プロローグ
・・・・・・そこは 巨大な格納庫であった。・・・
ビルの三階を越えるほどの高い天井にジャンボジェット機も 収納できるほどの広い空間。
そして 広い格納庫の中には ちいさな人影がひとつ・・・
白と赤の二色で まとめられたツナギに身を包んでいるところみると ここで働く整備員であろう。
良くみると 人物が女性であることもわかる。
彼女はそこで 何をするわけでもなく、
吹き抜けの通路から。階下を見下ろすような手すりに手をかけ、ただ静かに たたずんでいた。
・・・・・・・・
場内には 最小限の照明しかついておらず また 他の人の気配も感じられない。
ウス暗く そして 静寂な その空間は まるで彼女以外の全ての生物が
消えてしまったのではないかと錯覚させた・・・が
「・・・最終チェックは もう終わったのかしら？」
もちろん そんなことあるわけはない
彼女は この静寂をくずした相手に 気がづくと、
直立不動の体制で振り向き、敬礼代わりに帽子のつばの位置をなおし答えた。
「はい つい先ほど終了したばかりです。司令」
「あら、一足違いだったわけね。」
司令と呼ばれた人物 ・・・澤田真紀子：直属の上司であり、このプロジェクトの責任者・・・
は少し残念そうな顔をしたあと、彼女の横にならび 同じものを眺めた・・・
彼女が眺めていたもの、それは五台のビーグルマシーンだった。
その形状 大きさ ボディーカラー、使用目的も違うものの
全体に見える 統一感から 同じ開発者の手によって 産み出されたことがわかる。
「それより、ココに司令がいても大丈夫なのですか？ いま部隊が交戦中と聞きましたが？」
「・・・少しぐらい大丈夫でしょう 南も居ることですし」
「それも そうですね」
司令は いたずらっぽく笑い。 彼女も笑顔で答えた。
もちろん 彼女自身も 司令を咎めるつもりで 聞いたわけでない。
作戦室から ここまでは たいして距離があるわけでなく
それに あの「部隊」ならば なんら問題はなく事件を解決するであろうと信じている。
「・・・それで？チェックの結果は？」
「各機体とも 動力システムおよび装甲強度、オールグリーン。まったく問題ありません。」
「トランスポートシステムは？」
「問題なしです。今すぐにだって 発進カウントを数えられます。残りは例のシステムだけですが
これに関しては 私の管轄外ですのでーーー」
「能力者の協力が不可欠だものね。OK、それは私と南で調べておくわ」
「おねがいします。」
彼女は 上司に向きなおし 大きく一礼をすると 再び マシーンの方に向き直った。
ちなみに能力者とは、 ここでは「コミックパワー」と呼ばれる力の持ち主のことである。
今回のプロジェクトに欠かすことのできない 重要な力であるが
残念ながら 彼女自身に持ち合わせていなかった。
・・・・・・・時間は しばらくそのまま過ぎていった・・・
だが、沈黙に耐えられなくなったのであろうか
ふと、彼女が口を開いた。
「澤田司令、なにを今更と 思われるのかもしれませんが 是非お聞きしたいことがあります。」
「・・・なにかしら？」
「なぜ われわれは この子達を作ったのでしょうか？」
「・・・・・・・・・・」
「本当に・・・われわれにここまでの兵器が必要だったのでしょうか？」
・・・・・
そう 今彼女に「この子達」と呼ばれた機体・・・正式名称 ＣＰＺ-Ｖシリーズ：通称アリアケマシーン・・・
は各々で軍の最新鋭の軍事兵器なみの力。 例のシステムが完璧ならば
都市のひとつやふたつを 簡単に壊滅させる力を秘めていた。
もちろん 町の平和を守るという使命のうえで
やむなく武力を用いる必要があるということは 彼女も認めている。
だが・・・たかだか一介のテロリストを相手にするのに
この力は 過剰に見えてならないのである。
・・・だが 司令は かすかに笑い、そして 答えた。
「そうね・・・今のところは まだ 必要でないみたいだし、
できれば このまま杞憂で終わればとと願っている・・・だけど・・・」
「・・・実際に必要になると？」
「それほど強大なのよ、『彼』の力は。アナタが思っている以上にね」
静か ゆっくりと はっきりと断言した 司令のコトバ
彼女は そのコトバに安堵し、 司令に謝罪し、
疑念を持っていた自分を恥じた。
・・・が、同時に彼女にはある疑問が 浮かびはじめる。
なぜ司令は その男について くわしく知っているのか？と、
「司令 もしかしてその 九品仏大志という男はーーー」
「ちょっと まって。作戦室でなにかあったみたい。」
彼女の言葉をさえぎり そういうとポケットから 震えているＰＨＳを取り出した。
無論 ただのＰＨＳではない、同じ組織の企画部主任であり
彼女の親しき友人である牧村南教授の開発品である。
「もしも ・・・塚本さん？一体なに・・・・・・・・・・・・・・そう。わかったわ。すぐ そちらに向かいます。」
通信を切ると、司令は、すばやくポケットにもどした。
ソノ表情には 先ほどまでの余裕はなくなり 緊迫感が漂っていた。
「どうされましたか 司令？」
「・・・まったく・・・・タイミングがいいのか悪いのか、判断に苦しむところね。」
「！？」
司令は 質問に答えてはくれなかった。今のことばは ただの独り言である。
だが・・・そのコトバと表情によって 彼女は瞬時に理解した。
・・・一体なにが起こったのかは まだわからない。
だが、おそらく 司令の考えていることはーーー
「風見さん・・・先ほどの言葉 偽りなくて？」
予想通りの 司令の問いかけ。
もちろん 彼女、風見鈴香は力強く答える。
「はいっ 機体の準備は万全っ。 いつでも発進可能ですっ！」
それが合図のように 全ての照明は光を取り戻し、アタリには警報が鳴り響く。
今までの静寂を破られ、眠っていた機械達が一斉に目覚め始める
「よろしい。では直ちにスクランブルモードにっ！ カウントは300ッ 目標、Ｃ-1、ミッッション地区！」
「了解っ！」
彼女は そのまま走り出した。己の任務を果たすために、
コミックＺ整備班長 風見鈴香。 今の彼女の役目は・・・・・・・
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【 同人戦隊コミレンジャー 第4話 （プロローグ） 完 ：次回 （前編）につづきます】