっぱなしだったな。だけど もう・・・」
瑞希 「な、なにいってるのよ?」
すばる「そうですの すばるの目的はその悪人だけ。あなたは関係ないですの。」 
瑞希 「!?・・・・・・アンタまさかーーー」

 そう、和樹が病院に向わずに 人気の公園を選んだのは 周囲に迷惑をかけずに戦えるためだった・・・
 ・・・いや 今の和樹の状況では 満足に戦えるはずがない。つまり 和樹は・・・

和樹 「ほんと、今まで色々とすまなかったな・・・。だけど これは俺の問題、
     ・・・いつかは償わなければいけない『罰』だったんだ・・・・・・」

瑞希 「和・・・・」
和樹 「さよならだ・・・瑞希」
瑞希 「・・・・・・」

 瑞希は しばらく呆然と立ち尽くす。・・・だが やがて 和樹のもとを ゆっくりとはなれ・・・

すばる「ぱぎゅ?」

 ・・・そして 少女の前に立ちはだかった。

和樹  「お、おい!」
すばる「・・・なんのつもりですの?」
瑞希  「・・・見てのとおりよ。・・・ココから先は通さない・・・」
和樹 「やめろ 瑞希! これは俺だけの問題なんだ お前は関係ーーー」
瑞希 「関係大ありよ! アンタ、私との約束をやぶるつもりっ!?」
和樹 「え?」
瑞希 「忘れたの!? 明日は 私にずっと付き合うって約束したじゃない! 
     明日は二人でテニスして、お弁当たべて、映画みて、それから・・・」

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
 正直 瑞希にも 自分のしていることが わからなかった。
 確かに かつて『タングス天王』のしていたことは 簡単に許されるべきことではない。
 ひょっとしたら 和樹や少女の言っていることのほうが正しいのかもしれない・・・だけど、

瑞希 「・・・だ、だから これで さよならなんて・・・このまま居なくなるなんてこと
     私は 絶対ゆるさないんだからっ!!」 
和樹 「・・・瑞希・・・」

すばる「・・・仕方ないですの」
瑞希 「!?」

 シュッ!

 次の瞬間。少女の体が軽く沈んだかと思うと、瑞希の懐深くにまで近づいていた


瑞希  「!?早ーーッ!」
すばる 「あなたは 少し眠ってもらうですのっ!」

 ドコッ!!!

和樹  「瑞希っ!」
すばる「大丈夫 これは ただの当身ですの。でも しばらくは・・・」
瑞希 「・・・確か『ただの』当身ね 踏み込みにしては、威力が全然足りないもの」
すばる「ぱぎゅ!?」


 少女は驚いて 顔を上げる。 
 確かに 今の当て身は気絶させる事が目的。それゆえに多少手加減していた。
 だが ポイント、角度ともに 正確に捉えた この衝撃に
 痛みに堪え 正気を保っていることならまだしも 「常人」が平然と立っていられるはずがない。

すばる「あなた、普通でないですのっ?」
瑞希 「どういう意味よっ!」

 シュッ!

 そう叫びつつも 動きの止まった少女の首筋に、今度は瑞希の手刀が!!

すばる「ハッ!」

 ザッ!

瑞希「なっ?」

 だが 瑞希の腕は 少女の手でなんなく捌かれる。今度は瑞希の表情が強張る。

瑞希 「くっ!まだまだっーー!」

 だが 強張りつつも そのまま 後ろ回しげりを繰り出す瑞希!!

すばる「ですのっ!!」

 おなじく 上段回しげりを繰り出す すばる!!


 ガガッ!!

瑞希&すばる「「くっ!!」」

 ズザザッザ!!
 二人は 互いに弾かれたおはじきのように 飛んでいた。
 ほぼ同時に互いの攻撃がきまったためである。
 二人は もんぞりうって倒れるも すくさま 同時に起き上がる。

和樹 「おい、大丈夫かっ!?」

 瑞希の身を案じた和樹の声。 瑞希は軽く手を振り 大したことないことを知らせる。

瑞希 「すばるさん だったわね? アナタも ナカナカやるわね」
すばる「と、当然ですの。 すばるは 平和をまもる正義のヒーローですの。・・・ってなんで 
    すばるの名前を知っているのですの!?」
瑞希 「名乗ってるじゃないの?さっきから」
すばる「ぱぎゅっ!?」

 ・・・そんな少し間の抜けたような会話と裏腹に、二人の構えには一部のスキも見当たらない
 二人は攻撃の構えを崩さないまま 再び徐々に近づいていった。

すばる「(コホン!)と、とにかく あなたの 実力はわかりましたですの!今度は本気全開ですのっ(バッ!)」
瑞希 「・・・望むところよっ!(バッ!)」

 そして赤き夕焼けのシルエットの中、ふたつの影は 再び一つに重なった。


〜コレミンジャーDC 2完  次回 その3につづく 〜




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